今週木曜深夜にイギリスのナッソーステークスの中継があって、馬券は売ってないが、観戦していた人もいたようだ。
このレースはイギリス長期滞在中の日本馬、ディアドラが出走していた。
昨年の優勝馬で連覇を目指したわけだが、結果的には最下位ということで、調教師も作戦変更が必要かもとのコメントを出している。
一方で、このレースが日本のファンの注目を集めていたのはディアドラの出走だけではなくて、
フランスオークスことディアヌ賞を制したファンシーブルーが出走するからで、見事に優勝したのだったという。
なんでファンシーブルーが注目されていたのって、父親がディープインパクトだからだね。
ディープインパクトは昨年亡くなったが、その前の数年間は、外国からやってきた繁殖牝馬への種付けが多かったという。
ファンシーブルーの母、チェンチコヴァはアイルランドから北海道にやってきて、
ディープインパクトに種付けされてから帰国、そしてアイルランドで生まれた子が後のファンシーブルーである。
今年初戦のアイリッシュ1000ギニーで2着、続いて出走したディアヌ賞で優勝、ここで日本でも話題となった。
ちなみにディアヌ賞はフランスでもっとも人気があるレースだとか。(cf. 武豊とルメールがフランスで挑んだ、凱旋門賞より人気の3歳牝馬GIとは。 (NumberWeb))
それに続くナッソーステークスで優勝して、G1 2勝目となった。
今後の活躍も期待されるところで、フランス・凱旋門賞に挑戦するのかなとか言われてたが……
ファンシーブルー日本遠征プラン浮上 エリザベス女王杯が候補に (デイリースポーツ)
まずは、アイルランドのチャンピオンステークス(G1) または メイトロンステークス(牝馬限定・G1)に出走する。
この結果を見て、フランスの凱旋門賞(G1) または オペラ賞(牝馬限定・G1)に出走する。
そして、その次にはアメリカのブリーダーズカップ(BC) または 日本のエリザベス女王杯 を考えている。
ということで、父ゆかりの地である日本のレースへの出走も想定されているということである。
アメリカ・BCとの両にらみではあるようだけど、来日の可能性ありということで日本のファンから期待されている。
JRAの全ての平地重賞レース、オープン特別競走は九州産馬限定の1レースを除いて全て国際競走になっている。
あと障害レースでは、J・GIの全2レースとオープン特別1レースが国際競走になっている。
これらは希望する外国馬は出走できるが、実際に外国馬が出走するレースというのは限られる。
日本から外国への遠征も一緒だけど、問題は輸送費・滞在費である。
そんな中、JRAは特定のレースに出走する馬で一定の条件を満たす場合は、輸送費の補助を行っている。
2020 JRA Graded Races Guidebook(pdf) (Horse Racing in Japan)
全ての平地重賞レースが列挙されている一方で、下記の10のGIレースが特にピックアップされている。
ジャパンカップ、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、チャンピオンズカップ
安田記念、天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、高松宮記念、スプリンターズステークス
この10レースのうち、ジャパンカップは招待競走、残る9つは輸送費補助あり と記載されている。
ジャパンカップは現在は日本唯一の国際招待競走だけど、実はそれ以外にも輸送費補助のあるレースがあるんですね。
さらに ジャパンカップ、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップ、チャンピオンズカップ の4レースは、国際交流競走優勝馬に対する褒賞金 (リンクはpdf)が支給される。
ファンシーブルーは、ディアヌ賞(資料には仏オークスとして記載)とナッソーステークスを勝利したが、
この2レースはともにエリザベス女王杯の指定レースで、優勝馬が当年のエリザベス女王杯で1~3着に入ると報奨金が支給される。
その金額は1着で70万USドル、2着で28万USドル、3着で17.5万USドルとなる。
エリザベス女王杯の1着賞金は1.05億円なので、これと1着報奨金を加えると、約1.8億円という高額賞金が得られる。
これこそがファンシーブルーの日本遠征を後押ししているとみられる。
もっとも、こういう優遇制度があっても、外国から遠征してくる馬は最近は少ないし、まして上位に入る馬はさらに少ない。
最近10年でJRA重賞レースで3着以内に入った外国馬を検索してみたが(もしかしたら抜けがあるかも)、
- ワーザー(香港調教) 2018年宝塚記念 2着
- エアロヴェロシティ(香港調教) 2015年高松宮記念 1着
- ブラックステアマウンテン(アイルランド調教) 2013年中山グランドジャンプ 1着
