活躍馬でも種牡馬にならないわけ

この時期はウマの繁殖シーズンの都合、競走馬の引退があれこれ報じられる。

ある程度活躍した牝馬なら、繁殖馬にという話ではあるんだけど、

牡馬はなかなかそうにもいかないわけである。


そんな中で驚きを持って受け止められていたのがこれ。

2017年のマイルCSの覇者ペルシアンナイトが引退 馬事公苑で乗馬に (スポーツ報知)

18年有馬記念を制したブラストワンピースが引退 今後は乗馬に (スポーツ報知)

どちらもG1優勝馬で、複数の重賞レースで優勝しているのだが、

引退後のセカンドキャリアは種牡馬ではなく、乗馬だったのである。

特に有馬記念優勝馬が種牡馬にならないというのは相当な驚きだったようだ。


実はこの2頭、ともに父親がハービンジャーという馬らしい。

調べるとイギリス生まれでキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス優勝馬だという。

引退後に日本に渡ってきて、2頭の他に ディアドラ や ノームコア などの父でもある。

特にディアドラは秋華賞優勝後にヨーロッパを拠点に走り、父ゆかりのイギリスでナッソーステークス(G1)を優勝したという、そんなエピソードもある。

なお、この2頭は牝馬であり、当然のように繁殖馬となっている。


ハービンジャーが日本に渡ってきた理由と、ペルシアンナイトとブラストワンピースが種牡馬にならなかった理由はわりと表裏一体である。

今の日本のサラブレッドは、サンデーサイレンス あるいは キングカメハメハ いずれかの子孫、あるいはその両方の子孫であることが多いという。

日本の生産者は極端な近親交配を避ける傾向が強く、交配相手に困るわけである。

日本で活躍馬が出せそうで、交配相手の選択肢が広い馬というのを探した結果がハービンジャーだったらしい。

ペルシアンナイトの母の父はサンデーサイレンス、ブラストワンピースの母の父はキングカメハメハである。

さすがに祖父代にそういう馬がいては交配相手に困るだろうと。

それでも種牡馬としてのニーズがあるかと見極めたが、無理という判断だったのだろう。


あとはこの2頭の所有形態ですね。

この2頭の馬主はそれぞれ一口クラブなんですよね。

種牡馬やるにも、維持費を稼げるぐらいの種付料が稼げるのかという話であるが、

しかし、オーナーが交配相手を用意するとか、維持費を補うとか、

そういうオーナーの熱意で持っているような種牡馬はけっこういるでしょう。

しかしクラブ馬主の場合、引退後のことには責任は持てませんから。

牧場とも相談した結果、これが最善であろうという決断だったのだろう。


ところで昨年末には中長距離で長く活躍したキセキが引退した。

結局、重賞は菊花賞の1勝のみ、しかしその後に負けた相手が強かったのはある。

引退後は種牡馬になったのだが、彼こそ交配相手に困るだろうに話が。

調べると父の父はキングカメハメハ、母の父はディープインパクト(その父はサンデーサイレンス)とある。

祖父代の名前を見ると、確かに大変そうだなと思う。

しかし、彼の場合、祖母がすごい。父の母はエアグルーヴ(オークス・天皇賞(秋)優勝)、母の母はロンドンブリッジ(桜花賞2着、ファンタジーステークス優勝)。

ロンドンブリッジの子には ダイワエルシエーロ(オークス優勝)がいるという。

祖母2頭が大変魅力的なため、ここに期待があるという。

あとはオーナーと牧場の熱意ですね。生産者の下河辺牧場も期待しているらしい。


なかなか現役時代の活躍だけでは、種牡馬としての活躍は見通せないというか、

交配相手の制約が少ない馬なら、そこまで顕著な活躍で無くても重宝されることはあるし、

母方に活躍馬が見えるような馬は、期待度が高いという話もある。

昨年引退した コントレイル は母親がアメリカ生まれということで、

彼自身の現役時代の活躍もさることながら、ディープインパクトの息子としては、交配相手の選択肢が広いとか、そういう期待もあるらしい。


ハービンジャーについては、まだしばらくは種牡馬現役でしょうし、

今の3歳世代で重賞レースで活躍しているような馬が何頭かいますからね。

交配相手の選択肢が広ければ、お父さんが日本にやってきた理由を継承できるわけですし、

そういう期待はまだまだあるんじゃないだろうか。


ともあれ、ペルシアンナイトとブラストワンピースのセカンドキャリアが幸せであるように願うばかりである。

ペルシアンナイトは馬事公苑、ブラストワンピースはノーザンホースパークということで、

それぞれJRAとノーザンファームの施設ですから、悪いようにはされないでしょう。

そういう意味ではこれはこれで幸せなんじゃないの? という話である。


あとは、別の観点で言えば、日本は競走馬の去勢に慎重であるという話もある。

以前、メルボルンカップの出馬表を見たときに せん馬 多いなぁと思ったけど、

それはオーストラリアではニッチな超長距離戦に出るような馬というのは、

もはや子を残すことを期待されない馬が走るようなところであるということらしい。

このためわりと早い段階で見切りを付けて去勢される馬が多いんだという。

そうすることで扱いがよくなり、長く活躍できることが期待されるためである。

ヨーロッパでも4歳以上だとせん馬が相当増えるようですね。

昨年の凱旋門賞デー、エントシャイデンが出走したフォレ賞は牡馬5頭(うち3頭は3歳)、せん馬4頭、牝馬6頭ですからね。

エントシャイデンいなければ4歳以上牡馬は14頭中1頭だけですからね。G1でさえこれ。

そういう状況からすると、障害レースですら せん馬 が少数派の日本は異様である。

そこから種牡馬になるものはほぼいないだろうに。