憲法で
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
というのは簡単なことだが、ちゃんと考えて法律を作らないと実現できないね。
そんな工夫をちょっと追ってみた。
ところで日本国憲法以前はどうだったんでしょうね。というわけで古い民法を探して見たらすぐに見つかった。
読みにくいね。2005年に現代語化されて読みやすくなったけど。
読んでいくと早速今とはかなり違う記述がある。
第733条 子ハ父ノ家ニ入ル
2 父ノ知レサル子ハ母ノ家ニ入ル
3 母共ニ知レサル子ハ一家ヲ創立ス
父の家に入るってなんやねんという話ですが、当時は家の単位で戸籍を管理していたので、今の言葉で言えば父のいる戸籍に入るってことです。
ただ、当時の家と現在の戸籍の単位とはかなり違う。
当時の家というのは何世代でも入れることができて、家族全部に戸主が扶養義務があって、家族の婚姻などを拒否することができた。
実にこのままだと「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有すること」というのが実現できないから家というものがなくなった。
ちなみにさっきの条文は現在の民法では、
第790条 嫡出である子は、父母の氏を称する。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
2 嫡出でない子は、母の氏を称する。
あたりが相当するのかな。戸籍の動きは、父母の氏を称するなら父母の戸籍に、母の氏を称するなら母の戸籍に入籍すると戸籍法にある。
旧民法では非嫡出子でも認知されれば父の氏を称することになってたのが、現在の民法では母の氏を称するままだということか。
第791条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
なんて条文があって、裁判所の許可を得て入籍届を出せば、子が父の戸籍に入籍して、子が父の氏を称することはできますが。
さて、婚姻についても似たような記述がありますね。
第788条 妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル
2 入夫及ヒ壻養子ハ妻ノ家ニ入ル
これも夫の家に入るのが基本となってる。だから結婚したら夫婦共に夫の氏を称することが基本だと言うことだ。
入夫はすでに妻が戸主の家に入ること、婿養子は妻の親の養子縁組と婚姻を同時に行うこと。
ただ、さっきもいったとおり、家にいる家族全て戸主の支配を受けるので、このあたりは全く改められた。
現在の民法ではこんなことが書いてある。
第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
夫の氏か妻の氏かに統一しろと書いてある。統一されるところは旧民法から引き継いだようです。ただ、どちらかは自由に選べると。
かつては妻の氏を名乗るためには妻の親の養子縁組と婚姻を同時に行う必要があったけど、今はないわけだ。
戸籍の動きはけっこう複雑で、戸籍法には
第16条 婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。
2 前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。
3 日本人と外国人との婚姻の届出があつたときは、その日本人について新戸籍を編製する。ただし、その者が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。
いずれにしても夫婦の戸籍というのが夫の親とも、妻の親とも別に作られた状態になるということです。
今の戸籍には昔の家みたいな意味は無いけど、一応形の上でもそうなっているということです。
あと筆頭人でない母や父の戸籍に子が入籍するとなれば、新しく戸籍を作ることになっている。
これにより現在の戸籍は筆頭人と配偶者と子だけで構成されるようになっている。最大でも二世代しかいないということですね。
ところで、未成年でも結婚すると成年に達したことになると言う制度があるんですけど、これも夫婦が同等の権利を有することのためにあるらしい。
似たようなことは旧民法にもあるのだが、
第791条 妻カ未成年者ナルトキハ成年ノ夫ハ其後見人ノ職務ヲ行フ
未成年の妻の後見人は成年の夫だと書かれている。逆はないらしい。
現在では、
第753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
ところで、こうするメリットってなんなんでしょうね。考えてみれば不思議な規定よね。
これは、民法の最初の方にあるとおり、未成年者の法律行為には法定代理人の同意が必要なので、
どうしても法定代理人に制限されて夫婦が同等の権利を有するということが実現できなくなってしまう。
そこで、結婚したらそういうことはなしにしようということにしたらしい。よう気付いたなとおもうところ。
第737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
その代わり未成年者が結婚するには父母の同意が必要。逆に言えばそれ以外は不要だということになる。
だから、二人とも20歳になれば他の家族がどう言おうと、婚姻届を出せばその婚姻は有効だということだ。
旧民法では、
第772条 子カ婚姻ヲ為スニハ其家ニ在ル父母ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但男カ満三十年女カ満二十五年ニ達シタル後ハ此限ニ在ラス
2 父母ノ一方カ知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ他ノ一方ノ同意ノミヲ以テ足ル
3 父母共ニ知レサルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ未成年者ハ其後見人及ヒ親族会ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
30歳未満の男、25歳未満の女は父母の同意が必要だったらしい。その上に戸主の同意も必要なので今よりよっぽど厳しい。
こうやって婚姻は両性の合意のみに基いて成立するということを実現していると言うことだ。
まぁ法律の上ではこんな風になってるけど、そうも人の考えというのは変わらんらしく、特に婚姻後の氏のことはあんまり変わってないよね。
ここの最後に 夫の氏・妻の氏別婚姻 というデータがあるが、これによれば妻の氏を称することにしたのはたった3.7%(2005年)らしい。
実際には、夫が妻の両親と養子縁組してから、夫の氏を称するとして婚姻した人もいるから、そうなるとどうか知らんけどそれでも少ないことに変わりはない。
だから妻の氏を称することができるということを知らん人も多いかも知れん。
夫婦で別の氏を使えるようにしようという話はあるけど、実現されてもあまり使う人はいないかもしれん。
現在でも子の氏を変えて家族の氏を統一するために入籍届がよく使われているそうだ。
家族の氏は一緒にしておかないと不便だと思っている人が多いと言うことだろう。
結局どう選ぶかというのは各人によるけど、結局みんな選んでるように選ぶことが多そうですね。
ただ、みんながみんなそれでええと思ってるわけではないので、選択肢を増やすのは意味があるでしょう。
夫又は妻の氏を称すると選べるようにしたら、3.7%だけだけど確かに妻の氏を称すると選んだ人はいたということだからね。
結局のところ夫婦で別の氏を使えるようにしても多分同じようなことだと思いますよ。
どうしても夫又は妻の氏を称する必要があるからと婚姻していない人に新しい選択肢を与えるぐらいの意味しかないと思うよ。