それってスプリングジャパン便では

ANAが中古のDHC-8-Q400を買うらしいというニュースを見て、

機材の手当には相変わらず苦心しているようである。(cf. 注文してた飛行機が来ないんだが)

それに関連して調べごとをしていたら、もっとおもしろい話を見つけた。

8月1日より、成田=北京へ新規就航、成田=上海(浦東)を増便~JALとのコードシェア便として運航を開始します~ (SPRING JAPAN)


春秋航空日本という名前も今は昔、2021年にスプリング・ジャパンという社名になっている。

今も中国の春秋航空とは販売面では提携関係にあることは確かだが、

資本構成も移り変わり、日本航空が66.7%の株式を保有し、同社の子会社となっている。

業務面でもJALグループとの関係がかなり深くなっているようである。


JALグループのLCCには ジェットスタージャパン、スプリングジャパン、ZIPAIR Tokyoと3社ある。

ジェットスタージャパンはオーストラリアのカンタス航空(ジェットスターの親会社)も出資している。

成田・関西・中部を中心に日本国内線とアジア路線を運航している。

国内線はJAL・カンタス、その他提携先の航空会社の国際線乗り継ぎ便にもなっている。

かつてJAL自身が運航していた国際線乗り継ぎ便の役目を引き継いでいる。

ZIPAIRはJALが100%出資する会社で、当初はJALから移管した機材を使っている。

太平洋線の長距離国際線が特色だが、アジアの近国への路線も運航している。


そしてスプリングジャパンなのだが、日本~中国路線の運航がメインになっている。

当初は春秋航空の接続便を意図して日本国内線を多く飛ばしていたのだが、

国内線LCCはジェットスターが強いからか、運航路線はかなり絞り込まれた。

現在の位置づけは「中国特化型 LCC」で、販売面で春秋航空・上海春秋国際旅行社との結びつきの強さを生かしている。

なお、これとは別にヤマトホールディングスがリースした貨物機の運航も同社が担っている。

これはJALグループ内のリソースの都合で同社が担当することになったもので、

“Oparated by SPRING JAPAN”というシールが貼られている。


話は元に戻って、この新路線はかなり特殊な形態で運航される。

成田~北京、成田~上海(浦東)の路線を新設するのはJALである。

しかし、この路線はウェットリースによりスプリングジャパンの機材・乗務員で運航される。

日本では近年は聞くことが少なかったウェットリースである。

機内サービスの内容はスプリングジャパンと同様となっている。

スプリングジャパン・春秋航空と同じ成田空港第3ターミナルを使う。

ん? JAL便なのにスプリングジャパン同様ってどういうこっちゃとなるが……

※JAL およびスプリング・ジャパン相互の予約・発券システム上の制約から、JAL 便名の販売は当面の間、上海春秋国際旅行社でのご予約に限らせていただいております。


この便でスプリングジャパンは機材・乗務員を提供し、上海春秋国際旅行社以外への航空券販売を行う。

やっていることは自社路線とほとんどかわらない。

一方のJALがやることは上海春秋国際旅行社へのチケット販売程度である。

これ本当にJAL便なの? と思ってしまうのだが、1つ重要なポイントがある。

それは北京・上海の発着枠である。元々のJALの発着枠を使っているのだ。

JALからスプリングジャパンに発着枠を移管できればよいのだが、中国の事情を考えると難しいのかもしれない。

だからといってJAL自身がこの区間を運航するメリットは薄い。

そこで体裁上はJAL便だが、スプリングジャパンが運航し、同社の商流で販売することにしたのである。


韓国の航空会社は日本便の系列LCCへの移管を進めてきた。

距離的にLCCで困らないというのは大きいんだろうな。

そういう流れは中国路線でもかなりあるのだと思う。

ただ、それを実現する上の障壁は様々あったのだろう。

名目上のJAL便だが、実態はスプリングジャパンであり、春秋航空である。

多くを占めるのは中国発の旅行客なんだろうな。


最近はJALグループの航空事業も多角化が進んでいて、

JALCARGOの貨物専用機が復活したなんて話もありましたね。

DHLとの協業により一定程度の需要が見込めるのが復活の鍵だったらしい。

おそらく今回の名目上のJAL便も春秋航空の商流で需要が見込めて、

その場合はスプリングジャパンのリソースを活用するのがよいと。

こういう判断があったことは容易に想像できる。