競馬場の冬休み対策

西日本の平地でも積雪に見舞われ散々な状況が続いている。

それで高知競馬場と姫路競馬場が雪のため中止という珍事もあったらしい。

水沢かよとか言われてたけど。


水沢というのは岩手競馬の競馬場の1つで、もう1つの盛岡競馬場より南ということで3~5月・12~翌1月の比較的寒い時期の開催を分担している。

ただ、それでも雪に見舞われ開催中止になることもしばしば。

といった具合に日本では冬になると雪のため使えない競馬場が出てくる。

地方競馬の主催者単位で冬にレースができなくなるのは、北海道(門別)・岩手(盛岡・水沢)・金沢の3地区である。

(帯広のばんえい競馬は入っていないが、北海道では雪が比較的少ないことと、ロードヒーティングの導入により通年開催できている)

岩手・金沢は1月~3月上旬の概ね2ヶ月半ほどの休み、

北海道(門別)は11月中旬~4月中旬と4ヶ月もの休みとなる。


ということはこの間は当該地区の所属馬がレースを走るのは難しくなる。

所属地区で競馬をやってなくても走れないとは限らないのだけど。

そんなこともあり冬は他地区に移籍する馬も多いという。

特に顕著なのが門別で、2歳戦のレベルが高いと言われているが、

そうして活躍した馬はシーズン終わりには出走機会を求め他地区に移籍してしまう。

その後、春に帰ってきてくれればいいんだけど、そのまま戻ってこないことが多く、

このため3歳以上のレースが充実しないという課題を抱えているそうである。


4ヶ月休みになるならそれ以外の期間に稼げるようにするというのが1つ。

このために賞金・手当を充実させるというのが1つの考えである。

ホッカイドウ競馬 今年の賞金一部増額 (ぐりぐり君の個人馬主ブログ)

ただ、それだけでなく来年度から「冬期在厩3歳馬手当」というのが導入されるよう。

これは2歳の閉幕日から在籍のまま越冬し、翌年の開催に出ると与えられる手当で、その額30万円。

来年度だから、今年2歳の馬が越冬して再来年に3歳を迎えたときに与えられる手当ということだね。


岩手競馬でも在籍のまま越冬すると手当が付与されるそう。

これは2~3歳に限らず対象で、休養も兼ねて活用されているようである。

厩舎関係者の冬季の雇用確保という側面もあるのかもね。

一方の金沢競馬では、冬に馬・騎手・その他厩舎関係者が名古屋・笠松に滞在して出走・騎乗する「滞在型交流」という制度があるそう。

これも翌年の出走馬確保のための取り組みだろう。

地理的に近くに協力してくれる競馬場があるからこそできることだが。


冬季の開催が行われない期間にも他地区のレースに出られる可能性はある。

イダペガサス 高知黒潮SC選出!2年連続出走 (ぐりぐり君の個人馬主ブログ)

なんと門別から高知まで遠征するのだという。

地方開催の交流競走で地方所属馬の輸送費は主催者が負担するのが通常で、

この場合は高知競馬の規定により65万円の輸送費補助が出るという。

なかなかびっくりする金額だが、馬の負担もなかなかではないかと思う。

とはいえ1着賞金1200万円を争うレースで昨年2着とあれば期待度も大きい。


「冬期在厩3歳馬手当」を見て思い浮かんだのが、東京ダービーだった。

2024年から羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック の3歳ダート三冠がスタートする。

ヨーロピアンスタイルの3歳ダート三冠

これらは全国の地方所属馬、そしてJRA所属馬が出走可能である。

従来は南関東所属でなければ羽田盃・東京ダービーには出られなかった。

これがJRA所属馬が出られる点が注目されがちだが、門別など他地区からも出走できるようになったのは実は新しいことである。

このことから門別在籍のまま、ダート三冠やその前哨戦に出走するというルートも出来たわけである。


ただ、このような他地区の交流競走に出走できるのは実績のある馬に限られ、

門別在籍だとどこに遠征するにも遠いということで馬への負担も重い。

出走機会が確実ならば、むしろ移籍した方がよいという考えになりそう。

もちろん、環境を変えずに調教を積めるという点で在籍のメリットもあるが。

むしろ下位クラスの馬が春に向けてしっかり体勢を整えるために使われるのかもねとか。

それでも春の開幕早々から準備万端の馬が揃えられれば意味はありそう。

門別は4月には2歳新馬戦が始まるが、8月には新馬戦が終わって、11月には冬休み。

そんなわけで早期デビュー、早期に結果を出すことが求められてしまう。

そこに手当を受けながら在籍のまま越冬し、3月春から活躍するという選択肢が増えることは馬にとってよいことなのかもしれない。


なお、他地区の交流競走という点ではJRAの特別指定交流競走というのも考えられる。

認定競走勝ちなどの条件を満たしていれば、出走機会は比較的得やすいと考えられる。

JRAだと芝のレースにも挑戦できるので、よい機会になるかもしれない。

しかし、大きな問題があって、それは輸送費である。

JRAと地方競馬の輸送費負担には非対称な面があり、

  • JRA所属馬が地方の交流競走に出走するときの輸送費はJRA負担
  • 地方所属馬が地方の交流競走に出走するときの輸送費は主催者負担

この狭間にあるのが地方所属馬のJRA出走で、主催者のJRAは輸送費を負担してくれない。

(一部の主催者では所属馬のJRA遠征への補助があるそうだが)

冬だと近くても中山・東京となる門別からの遠征は金銭的な負担が大きい。

JRAの賞金は高額なので結果が出ればよいのだが、実力差が大きいのが実情である。


果たしてどのような形でこの制度が生きるのだろうか。

3歳ダート三冠については、JRA勢か南関東勢というのが一般的な見方だが、

門別所属というのはあってもいいような気はするんだよね。

その後押しとして十分かはわからないが、想定にはあると思う。


余談だが、JRAも冬には使えない競馬場があって、

夏しか使われない札幌・函館はともかく、新潟・福島も冬は使えない。

それでも中山か東京で競馬は行われているので一見問題なさそうだが、

そうもいかないのが障害レースである。

障害レースは騎手数が限られ、落馬などのアクシデントも多いので、

1日の障害レースを1つの競馬場にまとめるという対策がとられている。

さらに京都競馬場の改修工事も重なり、1~2月の障害レースは専ら小倉で行われている。

こうすると美浦から遠くて遠くて仕方ないというのが課題である。

このため小倉競馬場に滞在することで対応しているそうである。