変な法令用語というのもいろいろあると思うけど、
そんな中で群を抜いてひどかったものの1つが「寄付行為」である。
かつて民法にはこんな規定があったという。
財団法人を設立しようとする者は、その設立を目的とする寄付行為で、第37条第一号から第五号までに掲げる事項を定めなければならない。
正直、意味はよくわからないが、これは会社や社団法人で言うところの定款である。
現在は民法の財団法人の規定は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に移管された。
ここでは一般社団法人・一般財団法人ともども「定款」という言葉に変わっている。
それにしてもなぜこんな変な言葉が生まれたのだろうか?
調べたらドイツ語の ”Stiftungsgeschäft” の訳らしい。
Stiftungが財団とか寄付という意味で、Geschäftが事業とかいう意味で、
Rechtsgeschäft で法律行為という訳が付いたりするので、
それゆえに寄付行為という命名になったとみられる。
おそらくこの言葉は財団の基本計画みたいな意味だったんでしょうけど。
法人のルールは定款と呼ぶというのが一般的な理解だということで、見直されたとみられる。
てっきり寄付行為というのは過去の法律用語だと思っていたが。
学校法人の規則を定めた「寄付行為」の名称を「定款」に変更する――などの点を盛り込んだ法改正を求めている。
そもそも学校法人というのは財団法人の特別なものである。
このため旧民法の財団法人の規定を転用した部分がまだけっこう残っているらしい。
同様のものとしては、医療法人財団などにも残ってるらしい。
(医療法人は社団法人ベースのものと、財団法人ベースのものがある。あえて「医療法人社団」など付けているものもあるが、必須ではない。実は「医療法人」と付けることすら必須ではない)
学校法人という制度ができる以前は、単純に財団法人が学校を設立できたらしい。
学校を運営するということでは特別の制度が必要だろうとアレンジされたようだ。
このあたりは独立行政法人と国立大学法人の関係にも近いんじゃないか。
かといって一般財団法人・公益財団法人の制度変更に直接的に引きずられないところは、
学校法人としての制度の歴史も関係があるのかも知れない。
幼稚園から大学院に至るまで、公立学校・国立学校だったので学校法人とは縁が無い。
僕が入学した時にはすでに高専も大学も法人化されていたから、
理事とか理事長(国立大学法人では学長と呼ぶ)というのはいたわけですが。
しかし、国立学校を設置する法人は国(文部科学大臣)の支配が直接的に及ぶ。
結局のところは法人化されても国の機関であることに違いは無いわけですよね。
これは公立学校を公立大学法人が設置する場合も、出資する地方公共団体の支配が直接に及ぶ点で同じである。
でも、私立学校を設置する学校法人はそうではないんですよ。
これが学校法人が財団法人の一種であるということともつながる。
公益法人の大きな区分として社団法人と財団法人があって、
社団法人というのは社員(会社でいうところの株主にあたる、会員のような意味)が資金を拠出して事業を行うので、社員総会が最高議決機関にあたる。
会社と違うのは原則1名1票ということですね。
生協で出資金を払って組合員になると、総会で議決権を行使して経営に参加できる(実際は総代を介して参加することが多いが)という話も似ている。
一方の財団法人というのは、運営費は財産の運用益を充てることになっている。
(実際に運用益を基本に運営できているか? と言われると疑問もあるが)
このため資金を拠出する人が議決権を持つというスタイルにはならず、
評議員会というのが設けられ、その評議員会の議決で理事会が構成されるという形になっている。
問題はどうやって評議員を選ぶかということである。これはそれぞれの法人で決めることである。
設立者の一族とか、有識者とか、利用者とかを織り交ぜながらやってるのが実情ではないか。
学校法人が財団法人というスタイルを選んでいるのは、学生・生徒の教育に関わることなので、
学生・生徒とは無関係な社員が議決権を独占する可能性のある社団法人より、
評議員会が支配する財団法人の方がよいということではないか。
生協のように利用者(学生・生徒やその保護者?)が議決権を持つという考えもあるかもしれないが、卒業すれば終わりでは長期的視点は期待しにくいだろう。
問題は評議員の選び方であって、これが悪いと結局は学生・生徒のためにならない。
学校法人の評議員については法律で教職員・卒業生・有識者という形で定められている。
しかし、実際は教職員が相当割合を占めることが多いようである。
このことから先のニュースの提言では「評議員は学外者のみで構成する」ということが書かれていた。
学校のことをよく知る人として教職員というのはよいという考えもあるが、
果たして自分たちの上司である理事会を監視して支配できるのかということである。
これも選任方法次第ではありますけどね。でも、教職員の中から選挙とかくじ引きとか選ぶ規定ではないでしょ。
それは卒業生もそうであって、評議員会の選んだ卒業生とかそういうことであろう。
というわけで、学校法人が財団法人であるというのは短所もけっこうあるわけだ。
国立学校・公立学校の場合は、法人の場合、教育委員会が管轄する高校以下の場合で違いはあるが、
最終的には国立学校なら文部科学大臣、公立学校なら首長と議会による支配が及ぶ。
構造としてはわかりやすいが、それは国民や住民が選挙で関与しているからというのはある。
私立学校はそうではないから、自主性に期待する部分もある一方、ろくでもない経営が野放しになっている可能性はけっこうあるということですね。