朝にニュースを見てたら、排気量50ccのエンジンを積んだ原付が作れなくなるので、
メーカーは電動バイクの開発に力を入れているという話で、
その中でスズキがペダル付きのモペットを開発しているという話が紹介されていた。
原付きバイク 国内で生産終了見通し どうなる生活の足? (NHK)
世界的にはペダル付きのフル電動自転車というのは多く使われている。
歴史的に見れば原付のルーツは自転車にエンジンを付けた「バタバタ」と呼ばれる車である。
モペットというのはその時代の原付への回帰とも言えるものである。
ただ、こういう車が日本であまり使われていないことには理由があって、
それはフル電動で走れる車はペダルをこいで走っても常に一般原付あるいは自動車として扱われるためである。
世界的にはペダル付きのフル電動自転車が多く使われていると書いたが、
ヨーロッパでは、電動アシスト自転車の要件が250W以下のモーターを使い、
25km/h以下の場合のみ動力が働き、ペダルを止めると動力が止まるものとしている。
日本では電動アシスト自転車のアシスト比率は10km/h以下で2/3以下、
それ以上の速度ではアシスト比率が下がり、24km/hでアシストが0になる。
ヨーロッパの基準ではアシスト比率の規定がないため、ほぼ電動でもよい。
とはいえ、スロットルは存在せず、ペダルを漕がずに走ることはできない。
一方で中国ではペダルが付いていて、400W以下のモーターを使う車を「電動自行車」として自行車(自転車)扱いとなる。
アシスト比率の規定がないどころか、スロットルで駆動してもよい。
なので中国大陸の電動自行車の映像を見ると、ペダルとは別のところに足を乗せて走っていたりする。
25km/hの制限速度の規定はあるが、リミッタは付いていないのでかなり速度が出る。
日本で違法モペットと話題になるのは主にこのタイプの車である。
日本の保安基準に従った装備がないので、原付・自動車として公道を走ることも困難である。
日本では運転免許不要の特定原付があり、道路交通法上は自転車に似ているが、
20km/h以上に加速できないことという要件からペダルを付けることはできない。
(ただし、発電機付きの特定原付というのは存在する: 発電機付きの特定原付?)
世界的にはペダルが付いている方が法規制が緩くなるのだが、
日本ではアシスト比率などの電動アシスト自転車の条件を満たせない場合、
ペダル付きの車は一般原付(または自動車)になるため、これではメリットが少ないわけである。
冒頭で紹介した記事ではモペットのメリットとしてこう書いてある。
一方で、モーターをアシスト機能として利用してペダルをこげば、走行距離をさらに伸ばすことができるほか、モーターの充電がなくなっても通常の自転車よりはペダルが重いものの、ペダルのみの走行も可能です。
ただ、ペダルのみで走行する場合でも一般原付のルールに従うわけだし、
走行距離を伸ばすためにペダルを漕ぐというニーズもどれぐらい現実的なのか。
フル電動でも走れるバイクはフル電動でしか使われないのではないか。
そしたらペダルは邪魔だと、かつてのバタバタと同じ歴史をたどるのでは?
ただ、こういう構造を生かして「モビチェン」できるようにした車はある。
モビチェン®(Mobility Category Changer) (glafit)
ナンバープレートにフタをすると駆動系に電源が入らなくなるので、
道路交通法上の扱いが自転車になるという仕組みである。
役所との折衝の結果、こういう自転車はあってよいとなったようだ。
電動アシスト自転車の範囲を超えるペダル付きの車は一般原付となるので、
一般原付と自転車を切り替えることで「自転車(軽車両)を除く」規制を逃れられるのがウリではあるが、
この点に限れば特定原付でも可能であり、ペダルを取ってリミッタや最高速度表示灯(緑ランプ)を付けた車を後に発売している。
違法モペットが問題になっている要因としては、一見自転車に見えてしまうことがあると思われる。
自転車形の車でもペダルがなければ自転車と違うことはわかる。
ただ、ペダルが付いていると、どうしても自転車に見えてしまう。
冒頭の記事で紹介されているモペットもかなり自転車に見える。
違法モペットには原付らしい装備がないから、そりゃ自転車に見えますよねと。
保安基準を満たすように装備を付ければ制度上は問題ないのだが、
かなり自転車に見えてしまう車を作るってのはどうなんだろうなとは思う。
結局はバタバタがスクーターになっていった歴史をたどるのでは?
ただ、電動バイクではエンジンの置場を考えずに済むので、
それなら自転車形というのは1つの方策なのかもしれない。
果たしてどういう車が多く使われるのだろうか。