- レッドカドー(イギリス調教) 2013年天皇賞(春) 3着
- スノーフェアリー(イギリス調教) 2010年エリザベス女王杯 1着、2011年エリザベス女王杯 1着
- サプレザ(フランス調教) 2011年マイルチャンピオンシップ 3着
- ラッキーナイン(香港調教) 2011年セントウルステークス 2着
- グリーンバーディー(香港調教) 2010年セントウルステークス 2着
- ウルトラファンタジー(香港調教) 2010年スプリンターズステークス 1着
セントウルステークスはGII、中山グランドジャンプはJ・GI、あとはGIですね。
ここを見てみると、スノーフェアリーがエリザベス女王杯を連覇しているのが見える。ファンシーブルーが目指すのはここなんだろう。
両にらみと言っているアメリカのBCだけど、BCは13のG1レース、1つのG2レースから構成される。
この中にはいくつかの芝のレースがあるが、アメリカ競馬というのはダートが主流で、芝は傍流なので、
このBCの芝のレースというのは、主にヨーロッパからの遠征馬の活躍が目立つという。
BCは高額賞金で有名だそうで、BCターフ(2400m程度)の1着賞金が330万USドル、BCフィリー&メアターフ(牝馬限定・2000m程度)が110万USドルと。
ただ、この高額賞金の原資というのは、生産者や馬主から集めた各種の登録料なんですよね。
2020 ブリーダーズカップワールドチャンピオンシップの簡易登録要綱 (JAIRS)
複雑な制度で、アメリカ産馬なら出走可能性が低い段階から登録するんだろうけど、外国馬はそうもいかんでしょう。
全く未登録の状態から出走する場合、数万USドルの各種登録料がかかるので、なかなか出走できない。
これでは外国馬は来ないだろうということで、指定競走の優勝馬では登録料の優遇や輸送費補助が得られる仕組みになっている。
現状ではファンシーブルーはこの条件を満たしていないと見られるが、今後出走予定のレースで優勝すると該当するとみられる。
一方のエリザベス女王杯、というかJRAのGIは予備登録は無料、登録料は直前に30万円払うだけ、
その他にJRA馬主登録に1名10万円ぐらいかかるが、そんなに高いものではない。
一定の条件を満たせば輸送費補助あり、賞金もおしなべて高額である。報奨金対象になればより高額である。
いいことだらけに見えるが、最大の問題は地元馬が強いということである。
去年のジャパンカップで遠征馬0ということでいろいろ言われたものだけど、外国馬にとって勝ち目がないことに尽きる。
いかに金銭的な負担が軽いって言っても、やっぱり勝てるレースじゃないと遠征しないわけですよね。
そんな中ではエリザベス女王杯はスノーフェアリーが2連覇してる通り、比較的狙い目なのかもしれない。
日本における最強牝馬決定戦という位置づけらしいのだけど、同時期にはあれこれと大レースがありますから。
少なくともアーモンドアイは、昨年優勝した天皇賞(秋)に出走するそうだから、中1週でエリザベス女王杯に出走することはないだろう。
エリザベス女王杯は例年ならば京都競馬場だが、今年は工事の都合で阪神競馬場とのこと。
これもヨーロッパからの遠征馬には合ってるんじゃないかという話である。
課題は新型コロナウイルスの影響で、ヨーロッパでは賞金減額が多発している。(cf. 1990mは限りなく2000mに近い)
これはアメリカのBCの方が心配がありそうで、ちゃんと開催されるのかとか、賞金は大丈夫なのかと心配されている。
少なくとも、日本のエリザベス女王杯は、当初賞金通りで予定通り開催される可能性が高いと言える。
問題は外国からの遠征が可能かということで、馬はよいが、馬に伴ってやってくる人が大丈夫かということである。
ただ、秋になればヨーロッパ諸国との移動条件も決まるだろうから、なんとかなる可能性はある。
エリザベス女王杯は予備登録も無料なので、言うだけならタダということで、様子を見ながら判断できるんじゃないか。
この辺は6月時点で100万円以上の登録料を納める必要があった凱旋門賞とは事情が違う。
日本馬の登録はイギリス滞在中のディアドラだけになったのはどう考えてもそのせい。(cf. フランス式の馬券の売り方)
というわけで、来日するかは微妙なところだが、それなりに期待はあるのかなと。
こうやって見てみるとJRAは外国馬になかなか手厚いですね。ジャパンカップ以外にも遠征費補助のあるレースもけっこうあるし。
検疫であったり、帯同馬(馬は集団行動するので、遠征時には2頭以上でやってくるのが通常)が挑戦するにふさわしいレースが少ないとか。
いろいろ課題はあるのだけど、それはそれとしても制度上は魅力的なものにはなっていると思う。
最大の問題は、日本馬が地元で強いということで、ここは一番どうにもならないというかなんというか……
そこを打ち破るような馬にこそ来て欲しいというのが日本のファンの期待ではあるのだろうけど。