近鉄が来年4月に純粋持株会社に移行する方針であることが発表された。
会社分割による純粋持株会社制への移行に関するお知らせ (pdf) (近畿日本鉄道)
近鉄はいうまでもなく鉄道事業を営む会社だが、他にも生活関連事業を営んでいる。
会社案内の事業内容にはこうある。
1. 鉄道および軌道の経営
2. 土地、建物の売買および経営
3. 駅構内店舗等の経営
4. ホテルの経営
5. 観光娯楽、スポーツおよび文化施設の経営
6. 電気通信事業、有線放送事業等情報サービス業
これを事業別に子会社に分割するということだそうだ。
しかし、不動産業というと近鉄不動産という会社があるじゃないかと。
確かに建物を建てたり、土地と建物を売るのは近鉄不動産だが、土地を開発するのは近鉄だそうで、
確かに土地の売り主は近鉄と書かれている。区画整理事業の施行者も近鉄だ。
けど実際の土地の販売は近鉄不動産が行っているから、このことを意識することもあまりないような気もするが。
建物もマンションだとかは近鉄不動産が建てて売っているが、商業施設やオフィスビルは近鉄自身が建てて所有している。
上本町YUFURA もまもなく完成する あべのハルカス もそうだ。
近鉄百貨店は近鉄の所有するビルに入っているわけだ。
駅構内の店舗を経営してるのは近鉄リテールサービスじゃないのか?
と思った人もいるだろうが、実務上はそうだが、経営主体は近鉄になっている。
今の近鉄の駅売店は、近鉄がファミリーマートのフランチャイジーとなり、駅構内にファミリーマートを作り、
その業務を近鉄リテールサービスに委託するという構造になっているということだ。
車内販売も主体は近鉄で近鉄リテールサービスに委託して行っている。
Time’s Placeのような駅構内のショッピングモールもどうなんだろ。これは近鉄自身でショッピングモールの管理をやってるのかな。
あと、サービスエリアの運営も近鉄がやってるけど、これは近鉄が直接やってるのかな?
ホテルの経営なんて本当に近鉄がやってるのか?
調べてみると、これも近鉄が経営主体で、近鉄ホテルシステムズに委託しているようだ。
ホテル志摩スペイン村(志摩スペイン村が主体らしい)や奈良ホテル(JRとの合弁会社)は近鉄が主体ではないが、
あとは全て近鉄が経営主体で、これを委託しているという形らしい。そんなの気付くかよ。
他にも近鉄旅館システムズに委託されているホテル(というか旅館)もある。
レジャー施設も似たようなもんなんだろうな。
そういや花園ラグビー場は近鉄の所有なんだよな。実務上は近鉄レジャーサービスに委託されているようだが。
電気通信事業はおそらく近鉄の線路に沿って引かれた光ファイバーの話だろうから、
鉄道の付帯事業のような気もするけどね。
KCNのCATV事業はそれで独立してる……と思うんだけどね。
実務上は事業別に分割されているように見えた近鉄のもろもろの事業だが、
実際にはかなり近鉄に集中していることがわかる。
純粋持株会社への具体的な移行方法は示されていないが、
現在、近鉄から委託を受けてやっている会社が事業主体に変わる部分も多いような気もする。
不動産事業は近鉄自身が担ってる部分がわりに多いように思えるので、ここが一番複雑かもしれないね。
鉄道事業は新たに会社作ってそこに移行とするしかないから、これは明快だが。
純粋持株会社への移行の理由だが、
当社グループは、純粋持株会社制への移行により、変化する経営環境の中で、各事業の特性を活かしつつ、グループの総合力を最大限に発揮し、グループ経営機能の強化と各事業会社の自立的経営により、企業価値の増大を図ってまいります。
事業ごとに会社を分割することや、委託を受けていた会社が経営主体となることで、独自に人材を育てて、
現在の中心である鉄道事業以外の発展につながるんじゃないのということらしい。
現在の体制がどうなってるのかわからないから、具体的にどういう変化があるかはわからないけど、確かにとは思った。
ちなみに関西の鉄道会社では阪急が2005年に持株会社に移行している。
かつての阪急電鉄は阪急ホールディングスに改名されたのだが、
このとき鉄道事業を継承した(新)阪急電鉄の事業内容は依然として広くて、
不動産事業も駅売店などの流通事業、さらには宝塚歌劇団も阪急電鉄そのものがやっているのだから、どこが変わったの?と思わないでもない。
その後、阪神との経営統合が行われ、複雑な整理が行われたのだが、阪急電鉄の事業は相変わらずだ。
近鉄は事業ごとに分割すると示しているのでまた事情は違うし、目指すところも違うんだろうなと思う。
鉄道事業と不動産事業が分かれるのがどうなのかというのは気になるところなんだけど、困らないんかな?