命名権がないときの名前でもない

またサッカーの話で恐縮なのだけど、日本vsオランダの会場になったのは「ダラススタジアム」とされているが、

平時は「AT&T Stadium」と呼ばれている。

基本的にアメフト用のスタジアムで、サッカー用に天然芝を設置して対応している。

このスタジアムは屋内なので育成用のライトも持って来て対応している。

今大会はこのような方法で対応しているスタジアムが多い。


それはそうとして、AT&T Stadium という名前がそのまま使えないのは、

国際大会ではしばしばあるクリーンスタジアム規定によるものである。

簡単に言えば普段にスタジアム内に設置されている広告を撤去する必要があるというもので、

この中にはスタジアム名も含まれているので、名前を変える必要があった。

身近なところでは調布市の 味の素スタジアム、開業間もない頃からずっと使われているため定着しているが、

一部の国際大会では正式名称の「東京スタジアム」として呼ばれて、そのたびに困惑する人が出るのは恒例である。


ところがこのAT&T Stadium は命名権がないときの名前というのがない。

AT&Tの名前が付いたのは2013年からなのだけど、

開業した2009年から2013年までは Cowboys Stadium という名前だった。

これは当地を本拠地とするアメフトチーム、ダラス・カウボーイズから取られた名前である。

これってカウボーイズの私有スタジアムなの? と気になって調べたのだが、

立地するアーリントン市の施設で、多額の建設費は市の資金や貸付でまかなわれた部分が多いようだ。

カウボーイズのオーナーも相当負担したようですけどね。


で、調べて知ったのだが、世界的には国際大会のときだけ使う名前を都度決めることも多いようで、

今回もその考えで 都市名+Stadium あるいは Estadio+都市名 というシンプルな命名になっている。

アーリントン市にあるのに、近くの大都市、ダラスの名前から拾われるのはどうかと思うけど。

あと、名前だけの話でもなく、冒頭書いたように広告を取り除くのが本来の意味。

本来はスタジアムの外壁にデカデカと描かれたAT&Tの社章もカバーがかけられているようだ。


ところで施設名に企業名が付くのは命名権によるものとも限らない。

有名な話では神戸・ポートアイランドのワールド記念ホールだが、

これは近所に本社を構える衣料品メーカー、ワールドの寄付金により作られたことに由来している。

すなわち神戸市が寄付者のワールドをたたえてこういう名前にしたわけである。

特にこの名前が問題になったという話は聞いたことがないが、

クリーンスタジアム規定の意義からするとスポンサー以外の企業名が目立つのは問題になるかもしれない。


そんな中であれ? と思う話もあって、それが柏レイソルの本拠地である。

普段は「三協フロンテア柏スタジアム」という名前で呼ばれている。

このスタジアムはJリーグでは珍しいチーム所有のスタジアムである。

Jリーグの成績上位のチームはAFCチャンピオンズリーグに参加する資格をえるが、

AFC主催大会ということで、クリーンスタジアム規定が適用される。

そこで命名権を外されるのだが、そうすると「日立柏サッカー場」という名前になる。

柏レイソルは日立製作所のサッカー部に由来し、現在も日立製作所の子会社である。

このサッカー場も日立が作ったもので、後にレイソルに移管された経緯があるそう。


なのでこの日立というのは実質的には親会社の名前そのものである。

にもかかわらず特に問題にはならなかったという。

実はこのスタジアムがあるのは日立台と呼ばれる地域である。

ファンも日立台と呼んでいることが多いそうである。

日立台の由来は日立製作所の工場があったことにあるのだけど。

なのでこの「日立柏サッカー場」というのは地名を付けただけですよというので許されたのだろう。

他にこういう説明が付きそうなのは 阪神甲子園球場 ですかね。

阪神というのは所有者の阪神電鉄の名前にも見えるが、この地域の広域地名でもある。

ただ、これが問題になる可能性のあるシチュエーションも考えられないのだけど。

(WBSC主催大会では特に命名権が問題となることはない)


市立吹田サッカースタジアム は開業まもなく命名権により パナソニックスタジアム吹田 の名前が付いたが、

当初よりワールドカップ予選などの国際大会の会場になることがしばしばあり、

吹田サッカースタジアムの名前も案外知られているようである。

親善試合だと命名権が問題とならないので、むしろここに困惑する人もいるようだ。

今どきのスタジアムとしてはむしろ珍しいのかもしれないが。


ちなみにこのクリーンスタジアム規定はスポンサー以外の広告を排除することが目的なので、

スポンサーの命名権は使えることがあり、2028年のロサンゼルスオリンピックではこの考えが広く適用される予定である。

これまでオリンピックではスポンサーの命名権でも外される慣例があったが、

ロサンゼルスでは金策もあり、スタジアムの命名権を持っている会社にスポンサーになってほしいとか、

あるいは仮設施設の命名権を買って欲しいとか、そういう意図があるよう。

果たしてこれが今後の標準になるのかはよくわかりませんが。

この考えが東京のときにあれば、味の素スタジアムの名前はそのままだったのかも。