メルカトル図法を使っている理由

アホらしい話だと思ったのだけど。

アフリカ大陸、正確な大きさに 地図移行促す決議採択―国連総会 (JIJI.COM)

これまでメルカトル図法で書かれた世界地図が広く使われていたが、

高緯度の面積が拡大されるという欠点があった。

そんな中で等積図法の1つであるイコールアース図法の世界地図を普及させようという国連決議があり、

賛成多数で可決されたが、なぜかアメリカだけ反対したという話。


日々の生活に欠かせない地図だが、日常的に使う地図はメルカルトル図法やそこから派生した手法で描かれている。

現代ではコンピュータで自由に拡大・縮小・移動させて地図を見ることが多いが、

この場合、いま表示しているしている場所の縮尺がわかれば問題はない。

あるいはメルカトル図法の縦横を入れ替えた横メルカトル図法という手法がある。

これはメルカトル図法が赤道付近の歪みが少ないことを活用したもので、

任意の子午線を基準にして描くことで、その周辺では歪みの少ない地図が描ける。

地球儀を縦に細切れにして平面にするイメージですかね。


一体、メルカトル図法の何がよいのかというと正角図法であることである。

正角図法というのは狭い範囲で角度が正しく投影できる、すなわち形が正しいということである。

インドネシアとグリーンランドに同じ面積の正方形の土地を区切って、

メルカトル図法で描けばサイズは全く異なるが、どちらも正方形で正しく表示できる。

これが大きなメリットで、だから日常的に使う地図はこれがベースになっていると。

土地の権利関係を表す登記所備付地図も公共座標1~19系で位置関係を示している。

全国19箇所の地点を基準として横メルカトル図法で投影している。

場所により1/10000以内の距離のズレは生じ、面積には2乗で効くのでそこは注意が必要だが、形状は正確である。


もう1つのメリットが方角が正しいということである。

メルカトル図法で目的地まで直線を引いて方角を調べて、その方角に進み続ければ目的地にたどり着く。

この特性より海図は基本的にはメルカトル図法で描かれる。

もっともこうやって決まる等角航路は最短距離ではないのだが、

かつては操舵の容易性よりこの方法が多く使われていたという。

現代では衛星測位で位置を特定しながら船を操縦するのでその必要はないが。


といってもこれは赤道を基準にして描いたものだけに成り立つ。

中央子午線を本初子午線として地球表面全体をガウス・クリューゲル図法により投影した図 (Wikipedia)

これを見ると南北の線が中心子午線から離れるごとに弧を描いている。

実際には中心子午線の周辺の図のみ切り取って使うので影響は限定的だが、

東西南北は厳密には正しくなくても、形は正しく保たれるということは、回転することがあると。

確かにほぼ南北向きの スリランカ がかなり傾いていますね。でも形は歪んでいない。


日本は南北に広いのでメルカトル図法だと南北でそこそこ縮尺が変わる。

かといって東西にも狭いわけではないので、日本地図レベルの場合は別の方法が使われ、

具体的にはランベルト正角円錐図法が適用されるよう。

2つの標準緯線を決めて、標準緯線の距離は正しく描くということらしい。

緯線が弧を描いており、気象図を見るとそのように描かれていることがわかる。

ある程度の広域エリアを表す図としてはこれが一般的だそう。


さて、冒頭の話に戻ると、狭い範囲ではメルカトル図法がよく、

海図では操舵方法の都合で広い範囲でもメルカトル図法が一般的だが、

それを除けばある程度広い範囲ではランベルト正角円錐図法がよい。

飛行機も船と同じでメルカトル図法の地図を使っているのかな?

と調べたらランベルト正角円錐図法が一般的なよう。

では地球レベルではどうか? というと、なかなかよい方法がなく、

高緯度の面積が拡大される欠点を知りながら海図としての歴史があるメルカトル図法を使ってきたのが実情ではないか。

ただし、現在は等角航路での航行は一般的ではないので、その点ではあまり意味は無い。


とはいえ、面積の正しい世界地図を描きたいという考えはあって、

その手法の1つとしては横方向が広がるなら、縦方向を縮小すればよいという考えがあり、

その考えで作られた図法がランベルト正積円筒図法である。

ヨハン・ハインリヒ・ランベルトはいろいろな投影法を作ったのである。

ただ、この方法は高緯度になるほど横にひしゃげた形になってしまう。

小中学校の教科書で正積図法として紹介される典型例ではない。


実際には四角く描くのをあきらめるというのが一般的で、

モルワイデ図法では全体的に楕円形で描いている。

赤道付近は縦長、極付近は横長にはなるが、ある程度の形状は保てるということである。

ただ、周辺になるほど歪みが多いという欠点はある。

そんな中で生み出されたのがイコールアース図法だという。

2018年に開発されたそうでかなり最近だなと思う。

The Equal Earth map projection

赤道付近で縦長、極付近で横長になるという特徴自体は他の手法とも共通するが、

大陸部分の形状ができるだけ正確に表せるように調整したものだそう。

極部分を直線として描いているので、南極・北極は相当ひしゃげているが、そこは対象外であると。


本初子午線を基準に描いたイコールアース図法の地図を見ると、

確かに中央付近のヨーロッパ・アフリカあたりはきれいなのだが、

端の方にある日本は……傾いてるが形状は維持している方かな。

ニュージーランドは端に沿ってかなり引き延ばされているなと思う。

メルカトル図法の世界地図で話題になりやすいグリーンランドだが、

当然のことながら縦方向には大きく圧縮されているので、形状はさっぱり。

極地付近について言えばモルワイデ図法の方がまだ正しい気はする。

というわけでそんなに画期的な方法か? とは思うものの、

世界地図レベルではどの方法も一長一短ある中では長所が多い手法ではあるのだろう。