かなりのレースを前倒しにする

天皇賞(秋)には3つの前哨戦が設定されている。

オールカマー(2200m)、毎日王冠(1800m)、京都大賞典(2400m)である。

ただ、実際にそのように使われているかは疑わしいものである。

オールカマーは牡馬は天皇賞の前哨戦だろうが、牝馬はだいたいエリザベス女王杯の前哨戦である。

この転戦で連勝したのがジェラルディーナ(2022年)である。

毎日王冠は距離的に近いマイルチャンピオンシップへの転戦が多く、

2021年にシュネルマイスターが1着→2着、2019年にインディチャンプが3着→1着など密接である。

京都大賞典も距離が同じジャパンカップへの転戦が多く、

ヴェラアズール(2022年)、キタサンブラック(2018年)と連勝例が多い。


この背景には制度上の前哨戦を使うとレース間隔が詰まるということで、

間隔が取れるレースを前哨戦にしたり、休み明けぶっつけでG1に向かうケースが増えているからで、

実際、天皇賞(秋)を始動戦にするものは多い。だから前哨戦がいらんと。

そういう状況はJRAも把握しているようで、来年にけっこうなスケジュール変更が行われるらしい。

2025年度開催日割および重賞競走 (JRA)

ものすごい変更量になっている。


あまりに変更箇所が多すぎるので2024年と2025年のカレンダーを並べて比べた。

すると1~2週前倒しになっている重賞がかなりの数あることがわかる。

3歳G1の前哨戦9レース、ダービーと同条件なのにダービー馬を輩出できていないことで有名な青葉賞も1週前倒しになる。

高松宮記念の前哨戦2レース、天皇賞(秋)の前哨戦3レース、

マイルチャンピオンシップの前哨戦2レース(スワンステークスは3週前倒し)、

阪神ジュベナイルフィリーズの前哨戦2レースなどなど。

なお、スプリンターズステークスは前哨戦ともども1週前倒しになっている。

全体的なスケジュール調整の都合だろうが、凱旋門賞と被って騎手の確保に困る話はなくなりそう。


他に前倒しされたものとしては、宝塚記念がある。2週前倒しである。

6月下旬にやっていたのはダービーからの転戦も想定してだが、めったにない転戦である。

梅雨や暑さを嫌う馬のために変更とはあるけど、ここ数年はそこまで悪くない印象もある。

どちらかというと秋の前哨戦前倒しに合わせて、上半期総決算も前倒しにするということだろう。

これに伴い、6月前後の1800~2000mのレースはあっちゃこっちゃに動くことになる。

これも多くは前倒しで、エプソムカップは5週前倒しで安田記念の前哨戦の意味合いも持ちそうだし、

サマー2000シリーズを構成する函館記念と小倉記念は3週, 4週前倒しである。

宝塚記念を早めたことでサマー2000シリーズの開幕も早められたわけである。

これにより余裕を持った転戦が可能となる。


何でもかんでも前倒しでは帳尻が合わなくなるわけで、後ろ倒しにされたレースもある。

それが鳴尾記念である。今は宝塚記念の前哨戦の意味合いがあるレースだ。

(ファン投票制の宝塚記念には優先出走権が得られる前哨戦はないのだが)

しかし、宝塚記念の時期が変わることで前哨戦を挟むところがなくなる。

そこで、12月上旬のチャレンジカップの時期に移し、1800m戦にする。

そしてチャレンジカップは9月上旬のハンデ戦ということになる。

2011年以前の開催時期・距離の組み合わせにちなんでこういう変更になったらしい。


牝馬重賞は競馬場をまたぐ変更があれこれ行われるのだが、

これは今年に東京ダービーの前哨戦として京都開催になったユニコーンステークスと、

来年にサマーマイルシリーズ第1戦、米子ステークス改め「しらさぎステークス」が重賞になることに伴い、

京都(京都牝馬ステークス)と阪神(マーメイドステークス)の重賞を1つずつ回収して、

東京と小倉に1レースずつ配分し直すという意味合いがあるらしい。

各競馬場の馬主協会の機嫌取りらしく、わりとそういうのはあるらしい。


あと、意外と大きな変更が小倉ジャンプステークスが2月に行われること。

これは元々8月にやっていた小倉サマージャンプの移設ということになっているが、

2020年までは同時期の小倉競馬場では障害レース自体をやっていなかった。

京都競馬場の改修工事に伴って同時期の障害レースを小倉に集約したことで初めて行われるようになった。

美浦から遠いのは難点だが、その代わり滞在して出走しやすいようにしたようだ。

京都競馬場の工事が終わった今年もこの体制は続いていたのだが、

重賞レースまで設定されるようになれば、これで固定化ってことですね。


前哨戦の前倒しでレース選択がどれぐらい変わるかはよくわからない。

ただ、3歳G1だと優先出走権を確保できるかは特に重要なのだけど、

それで優先出走権を取ったはよいが、間隔が詰まる本番ではさっぱり……

というのが繰り返されるようでは優先出走権とは? という話にもなりかねない。

青葉賞のジンクスなんていうのはその最たるものである。

一方で冒頭に書いた天皇賞(秋)の前哨戦3つの使われ方は結局あまり変わらないのかもしれない。

距離などの特徴が似ているという理由でこういう転戦を選んでいる面はあるので。

そう考えると最も影響が大きいのは三冠レースの一冠目、桜花賞と皐月賞かもしれないね。