ニュースでも話題になってましたが、競馬関係者が持続化給付金を受給していたことについて、
調査結果がJRAのWebサイトに掲載されていた。
厩舎関係者の持続化給付金申請・受給に係る状況調査(結果報告) (JRA)
2748人の関係者のうち165人(6%)が受給していたとのこと。
特にこの問題が明るみになるきっかけらしい、栗東トレーニングセンター所属の調教助手・厩務員に限れば1167人中110人と。
1割ほどが受給していたということで、なかなかの数字だが、他の一見影響僅少そうな業種でもこんなもんなのかも。
どうしてこういうことができたかというと、競馬の賞金には進上金というのがあるから。
例えば、JRAでデビューした馬が無事に新馬戦で優勝したとする。
するとJRAから賞金700万円、特別出走手当が42万円支払われる。
特別出走手当は全て馬主の取り分だが、賞金・出走奨励金は馬主が80%、調教師が10%、騎手が5%、厩務員が5%受け取る。
この馬主以外が受け取る20%を進上金と言ってるんですね。成功報酬ですね。
ちなみにここで厩務員というのは、馬の身の回りの世話をしながら調教を付ける持ち乗り調教助手を含む。
厩務員より助手の方がはるかに多いことからして、厩務員というより助手と書いた方が実態に即しているかも知れない。
もっとも厩務員の成功報酬としては、5%というのはかなり高額で、割りあてられる2頭の馬に左右される部分が大きすぎ、
また、攻め専調教助手と言われる、担当馬を持たず調教を付ける専門の助手(本来の意味の助手はそっちだよね)は配分がない。
このことを考慮して厩務員の進上金の全部または一部を、厩舎でプールして分配する仕組みを持っているところもあるよう。
チームで勝ちに行くという考えからすればそっちの方がよいとは思うが調教師の方針次第である。
馬主は賞金のうち進上金以外の部分と、手当を受け取り、これらについて消費税を納める。
なので700万円の賞金と42万円の手当は進上金の140万円を引いて、消費税55万円を納めて、残るのは547万円である。
もっとも消費税については馬の購入時、調教師へ支払う預託料などに含まれていた消費税と相殺するので、
馬主事業全体としては戻ってくる消費税の方が多い馬主の方が多いかも。
進上金も消費税がかかるので、調教師・騎手は消費税を納めているはず。
調教師は馬主から受け取る預託料、騎手は騎乗手当にも消費税がかかりますから。
一方で厩務員だが、基本的にサラリーマンなので、課税売上は進上金のみとなるが、売上1000万円以下は消費税の納税義務が免除される。
このため、多くの厩務員は消費税分もそのまま手取りになっているそう。(今後もこの状態が続くかはわからないけど)
で、助手・厩務員にとっては、進上金は事業所得という扱いになる。このことから個人事業主である。
この進上金は自分の担当馬、あるいは厩舎の成績に左右されることになり変動は大きい。
この変動の大きさを使って、これは新型コロナウイルスの影響だと主張して、給付金を受給したという話である。
ただし、そもそも厩舎から受け取る給与所得はあるので、基本的な所得は保証されているとも言える。
また、進上金にしても開催が全部ストップするような影響はなかったので、賞金獲得のチャンスは十分にあったはず。
ということで不適切な受給であるとJRA・日本調教師会は言っている。
ただ、不正受給ではないんですよね。
形式上は要件を満たして申請しているわけだし、影響が全くなかったというわけでもない。
地方競馬との条件クラスの交流競走の中止、外国遠征の取りやめ(特に開催直前で中止になったドバイワールドカップデー)など。
何らかの影響があったという説明はできるわけである。
冒頭で「他の一見影響僅少そうな業種でもこんなもんなのかも」という感想を書いたのは実にそういうことで、
形式上の条件を満たせば、そこに対して理由は後付けできるわけですよね。
この点から個人事業主でない人が虚偽の申請をして受給したものとは全く事情が違うものである。
進上金は事業所得として申告が必要ということで、適切な申告には専門家の力が必要ということで、
トレーニングセンター内には税理士も出入りしており、この税理士らが勧誘して持続化給付金を受給させたという話があり、
成功報酬として10%近く取るようなケースもあったとか。制度の趣旨からすればそれはどうかと思うのだが。
栗東トレーニングセンター所属の調教助手・厩務員と言うのは、まさにこの勧誘を多く受けたところだとされており、
一方で、不正受給での検挙なども見て、早い段階で問題を自覚した職場でもある。
返還に動いた人は他の職域より比較的多く、4割がすでに返還済みとのことである。(それでも4割なのかという感じだが)
持続化給付金で助かった事業者もいるのだろうが、実態としての事業の厳しさと受給条件が必ずしも一致せず、
持続化給付金で救われない事業者がいる一方で、さほど苦しくもないのに受給してしまう事業者もいるわけである。
簡易な条件で定額受給できる制度はわかりやすいが、こういう問題がある。
多くの不正受給、あるいは不正と言えずとも趣旨にそぐわない受給が相次ぐ中で、結果としては失策だったのかなとも思うが、
一方で当時、急を要する状況であったことは確かで、複雑な条件を付けたり、厳密な審査をするのは難しいわけである。
なので、こういう失敗はある程度はやむを得なかったのかなという気はする。
今後の経済危機のときにこの反省は生かしたいものである。