病院船の はくおうII

前にこのBlogでPFI船舶のことを紹介している。

PFI船舶に供出される船

現在は新日本海フェリーと津軽海峡フェリーなどが設立した高速マリン・トランスポートが、

はくおうII(元は新日本海フェリーの はまなす)とナッチャンNEO(元は津軽海峡フェリーのブルールミナス)の2隻を運用している。

自衛隊が必要時に使える商船を確保しておくことが目的である。


以前、能登半島地震のときも被災者の宿泊・入浴などのために はくおう が七尾港へ向かっているが、

今回の熊本地震でも行くんだろうなと思っていたら、やはり はくおうII は八代港へ向かって行った。

八代港も地震の被害が激しかったが、はくおうIIが行く分には問題ないようだ。

そして制度上初めて「病院船」に位置づけられ、医療提供を開始した。

八代港で初の「病院船」が医療提供開始…内科診療やけがの治療のほか薬の処方、被災者向けに大浴場も (読売新聞)

被災者の入浴にも対応しているわけですが。


病院船というと、現在横浜港に係留・公開されている氷川丸の名前が思い浮かびますが。

海の横浜を歩く

昔は海軍が専用の病院船を運用して傷病者の救護にあたってきた。

現在、海上自衛隊には専用の病院船というのは存在しない。

ただ、必要時に艦船に野外手術システムを積み込むことは想定されている。

専用の病院船があったところで使い道が限られるというのはあるだろう。


一方で海に囲まれた日本ですから、災害などで医療機能が低下したときに病院船があれば役立つという考えはある。

このために「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」が制定された。

医療が必要な人を避難させる脱出船、被災地での医療サービス提供のための救護船の2パターンが想定されていて、

今回は救護船の目的である。ただ、さほど高度な医療体制があるわけではない。

地震後、被災した医療機関もあったが、熊本県内の他の医療機関でカバーしており、

どちらかというと八代周辺での日常的な診察を継続することが目的のようだ。

あえて病院船というほどの話ではないような気もする。


PFI船舶は病院船の担い手としてもっとも想定されているところである。

他の商船を使うことも想定していて、特に脱出船はすぐ行ける船を使うのがよい。

ただ、どのような場合でも、ある程度自由に使える船はPFI船であろうと。

とくに元長距離フェリーの はくおうII はスタッフや患者が滞在するための設備が充実している。

はくおうII を病院船とは言わないだろうけど、実質的にはそうなんだろうなと思いましたね。


病院船といっても使われるシチュエーションはいろいろある。

自衛隊員の救護を中心としていれば護衛艦への機材積み込みが中心になるだろう。

野外手術システムをPFI船舶に積み込むことも想定にはあるらしいが、

現状は自衛隊の船で運用する方が訓練実績などからすれば優位では?

一方で今回の様に軽症の民間人の救護を目的としているなら、

あまり特別な船は必要ないように思えて、もっと小回りの利く船を借りて対応するなどもあるのだろう。

今回は八代だけで済んでいるけど、場合によっては複数箇所に展開したいこともあるでしょうし。


ところで日本では専門の病院船があっても使い道が限られるだろうと書いたが、

インドネシアでは専門の病院船が平時から活躍しているらしい。

インドネシア海軍では3隻の病院船が運用されていて、離島を巡回しているという。

もともと離島の医療体制は脆弱なため、それをカバーする目的がある。

病院船で定期的に専門的な診療を受けている人もいるのではないか。

そしてインドネシアも地震の被害を受けやすい地域である。

いざとなれば被災地でそれなりに高度な医療も提供できるように考えられていると。

揚陸艦をベースとしており、救急車も積み込んでいるので、

港を拠点に陸に入り込んで救護活動をすることも可能である。

日本ではそこまでの体制を平時から持っておく必要はないだろうが、

自衛隊も民間も多目的な船や機材を持っているので、それを活用するのがよいという話なんでしょうね。

民間にはPFI船や赤十字社のような公的な性格が強いものも含みますが。