オーストリアに行くにはCT検査が必要

先日こんなニュースがありましたが。

ダービー馬ドウデュースはニエル賞から凱旋門賞へ、友道師「たたいた方がいいタイプ」 (日刊スポーツ)

ダービーを優勝したドウデュースは凱旋門賞に行くと言っていたが、

同じコースで行われる前哨戦のニエル賞を使うというやや古典的な作戦で行くようだ。

厩舎の先輩のダービー馬、マカヒキが6年前にこのローテーションで参戦していて、

いろいろ考えた結果、これがよいだろうという判断になったようだ。

(しかし6年前のダービー馬が未だ現役で次走は札幌記念ってどういうこっちゃ)


この時期、凱旋門賞遠征の話とともに、アメリカのブリーダーズカップという話もあるし、

あるいは春のオーストラリアへの遠征の話も聞こえてくることがあるのだが、

このオーストラリア遠征が難しいかもという話がある。

これ、新型コロナウイルスの影響と思ったかも知れないが、そうではない。

コーフィールドカップ、コックスプレート、メルボルンカップの登録について(簡易版)(pdf)

オーストラリアというのは各地に競馬場があって、それぞれに主催者がいて、州レベルの統括団体があるという構造を取っている。

日本の地方競馬のシステムが州ごとにある感じかね。(公法人ではないと思うが)

この3レースはビクトリア州の3競馬場で行われるもので、統括団体のレーシングビクトリアは「スプリング・レーシング・カーニバル」と総称しているよう。

この3レースは日本競馬から見ても高額賞金で、特にコックスプレートは輸送費補助もあるので条件が合えば参戦したいと思う馬もいたわけである。


ところが、昨年ぐらいから獣医検査の条件が異常に厳しくなった。

抜粋するとこんな感じ。

  • 輸出前に四肢遠位部のCT検査もしくはMRI検査を受けて、レーシングビクトリアが任命する獣医師の診断を受けなければならない
  • 重度の骨折・整形外科手術を経験している馬は、現在の健康状況や容態に関わらず渡航できない
  • 全ての遠征馬は、ヴィクトリア州内で出走する各競走への出走許可を得る前の段階でCT検査を受けて、出走に適しているか判断される
  • 遠征馬は、メルボルンカップの前にオーストラリア国内で1競走のみにしか出走できない

調べてみると、JRAのトレーニングセンターには立位でMRI撮影できる装置があるそう。

競走馬診療所が新装 MRI初導入、診断細やかに (日本経済新聞)

けっこうコンパクトに見えますよね。脚を突っ込むと撮影できるらしい。

ただ、すぐに撮影できるわけではなく、蹄鉄を外して(MRIに磁性体は御法度)、鎮静薬を投与して、それで撮影するということをやっているそうだ。

こんな検査を渡航前後を通じて何回も受けないといけなくて、検査結果によりNGが下されれば直前でも出走取りやめになるのだから大変である。


それにしてもどうして遠征馬にこれほど厳しいことを言うようになったのか。

それはメルボルンカップ前後での遠征馬の事故があまりに多かったためという。

​豪州遠征の欧州馬に現地順応の時間を、英ダービー馬らの悲劇受けて規定変更へ (JRA-VAN ver.World)

明確な理由はよくわからないんですけど、とにかく遠征馬の事故が多いと。

日本からの遠征馬も2014年にコーフィールドカップ(優勝)→メルボルンカップと挑戦したアドマイヤラクティが、メルボルンカップ直後に急死している。


オーストラリアではレース間隔を詰めて使われる馬が多いことが知られている。

重賞レースが多く行われるという事情もあるんでしょうが。

特にヨーロッパからの遠征馬にとっては1つ1つの賞金の高さも魅力だが、

遠征馬がそういう無理をしてはいけないということで「メルボルンカップの前にオーストラリア国内で1競走のみにしか出走できない」となったのはわかる面もある。

また、渡航前・調教中・レース中の骨折などを予め発見することで事故防止に努めたいというのもまぁわかる話である。

ただ、CT検査とかMRI検査というのは馬への負担も重いわけで、なかなか遠征にGOサインを出しにくい状況になっている。


香港競馬の獣医チェックは厳しいというのは、日本ではわりと知られた話で。

グローリーヴェイズが香港で経過観察となった件の真相とは? (サラブレモバイル)

これは馬券を買うファンに向けた情報提供という面が大きいようだが、

レースの安全性向上のために厳しく見ているという事情もあるようだ。

グローリーヴェイズは昨年のクイーンエリザベス2世カップ出走時に獣医チェックで経過観察となったが、結果的には出走が認められ見事2着となっている。

香港の場合、情報提供のために厳しく見ている面があるので、獣医師からケチが付いたからといって出走NGという話でもないようだ。


オーストラリア競馬というのはヨーロッパに比べて賞金水準が高く、

マイル以下が主流ということもあって、中長距離は手薄だが重賞レースは多い。

このあたりが特にヨーロッパからの遠征が盛んな理由でもあったと思うが、

安全性向上というお題目はさておき、このように厳しいことを言われると遠征しにくくなる。

もともと新型コロナウイルスで遠征しにくくなっていたところにこれですから。


背景は理解できるけど、なかなか苦しい話である。

どうしても日本国内に適するレースのない馬というのはいるわけで、

そこで外国遠征という選択肢もあるとありがたいわけですよね。

賞金面からはオーストラリアも魅力あるのだが、これではなかなかね。

そうか、サリオス(オーストラリアのレーン騎手が騎乗したときの成績がよい)が鞍上追っかけてオーストラリア遠征はなさそうかと思うとこれは残念。