馬術でメダルを獲得した日

3年前の東京オリンピックの時、こんなことを書いている。

戸本選手は最後まで食らいついたが、メダルには届かず4位、とはいえ入賞自体が89年ぶりという状況。

これは日本もうっかりメダルに手が届くところまで来ているのだと感じさせる見事な演技だった。

(競馬が盛んなのは馬術の助けになってるか)

そして今回のパリオリンピック、日本チームは総合馬術の団体で銅メダルを獲得した。

東京の時からチャンスはあると言われていたが、実際にメダルを獲得したのである。


実際のところはライバルの脱落によるところも大きい。

イギリスと優勝争いをするのではと言われていたドイツがクロスカントリーで1人馬が失権してしまった。

(馬術では落馬や連続での障害逃避など走行が継続できなくなることを失権と呼ぶ)

これでは上位争いでは全く話にならない。個人ではドイツの選手が金メダルを獲得してたが。

この他の上位チームではオーストラリアも1人馬失権となっている。

ニュージーランドが障害逃避で20点減点など大きな減点が発生したチームもあった。


日本もクロスカントリー終わった時点では障害のミスもなく全体3位とよかったのだが、

翌日の馬体検査でNGが出て、リザーブ人馬への交代を選択、20点の減点を受けた。

ただ、フレッシュな馬で障害飛越へ行ってミスなく行ければ、この減点もそこまで悪くない。

リザーブの田中選手も落下無し、若干のタイム減点で走破できたのでよかった。

他のチームは障害を落下させる人馬もいろいろいる中、日本は3人馬とも落下無しで立派である。

そんなこんなで20点のペナルティはあったが挽回して3位、銅メダルとなった。


1位になったイギリスは別格にすごいのだが、2位のフランスは他のチームが失権・減点を重ねる中で、

大きな減点なく全員終えられたのがよかったんだと思う。

日本はリザーブ交代の減点はあったが、クロスカントリー・障害飛越の結果がとてもよくて、

それは戸本選手(5位)・大岩選手(7位)と2人馬が個人入賞したことにも現れている。

他のチームの失敗に助けられたところはあるけど、4人馬ともよく結果を出したからこそのメダルではないでしょうか。


以前も書いたのだが馬術競技についてはJRAの馬券売上が投入されている。

オリンピックに出場する選手が乗る馬の多くは実績のある馬を購入したもので、

その原資はJRAが拠出していることが多いのである。

JRAがそこまでするのは馬事文化の振興のためと言われれば納得してしまうが、

引退競走馬のセカンドキャリアとして乗馬への道が期待されていることも大きい。

その馬を使ってやるスポーツが障害飛越などの馬術競技である。

日本国内では元競走馬の競技馬が馬術競技を支えているのが実情である。

世界トップクラスの大会となればなかなかそうもいかないようだけど。

すなわち競走馬のセカンドキャリアを確保するには馬術競技の普及が必要で、

そこで育った日本のトップ選手にはそれにふさわしい環境を与えているわけである。

日本競馬のサスティナビリティのために馬術競技に金をつぎ込んでいると言える。


最近の日本競馬では馬術の話題が出ることが増えている。

それは馬術競技から障害レースに転向した小牧加矢太騎手がきっかけである。

父がJRA所属の小牧太騎手(元は兵庫所属で、来月から兵庫所属になる)で、

馬に触れる機会はあり、騎手の道も考えたが体格的に難しかった。

ずっと馬術競技はやっていて、たびたび日本国内の大会で優勝している。

そんな中、障害限定であれば体重制限が緩いので騎手になれるのではないかと父に入れ知恵され、

通常は地方・外国で騎手としての実績がある人が受験する騎手免許試験を受験、

競馬学校を経ず、アマチュアからJRA騎手という異例のルートが開拓されたのだった。


馬術競技と(障害レースとはいえ)競馬はまた違いますけど、やはりうまくて、

障害だけで勝ちを重ねる新人は想定してなかったと、若手騎手の減量ルールの見直しが入り、

「加矢太ルール」なんて言われているが、早々減量から卒業することとなった。

一見すると新人をつぶすルールに見えるが、障害レースの減量は障害の勝数だけで決めるという内容で、

平地で減量がなくなった若手騎手も、障害に転向すると減量が復活するルールでもあり、

結果として若手騎手の障害騎乗が増えるという効果が現れている。


東京の頃から注目されていましたけど、実際メダルに結びつくと嬉しいですよね。

多彩な種目で結果を出せるのは日本のスポーツ界のよいところで、

思い返せば2008年の北京オリンピックでフェンシングでメダル獲得したときには驚かれたけど、

東京では男子エペ団体で金メダルを獲得、パリでは個人でも金メダルを獲得している。

それぞれの競技で国際大会のモチベーションもいろいろではあるけど、

やはりオリンピックのメダルというのは1つ大きな到達点だなと思う。

馬術が本当にメダルにたどり着くところまで来たのは感慨深い話ではないかと思う。


馬場馬術については日本からの出場はないが、障害馬術も団体で出場する。

馬術は放送局に不人気な種目としてどこぞの記事でも話題になっていたが、

そんなこともあってBSグリーンチャンネルで無料放送が行われている。

じっくり見られるのもグリーンチャンネルだからこそである。


それにしても昨日は劇的逆転が多かったね。

総合馬術もリザーブ交代による減点からの巻き返しがそうだったし、

体操男子団体は中国との熾烈な争いは予想されていたが、

日本は落下や技の認定で取りこぼしがある中、中国に引き離される中、

僕は寝てしまったのだが、起きると金メダルとなっていて、何ごと?

と思ったら、鉄棒で中国選手がまさかの2回落下、日本は3人ともよい演技を見せ、

0.6点差で日本が金メダルとなったという劇的な逆転劇だったという。

0.1点でも取りこぼさないように丁寧にやってきた結果はこうして実ることもあるのだ。

体操と馬術は緻密な逆転だったが、一方のスケートボードは大胆な逆転劇だった。

堀米雄斗選手がなかなかトリックを成功できない中、

最後の最後に大技を成功させて、一気にトップに躍り出るという。

オリンピック出場危ういと言われながらも出場枠を獲得し、

トリックが全然成功しないと見てたら、最後の最後に大逆転というので、わからんもんだなと。