最近、とある製品の再設計プロジェクトに参加してほしいという話があった。
今まで全く縁がなかった製品ということもあって、
まずは製品の用途や再設計に至る経緯を教えてもらった。
そもそもこの製品、かなり古い製品である。
買収した会社が買収前からやっていた製品がほぼそのまま続いているという。
この会社を買収した理由は、とある分野に進出するための足がかりで、
この分野特有の営業体制や製品開発手法を獲得していった。
この獲得したノウハウを生かして当部署で開発された新製品はヒットし、
この分野では世界屈指のシェアを誇る製品に成長していったわけである。
買収した会社は外国の会社なのだが、買収前からの製品は同国の拠点に開発・製造・サポート体制を残していた。
ただ、一方でこれはすでに成熟した製品群のため新製品の開発はなく、
製造を継続するための小さな設計変更を繰り返すばかりである。
それを少ない人員で回していたのだが、それでは厳しい状況が発生してしまい、
日本側から開発メンバーが加わって再設計プロジェクトを進めることになった。
もはや製品の維持が困難なので、この製品をやめることも考えたらしいが、
同分野で世界屈指のシェアを誇るメーカーであるという事情や、
この製品特有の需要があるということで存続が決まったという。
では、この製品特有の需要とはなんだったのか。
その理由は枯れた技術であるということが理由として大きいようだ。
スペック面ではうちの主力製品でも対応できる可能性はあるし、
そちらの方が拡張性が高く柔軟性が高いシステムが構築できる。
それでもあえて古くからあるこの製品を使いたいというニーズが一定あるのだという。
あるスペックを求めるとうちの主力製品では絶対対応できなくなるのだが、
そのようなニーズはほぼなく、客のこだわりで「あえて」選んでいるケースが大半だという。
構造的に故障しにくいと考えられているのが大きいのではないか。
このような事情から細々とした需要がほぼずっと横ばいで続いてきたらしい。
ただ、拡張性に乏しい製品なので、仕事の規模は比較的小さく、
新たなニーズの掘り起こしも難しく、商売としては苦しい状態が続いてきた。
なんとか打開したい思いはあるそうだが、容易ではないようだ。
ブランド力のために続けるという面が大きいのが実情ではないか。
再設計前のプログラムの解析を依頼されたときに、
上司から「お得意のリバースエンジニアリング」なんて言われたけど……
ちゃんとコメントの付いたCのコードではあるのだが、問題はそのコメントが何語か……
別にリバースエンジニアリングに期待されての人選ではないんだけどね。
いくつかの条件が揃うのが僕だったから選ばれたという話。
気がかりなのは外国拠点のメンバーと協調してのプロジェクトであることで、
言葉の問題もあるけど、力量がどうかとか懸念はいろいろある。
なんとか乗りきりたいですけどね。