玉がないのでジャパンカップへ

ジャパンカップというと最近は日本競馬のチャンピオン決定戦の色合いが濃いが、

そもそも国際招待競走だし、なんやかんやと外国からの参戦はある。

高額賞金に褒賞金に、タダ同然の登録料で興味を引くのは確かであり、

ヨーロッパの有力馬の動向で「ジャパンカップも選択肢に」なんていうのはよく出てくるが、

実際、なんやかんやと言ってこないのは常である。

そんな中では本気度が高そうだと思ったのがフランスのカランダガンである。

キングジョージ覇者カランダガンがジャパンC参戦へ! ダノンデサイル出走の英インターナショナルSは回避 (サンスポ)


なぜかというと、この馬は せん馬 なんですよ。

3歳になる前に去勢されてしまい、これによりダービーなどクラシック競走への出走ができなかった。

このため頭角を現してきたのは、3歳夏以降のことである。

昨年のチャンピオンステークス(ドゥレッツァが出走し5着)で2着となり、

4歳となり、ドバイシーマクラシックではダノンデサイルの2着、

サンクルー大賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスと、2400m級のG1で2連勝、

こうなればやはり凱旋門賞に向かいたいところなのだが、

凱旋門賞の出走条件は「3歳以上牡馬・牝馬」すなわち せん馬は出走できない。

このため、他に目標を考える必要があり、その候補の1つにジャパンカップがあり、

これがどうも有力らしいということである。


2歳・3歳で「牡馬・牝馬限定」というのはけっこうある。

イギリスのクラシック競走はその典型例である。

日本もこれにならい2歳・3歳のG1級レースとその前哨戦の一部は牡馬・牝馬限定としている。

NHKマイルカップも牡馬・牝馬限定なんですよね。

ジャパンダートダービーは元々違ったが、3歳ダート三冠のときに全て牡馬・牝馬限定となった。

唯一、全日本2歳優駿についてはこの制限がない。

一方でオーストラリアやアメリカのように せん馬にことさら制限を設けない地域もある。


一方で 4歳以上馬が出走できるレースの「牡馬・牝馬」限定は少ない。

日本では長らく春・秋の天皇賞が4歳/3歳以上牡馬・牝馬の条件だった。

これはクラシック競走と並んで種牡馬・繁殖牝馬の選定のための重要レースと考えられていたためである。

ただ、国際GIになった翌年の2008年から せん馬の出走も可能になった。

明確な理由はわからないが、2008年からメルボルンカップ優勝馬の天皇賞(春)への招待制が導入されたのと関係があるかもしれない。

(日本競馬は去勢に慎重だが)

だからといってメルボルンカップ優勝馬が来るわけじゃないんですけど。


実際どうなのよと International Cataloguing Standards Book を見るかと思ったんだが、

3(4)歳以上牡馬・牝馬限定という条件はあえて書かれてないんだよな。

ただ、調べた限りではパートIのG1ではフランスの2レースのみのようで、

それが ジャック・ル・マロワ賞 と 凱旋門賞 である。

(ムーラン・ド・ロンシャン賞 も2019年まではこの条件だった)


日本競馬の感覚で言えば、それってそんなに問題かいという話ではある。

日本は現役馬の去勢に非常に慎重で、せん馬の割合は相当少ない。

春・秋の天皇賞が せん馬が出走可能になったところで、未だに せん馬の優勝馬は出ていない。

しかし、ヨーロッパではクラシック競走が終わって4歳になる頃には、

種牡馬としての期待が薄い馬は続々去勢されるのが常である。

オーストラリアはデビュー前に去勢されるのだって珍しくないという。


実際のところ、凱旋門賞は4歳以上が出走可能といっても、3歳馬の割合が多いわけですよね。

20年数えて、3歳牡馬が6頭、3歳牝馬が4頭、4歳以上牡馬が4頭、4歳以上牝馬が6頭である。

そういえば凱旋門賞って牝馬が勝つのをよく見ていた気がするけど、

牝馬には去勢って概念がないので4歳以上でも容易に参戦できるんですね。


凱旋門賞が直面している課題はヨーロッパにおける長距離戦の地位低下である。

凱旋門賞が日本馬を招致したい理由

アダイヤー、ウエストオーバー、フクム、ソットサス……と

ヨーロッパの2400mのチャンピオンが続々種牡馬として日本にやってきているが、

それこそがヨーロッパでのこの路線の地位低下を如実に表している。

そう、凱旋門賞を勝って種牡馬入りしても、ヨーロッパではそうそう需要がないのである。

こうなると種牡馬・繁殖牝馬選定のため「牡馬・牝馬限定」という大義も薄れている。


去年にゴリアット(キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス優勝)が凱旋門賞に転戦できず、

そのことについてオーナーがずいぶん不平を言っていた。

結果としてジャパンカップに転戦し6着、今年も参戦の意向である。

「牡馬・牝馬限定」という条件を見直して欲しいという要望は多々あるようだが、

まだこの条件が改まるには至っていない。

チャンピオン決定戦として考えれば強力な せん馬を排除するのは不適だが、

種牡馬選定レースとしては せん馬が勝っては興ざめと。


日本の感覚では本当にわからない話なんですけどね。

ヨーロッパでは切実な問題のようである。

それでも優勝馬が種牡馬として期待されるようなレースならば大義はあるが、

結局それで行き場を失ったか、向かう先が日本ではねぇと。

まだ日本で活躍の場があるのはよかったかもしれないけど、

地元のダービー馬や菊花賞馬ほどの期待値はないだろう。

というわけで、条件見直しは避けられないように思う。


現時点では誰がジャパンカップに出るのかは定かではないが、

やはり地元の最有力候補はダノンデサイルでしょうね。

今年のダービー馬のクロワデュノールは凱旋門賞だし。

そのダノンデサイルにとってのジャパンカップ前哨戦が今月にイギリスであるインターナショナルステークスである。

実はカランダガンは元々ここへの出走を考えていたが、

最近のレース間隔を考え回避、次はジャパンカップが有力かとなっている。