固定翼機対応の駆逐艦

海上自衛隊の護衛艦「かが」が固定翼機対応になったという話。

飛行甲板が長方形に 「空母化」した護衛艦かが 初の試験航海 (朝日新聞デジタル)

空母化というものの、改修前後を通じて「ヘリコプター搭載護衛艦」である。


もちろん護衛艦という言い方は自衛隊の事情によるものではあるのだが、

「ヘリコプター搭載護衛艦」は DDH という記号が付いていて、

駆逐艦(Destroyer)の一種として扱われ、それは改修前後を通じて変わっていない。

もっともこのあたりの言い方が実態に合っていると言えるのか、

というのは日本の海上自衛隊に限った問題でもないらしいが。


昔の海軍といえば、大砲を備えた戦艦(battleship)が主力艦だった。

ただ、戦艦は小回りが利かないので、水雷艇による攻撃が効果的だった。

で、その水雷艇を駆逐して戦艦を守る船として現れたのが駆逐艦だという。

戦艦に比べれば小型で機動性が高い艦船ということになる。

さらに、その高速力を以て搭載した魚雷で敵戦艦を攻撃するという、本来なら駆逐すべき水雷艇の任務すら与えられ、水雷艇の存在意義をほとんど消し飛ばしてしまい、本当に「水雷艇」を「駆逐」してしまうほどだった。

(駆逐艦 (ニコニコ大百科))

この時代には戦艦より長距離航行できる艦船として巡洋艦(cruiser)もあったという。


現代においては戦艦はもはやなく、ミサイルを搭載した駆逐艦が主力艦となることが多くなった。

現代の海軍においては駆逐艦は比較的大型の艦船と扱われている。

駆逐艦が大型化していく中で巡洋艦という呼び方もほぼ失われたという。

日本でイージス艦と呼ばれているのは、ミサイル護衛艦(DDG)で、DDとあるようにこれも駆逐艦の一種である。

世界的に見てもミサイル駆逐艦というのは一般的な呼び方ではあるが、

アメリカでは大型のものがミサイル巡洋艦(CG)として扱われたこともあるよう。


一方で航空母艦(空母)の話。

かつては飛行機といえば固定翼機だったので滑走路のスペースが必須だった。

なので当然そのための特別な形状をした船が必要だったわけだね。

しかし、ヘリコプターを運用するならば長い滑走路が必須ではない。

というので駆逐艦にヘリコプターが搭載されることは普通になっているよう。

一方で空母の方でもヘリコプターを活用するための比較的小型のものが作られるようになり、

そのような空母は軽空母(CVL)とかヘリ空母(CVH)と呼ばれるとのこと。


ニュースのタイトルには「空母化」と書かれているけど、

ヘリコプターだけを運用する時代から軽空母(ヘリ空母)に相当する機能を持った駆逐艦として扱われていたのが実情ではないか。

果たしてそれは駆逐艦なのかという話はあるが、政府の見解としては、

いずも型は航空機も運用するが、輸送や医療の機能なども備えた多機能な護衛艦であり、空母ではない

とのこと。

軽空母が多機能化したものという主張もできそうだが、そもそも駆逐艦という言い方が幅広いのでなんとも。


この改修のポイントとしては、使用する固定翼機がV/STOL機であること。

カタパルトを備えたり、スキージャンプ台と呼ばれる装備を備えずとも、

ごく短い滑走路で離着陸できるという飛行機である。

改修後に発着艦が想定されているF-35Bは短距離離陸垂直着陸機で、

これならば船の形状を少し変えて、耐熱化すれば対応できたと。

DDHの固定翼機対応ができたのはそれがあったかららしい。

世界的に見てもそのような改修はわりと行われているとのこと。


実際、どれぐらい効果的に使えるのかな? というのはよくわからないけど。

いろいろ考えた上でメリットがあるとみているんでしょうけどね。