都の区の作り方

この前愛知県知事選挙があって、大村秀章さんが当選した。

この人が言っていることで特に印象に残っているのが、愛知県と名古屋市を合併して中京都とすることと東三河に東三河県庁を置くという話。

まぁ東三河県庁のことはちょっと権力の強い出張所を置くぐらいのもんだから大したことはないが、

中京都についてはなかなか厄介な事情が多い。


ところでなんで東京都は特別区があるんでしょうね。

そもそもの事の発端は戦時中に東京府と東京市が合併したことにある。

戦時中の統制の一環でこうなったのだが、じきに戦争は終わった。

日本国憲法が出来て、地方自治法が出来たわけだが、特別区の制度は残されることになった。

ただ、以前の特別区に比べれば自治が認められることになった。現在ではほぼ市町村と差はない。

このあたりは指定都市の行政区とはかなり違う。これは指定都市は大きいから分担させるために設けているだけだ。

最近ではゴミ処理を東京都から特別区へ移転して、収集を行政区、処分を東京二十三区清掃一部事務組合が行うようになった。

都がやっても特別区がやってもどっちでもいい気はするが、だいたい市町村がやっていることなのでそれにあわせたのだろう。

それでも一部の税金の水平調整などは行われているから千代田区などは不満もあるようだが。


そんな事情はあるわけだが、地方自治法では特別区の決まりはけっこうあやしい。

第281条第1項 都の区は、これを特別区という。

この書き出しからして怪しすぎる。この法律の中では都の定義はない。

都道府県の中で都と付いていれば都なのだろうが、都道府県の名前というのもかなり怪しい。

第3条第1項 地方公共団体の名称は、従来の名称による。

市町村の区別については地方自治法第8条に定めがある。

市については人口などの条件が法律に書いてある、町は都道府県が条例で決める。

ただ都道府県の区別に決まりはない。


じゃあ、奈良県を奈良府にするなどしていいのかという話だが、地方自治法上は問題ないけど手続きがめんどくさい。

第3条第2項 都道府県の名称を変更しようとするときは、法律でこれを定める。

第3条第3項 都道府県以外の地方公共団体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定めのあるものを除くほか、条例でこれを定める。

基本的に都道府県が変わるというのは法律で決める必要がある。

廃置分合と境界変更が身近な話だが、

第6条第1項 都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。

第6条第2項 都道府県の境界にわたつて市町村の設置又は境界の変更があつたときは、都道府県の境界も、また、自ら変更する。従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を市町村の区域に編入したときも、また、同様とする。

例えば、北山村を和歌山県から三重県に移転する場合、これをいちいち法律で決める必要がある。

どう考えても手間がかかるのでこんな変更は未だかつて行われたことはない。

けど、違う都道府県に属する市町村同士で合併や境界変更を行った時は法律を作らなくても変更できる。

長野県の山口村を岐阜県の中津川市に編入したときもこの規定によって両県議会の議決と国会の承認で変更できた。

もっとも、長野県側の承認を得るのは簡単ではなかったようだが。


もう1つ問題なのが都と市の合併ですよね。

これは地方自治法に決まりがある。

第281条の4 第8項 都内の市町村の区域の全部又は一部による特別区の設置は、当該市町村の申請に基づき、都知事が都の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。

第281条の4 第1項 市町村の廃置分合又は境界変更を伴わない特別区の廃置分合又は境界変更は、関係特別区の申請に基づき、都知事が都の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。

市町村が特別区への変更を申し出て都の議決と総務大臣への届出で変更できると。

まぁ普通の市町村合併といっしょですね。相手が都なのかは釈然としないけど。

逆に特別区から抜けるのはどうすればいいのかというのは1項の決まりによるのかなと。複雑だけど。

特別区が自分の特別区を廃止して市町村を設置するという議決して都議会の議決を得ればいいわけだ。

これが本当なら特別区が普通市に転換するのは簡単そうに見えるが、都議会の議決が得られんからやらんのだろう。


以上のことをまとめると、愛知県と名古屋市が中京都となるためには、

  • 国会で愛知県を中京都に名前を変える法律を作る
  • 名古屋市議会で名古屋市を廃してそこに特別区を設置する議決をして中京都に申請
  • 中京都議会でこれを承認する議決をする

ただ、ここには1つ重要なことが抜けている。

新聞読んでて初めて気付いたのだが、この法律というのは一の地方公共団体のみに適用される特別法なんだね。

日本国憲法第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

この法律の場合、愛知県に関わる法律なので愛知県で住民投票をやる必要がある。

なので相当難しい。国会で法律が議決されるところから厳しいが、その先もハードルだらけだ。


地方自治法見てても思ったけど、基本的には特別区は新しく作る気はないんだろうね。

出来た経緯からすればあらたに作ろうというところは出てこないと考えたのだろう。

指定都市と都道府県の役割分担のことが発端となってこんなことが出てくるなんて予想外だっただろうね。

この問題の解決法の1つとして合併するという案が出てきたことはわからないことはない。


もう1つの解決法には指定都市を都道府県から独立させるというのがある。韓国の広域市制度はまさにこれですよね。

指定都市はあくまでも都道府県の下にあるから問題だけど、これならこういう問題が無い。

僕はどちらかというとこちらの方がよいと思っているですけどね。都道府県から独立すると問題も大きいかもしれないけど。

そういう発想で大阪市について大阪特別市という話はあるけれどもあまり表には出てこない。

橋下さんがいう大阪都は実現するのは現行法でも全く不可能とは言えないけど、特別市は現行法では不可能ですから。


何にせよ地方自治というのは今後さらに重要になっていくと思う。

市町村には大阪市のように大きなものから上北山村のように小さなものまでいろいろある。

小さい町村は自分でできることはほとんどない、一方で大阪市は港も道路も地下鉄も作ってきた。

このあたりを市町村の事情に合わせて選べるようになってには、都道府県が行ってきたことを市町村に移転するとよいと思う。

そうなったとき小さな町村はほとんどできないから広域連合などを作って共同でやるとか他の市町村に委託するということになる。

現在でも消防はそういう仕組みでほとんどうまくいってるんだからなんともならないことはないはず。

一方で大きな市では好きにやればいいわけである。これは融通が利く。

そういうことが選べるようになって市町村合併の意義も大きくなるだろう。どうせ一緒にやるんなら合併しましょうと。

実は民主党の考えはこれらしいので、そういう方向で制度改正されるのかなとも思うけど、まぁ先の話でしょうね。