座席の使用を条件としない特急券

繁忙期の のぞみ号を全席指定化する話で立席特急券という言葉が出てきた。

全席指定だが自由席特急券で立席可

全席指定の のぞみ号 に立席乗車するのに使うのは自由席特急券なので念のため。

しかし、世の中には立席特急券というものが存在することは確かである。


特急券についての規定を見てみると「座席の使用を条件としないで」という言葉がいくつか出てくる。

旅客営業規則/第2編 旅客営業 -第2章 乗車券類の発売 -第7節 急行券の発売 (JR東日本)

この文言が出てくるのは立席特急券・自由席特急券・特定特急券である。

基本的に特急は座席に座って乗車するものだが、座れなくても特急券を売る場合がありますよということだね。

それぞれ乗車できる列車・車両や購入時に指定する内容が異なる。

  • 立席特急券: 別に定める列車の普通車、寝台使用区間以外のB寝台車に乗車する場合、列車・乗車区間を指定して発売(列車を指定しない場合もある)
  • 自由席特急券: 別に定める列車の普通車自由席、寝台使用区間以外のB寝台車自由席(?)に乗車する場合、小児が大人の使用する寝台を一緒に利用する場合、乗車区間を指定して発売(列車を指定する場合もある)
  • 特定特急券: 新幹線の隣駅同士など定められた区間で 普通車自由席(自由席がない場合は指定席)、寝台使用区間以外のB寝台車自由席(?)に乗車する場合、乗車できる列車と区間を指定して発売
    (東北新幹線の郡山~福島に限っては座席指定で発売することも可能)

なんと寝台車の話が出てくる。


1つの寝台を大人と小児で使用する場合の自由席特急券は、

現存する唯一の寝台特急、サンライズ瀬戸・出雲でも発生しうるが……

それ以外のケースはすでに対象列車が存在しない。

サンライズ瀬戸・出雲は寝台車が全て個室なので。

寝台特急も深夜・早朝の特急列車として地域内の移動に使える場合があった。

最後まで適用されたのが あけぼの号(上野~鶴岡~青森)で、羽後本荘~青森が対象区間だった。

夜の青森→羽後本荘はB寝台車に指定席が設定された。

逆に朝の羽後本荘→青森ではB寝台車で立席特急券で空席が利用できた。

夜は通しで乗車する乗客との錯綜を避けたいから指定席にしているが、

朝は降りていく一方なので、座席の使用は前提としないが空席に座ってとしていると。

自由席特急券・特定特急券にB寝台車で自由席という規定があるが、

夜は指定席特急券、朝は立席特急券という扱いに統一される前に存在したらしいが詳細は不明。


あと、ちょっと文言が違うから書かなかったのだが、

関東地方では全車指定の特急で座席未指定特急券というのがある。

これは指定席特急券の一種なのだが、規定上はこう書かれている。

旅客が別表第1号の2に定める列車群に含まれるいずれかの特別急行列車の特別車両及びコンパートメント個室以外の座席車に乗車する場合で、乗車列車、旅客車及び座席を指定しないことを希望するときは、使用開始後に満席等により一部又は全部の区間で座席を使用できない場合であっても、特別急行料金の払いもどしを請求しないことを条件として、未指定特急券を発売することがある。

別表第1号の2 で規定されているのは ひたち・ときわ・あかぎ・あずさ・かいじ・はちおうじ・おうめ・富士回遊・踊り子・湘南・成田エクスプレス だね。

これらの列車には座席未指定特急券が満席でも発売される。

空席があれば座ってもよいが、座れる保証はない。

これは「座席の使用を条件としないで」という条件そのものである。


特定特急券なのだが、自由席だけ特別に安い料金設定をする名目で、

特に新幹線ではいろいろな設定区間がある。

  • 隣接駅間(途中駅を挟む区間も一部あり、一部は隣接駅でも除外あり)
  • のぞみ号・みずほ号を利用する場合
  • 小倉~九州新幹線各駅、久留米・新鳥栖~東海道・山陽新幹線各駅
  • 七戸十和田~北海道新幹線各駅、奥津軽いまべつ~東北新幹線各駅
  • 盛岡~新函館北斗の各駅相互

とはいえ、最初のケース以外はそこまで特別感はない。

のぞみ号・みずほ号は指定席には加算料金が設定されている。

原則によれば加算料金は自由席にも適用するべきだが、自由席で ひかり号他と区別するのは実務的にも困難である。

そこで、のぞみ号・みずほ号の自由席を使う場合はひかり号他の料金に合わせ、

ひかり号他の自由席特急券と、のぞみ号・みずほ号の特定特急券を兼ねるという売り方をされている。

小倉・久留米・新鳥栖は境界駅の博多駅までが隣接駅他の特定特急券の対象なので、

境界駅までの特定料金と自由席料金を足し合わせるよという内容なのだが、

他の特急料金もこの額に各種加算をしているので、自由席が特別安いというわけでもないという。

七戸十和田・奥津軽いまべつ も新青森までが特定料金だから。


そして、最後の盛岡~新函館北斗の各駅相互というケース。

料金は立席特急券の金額となっているからそこまで特別感はない。

ただ、この区間は隣接駅の特定料金絡みの区間も含めて、

指定席の空席を利用することが求められる区間でもある。

指定席を「座席の使用を条件としないで」利用するのは特別ということである。

よく考えれば全席指定の のぞみ号 にしても、特定特急券の規定が適用されるから、

特定特急券の規定で指定席を「座席の使用を条件としないで」利用するという解釈になるのだろう。

こちらは座席を使ってはいけないという扱いになるのだが。


通常は立席特急券は全席指定で自由席が満席の場合に発売されるが、

規定上は満席のときに売るということは書かれていない。

全席指定でも立席特急券を発売しない列車というのはある。

座席未指定特急券の対象列車は立席特急券の対象外である。

寝台列車の末端区間を朝に利用する場合は満席とは無関係に立席特急券だが、

はやぶさ・こまち・つばさ の末端区間は特定特急券として、指定席に座席の使用を前提としないで乗車できる特急券が売られている。

真の意味で立席特急券として残るのは満席時だけなのかもしれない。


そういえばこれを書いていて思いだしたけど、

その昔、角館→北上という立席特急券を買ったことあるんだよね。

足に不便して頭を悩ませる

角館~盛岡は特定特急券(立席)の対象で、盛岡~北上は自由席利用、

なおかつ当時はこの区間は通しで買うかどうかで料金差があった。

こういうきっぷが売れるという直接的な規定は見あたらなかったのだがやってくれた。

ただし、現在はこのようなきっぷを買う必要はなくなった。

自由席の場合は盛岡で区切っても料金が同じになったからである。

なので今は盛岡で分けて買ってねと言われそう。


さっき特定特急券で「東北新幹線の郡山~福島に限っては座席指定で発売することも可能」と書いたが、

これは つばさ号 の郡山~山形方面の利用者への配慮で設けられたもので、

やっていることは小倉~九州新幹線各駅などと同じで、福島駅を挟んで自由席特急料金同士を足し合わせて、指定料金を1回加算するという内容。

ただ、それを実現する方法が新幹線同士とは少し異なるのでこういう規定になった。

この副産物で福島~郡山だけを指定席で利用する場合も割安な料金になった。


座ってもよい立席特急券と、座ってはいけない立席特急券があるのは不思議だが、

立席特急券を発売する根拠に依存する問題ではある。

今だと座ってもよい立席特急券は はやぶさ・こまち・つばさ の末端区間の特定特急券だけのような気はするけど、

昔は寝台特急絡みでも存在したということである。