日本で列車と言えば大半は電車、一部にディーゼルカー、
でも大昔には機関車が客車を引っ張る列車もそれなりにあった。
貨物列車は基本的には機関車が貨車を引くんですけど、
旅客列車では観光列車かそれに限りなく近い列車で残る程度である。
世界的にも機関車+客車から電車・ディーゼルカーへの置き換えの方向ではある。
ただ、低コストであるなどの理由で一定程度残っている地域が多いらしい。
日本で客車列車がほとんど走らなくなったことには、
- 高頻度に運行される通勤路線が多いこと (高頻度運転には不向き)
- 省力化が求められたこと (機関車は折り返しの手間が多い)
- 冷房の付いた客車がなかったこと
- 貨物列車の運行が別会社になったこと
- 寝台列車は比較的最後まで残ったが、新幹線・飛行機に代替されたこと
冷房を付けるぐらいなら、省力化して増発できる電車・ディーゼルカーを買うわと。
それでもJR貨物以外のJR各社は機関車を細々と維持してきた。
営業列車ではほとんど使わないが、回送列車や工事・除雪などの作業に使ってきた。
しかし、そうして維持してきた機関車も削減する流れが来ているようだ。
新型砕石輸送気動車および事業用電車の量産車新造について(pdf) (JR東日本)
代替として作る車両が2つ書いてある。
1つがGV-E197系電気式気動車、これは砕石輸送用のディーゼルカーである。
すでにディーゼルカーのレール輸送車を購入しており、この2つを合わせて工事用途で使われる機関車を代替出来るという算段らしい。
もう1つがE493系電車、これは牽引用電車ということで車両の回送や車庫内の入換作業で使われる機関車を代替するという。
もっともGV-E197系は砕石輸送用と言いつつ、牽引車部分だけを外して回送・入換作業に使えるようである。
これは少し前の話なのですが、JR西日本がキヤ143形気動車という除雪用ディーゼルカーを購入している。
従来は除雪車というのは機関車にアタッチメントを付けて対応していた。
この除雪用ディーゼルカーはアタッチメントを切り離せるようになっている。
今のところ、試運転や展示を除けば、除雪以外の用途で使われたことはないと思うが、構想としてはあるらしい。
というわけでこれらの車両を導入することで、JR旅客各社の機関車は代替されていく方向である。
ちなみにJR東海はレール輸送車の購入により、機関車を全廃している。
もっとも、これらの車両は構造的には機関車に近い一面もある。
JR東日本が購入するE493系電車の目的は車両を牽引すること。
車両を牽引する鉄道車両を機関車というのではないのか?
特にJR西日本の購入したキヤ143形というのは、構造的にはほぼ機関車という話がある。
除雪車両として求められる性能を考えれば、そうならざるを得ないと。
しかし、あくまでも機関車ではないという。
運転方法を営業運転に使っている電車・ディーゼルカーに合わせていることが大きい。
すなわち営業運転で使わなくなった機関車を工事・回送・除雪などの用途で細々と使うとなると、そのための訓練が必要になる。
しかし、運転方法が普段使っている車両に似ていれば、特別な訓練は不要である。
その代わり、従来の機関車とそのまま同じ用途で使えるわけではない。
でもJR旅客各社にとって機関車を使う用途は限定されているのだから、そこに対応できれば問題ないのだ。
むしろ、その限定的な用途での利便性が高まればうれしいわけですよね。
なお、JR以外の私鉄・公営交通ではもうだいぶ前から機関車を持っていないことが多い。
貨物輸送がある会社は別なんですけどね。でも、それこそ本当に少ないので。
工事や除雪では保線用の機械(列車が走らない時間帯のみ使える)で対応したり、
車両の牽引ではそもそも自走で足りたり、営業用の車両に引かせたり。
ただ、意外なところで機関車を持っているところがあって、それが東京都である。
こんなレア車両があるのか……! 都営地下鉄を走る「赤い電気機関車」の謎 (ねとらぼ)
大江戸線の車両を浅草線の車庫に運んで点検するために使われる特殊な車両である。
しかし、これはシステム的には機関車というより牽引用電車でしょうね。
冒頭で「観光列車かそれに限りなく近い列車で残る程度」と書いたが、
それも蒸気機関車の保存活動に関連するものが多いのではないか。
蒸気機関車を営業運転で使うとなれば、それは必然的に客車列車である。
また蒸気機関車の回送にディーゼル機関車・電気機関車を使うことも多い。
例えば、横川→高崎で「SLぐんま よこかわ」が運行されているが、
実はその反対向きは「ELぐんま よこかわ」という電気機関車で引く列車である。
これは横川駅には転車台がないので蒸気機関車の方向転換ができない。
そのため横川→高崎の向きに蒸気機関車をセットして、蒸気機関車ごと電気機関車で引っ張っていく方式をとっている。
まぁ回送列車みたいなもんだが、これはこれで貴重な列車である。
その他、蒸気機関車のメンテナンス中に回送用のディーゼル機関車・電気機関車を使った観光列車が運転される例は各地で見られる。
それ以外の観光列車というと、トロッコ列車が多いですね。
京都鉄道博物館に行くと、蒸気機関車が保存されている傍らディーゼル機関車がいるが、
これは蒸気機関車の保存活動用でもあるのだが、嵯峨野トロッコ列車で使うという目的もあるという。梅小路が拠点なんですね。
冬を除いては概ね週6日(紅葉の時期は毎日)、保津峡沿いを観光客を乗せて走っている。
今やこれがもっとも乗りやすい客車列車では? (乗ったことないけど)
ただ、これらの目的で使っている機関車も老朽化してくるとやり方を考えなければならない。
JR西日本が買ったキヤ143形は試運転ではSLやまぐち号の客車(cf. 蒸気機関車が引くもの)を引いている。
蒸気機関車の回送あるいは代役としての牽引車というのも出てくるかも知れない。
特にJR西日本の除雪用ディーゼルカーは冬以外はこれといった使い道もないので、そういう目的は好都合に思えるところもある。
なお、JR九州はJR旅客各社の中で唯一、JRになってから機関車を買って現在も保有している。
クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」の牽引用として買ったのがはじまりだが、
それとは別に買ったらしい。用途は不明だが、SL人吉(本来の運行ルートは被災して長期不通だがルート変更して運行は続いている)に関連する用途かも。
JR貨物の機関車と同型のものをカスタマイズしている。
実は、JR東日本も寝台特急の牽引用の機関車を買ったことがあったが、北斗星の廃止後に同型なのをよいことにJR貨物に売却している。
この当時はJR東日本が一部の貨物列車の運行を受託していたので、それで貨物を引く姿もしばしば見られたらしい。
ただ、寝台特急もなくなり、一転機関車を手放す方向に転換した。
このたび代替に必要な車両が揃うことになったと。
もっとも蒸気機関車の保存活動用など、ここにある車両では代替しがたいものもある。
機関車を大きく減らすことは確かだが、全廃とも単純には言えないと思う。