自転車類似の原動機付自転車

今日から特定小型原動機付自転車の制度が創設される。

原動機付自転車だが免許不要で利用できるという乗りものだが、

概念的なところと実務的なところを確認してみる。


そもそも日本では免許不要の動力のある乗りものがそこそこ普及している。

1つが電動アシスト自転車、制度面では自転車に該当する。

漕ぐ力以上の2倍以上の動力を加えないこと、24km/h以上では動力を加えないことなどの条件がある。

もう1つがシニアカーなど歩行者扱いになる乗りもの。

これは6km/hを超えないことなどが条件で、最近では自動配送ロボットもこの枠組みで認められている。


もう1つ、原動機付自転車という制度について。

道路運送車両法と道路交通法で定義が異なるのが難しいが……

  • 2輪・3輪で排気量51~125cc相当(原付二種) → 道路交通法では自動二輪車
  • 4輪で排気量50cc以下相当(ミニカー) → 道路交通法では自動車
  • 2輪・3輪で排気量50cc以下 → 道路交通法上の原動機付自転車(30km/h規制・3車線以上で二段階右折など)

一般的に原付というと3つ目のタイプを表すのだと思う。

明確に区別するために原付一種と呼ばれることもある。

このタイプはバイクとして考えれば制約が多いが、最大のメリットが運転免許である。

ペーパーテスト+講習で運転免許が取得できて、四輪の運転免許にも付帯するためである。(というか四輪でも原付講習は受けないといけない)

原付二種が運転できる免許(現在の制度では小型限定の普通自動二輪免許)を講習で取得できるようにして代替するという案も出てたが。


ここに特定小型原動機付自転車が加わるわけである。

サイズが普通自転車以下で、電動で最高速度が20km/hというもの。

制度面の略称は「特定原付」でよさそう。

さっき電動アシスト自転車は24km/h以上ではアシストしないと書いたが、

こちらは電動のみで20km/h以下ということでだいたい類似している。

後で詳細を書くが、走行面ではバイクというより自転車の制度が適用される部分が多い。

でも、電動アシスト自転車と異なり、まるっきり自転車ではない。


また、制度上は「特例特定小型原動機付自転車」――「特」が2回出てくるのは命名としてどうかと思うが――というのがある。

一般には 歩道モード と呼ばれ、最高速度6km/hに抑える代わり歩道走行が可能である。

これもシニアカーなどに合わせたものである。

シニアカーなどと比べるとスイッチ切替で歩行者相当になれる点が異なる。

バイク・自転車は押し歩きで歩行者になることは認められていたが、

スイッチ切替で動力を使っても歩行者相当になれる点は他と異なる。

ただ、シニアカーなどと異なりまるっきり歩行者ではない点に注意が必要。


というわけで、概念的に言えば、道路運送車両法の原動機付自転車は、

  • 自動二輪車扱い (原付二種)
  • (四輪)自動車扱い (ミニカー)
  • 自動二輪車類似だが速度制限あり (原付一種)
  • 自転車類似 (特定原付)
  • 歩行者類似 (特例特定原付) [特定原付からスイッチで切替可能]

と5つの制度が存在することになる。

下2つについてはモード切替が可能という事情も踏まえ、識別灯が必要になる。

緑色のランプが点灯していれば特定原付、自転車類似の制度が適用される。

点滅していれば特例特定原付、歩道走行モードで歩行者類似の制度となる。

特定原付を乗らない人も最低限、この点は知っておくとよい。

ただし、過渡的には緑色のランプを備えない特定原付も存在するという。


というわけで概念的な話はこれでよいが、実際はもう少し複雑である。

特定小型原動機付自転車(いわゆる電動キックボード等)に関する交通ルール等について (警察庁)

特定原付は自転車類似のルールが適用されると言うが、下記は原付そのもの。

  • 課税標識(ナンバープレート)の取り付け (他の原付より小型のもの)
  • 軽自動車税の課税
  • 自賠責保険(あるいは共済)への加入
  • 運転者の年齢は16歳以上 (免許は不要だが、免許の年齢要件と同じ)
  • 交通反則通告制度(通称:青切符)の対象

16歳以上という年齢制限は必要なんですかね? もう2歳ぐらい緩いと使い道も増えそうだが。

一方でそれ以外は自転車の制度とかなり似ている。

ヘルメットの着用は必須ではないが努力義務として強く推奨されている。

二段階右折は自転車と同じく必須となる。これはわかりやすいが。

標識の「自転車」「軽車両」は特に除外されていなければ特定原付も含む。

一方通行の多くは自転車は除外されているので、左に寄って特定原付で走ることはほぼ可能である。


ただ、まるっきり自転車と同じではないのが歩行者との混在である。

特定原付は車道の左車線・自転車レーンを走行するのが原則である。

あるいは柵などで区切られた自転車道も走行可能である。

ただし、自転車道の走行義務のある自転車と異なり、特定原付は自転車道も走れるだけであって、車道の左を走ってもよい。

そして標識がある場合に認められる自転車の歩道走行だが、特定原付としては認められない。

歩道を線で区切って自転車・歩行者を分けている場合は自転車の歩道走行に該当する。

また、歩道がない道路の路側帯の特定原付の走行も認められない。

このような区間では特定原付は車道の左を走行しなければならない。

柵で区切られた自転車道と、線で区切られた自転車走行部分は特定原付にとっては大違いである。

これが混在する道路も多いので、実務的には自転車道を特定原付が走行するのは難しそうだなと思う。

車道の自転車レーンを走行するのは問題ないだろうけど。


この点について、特例特定原付、すなわち歩道モードは緩和されている。

ただ、これもまるっきり歩行者と一緒じゃないんだよね。

そもそも自転車走行可の標識のある歩道でなければならない。

その歩道を走る場合は車道側を走行すること。(逆走は可能)

路側帯は左の路側帯のみ走行可能で、二重線の歩行者専用路側帯は走行不可となっている。

歩行者と混在する場合は自転車と類似するルールが適用されるということ。

自動車が走行できない道路の場合、下記の扱いになる。

  • 歩行者専用道路(歩行者天国)は歩道モードでも走行不可
  • 自転車歩行者専用道路では 歩道モードならば 走行可能
  • 自転車専用道路では特定原付は走行可能

ただ、日本では歩行者が一切歩けない自転車専用道路はあまり存在しない。

6km/hの歩道モードでちんたら走るなら自転車歩行者専用道路も使えるが、

多摩湖自転車歩行者道(cf. 確かに自転車歩行者専用道ですね)の自転車レーンをちんたら走るのはさすがにキツイ気がする。


歩道モードは使い道が少ないのでは? と対応しない車種も多いようだ。

確かにこれを常用するのはきつそうだなと思う。

特定原付は自転車類似といいつつ、走行場所はなかなかそうもいかない。

なので歩道モードにして歩道を含めて自転車が走れるところはどこでも走れるようにするという選択肢を与えたというのが実情だと思う。

でも、やっぱり使い道ないのでは?


さて、ここまで特定原付の話を書いてきたが、警察庁の資料にも「電動キックボード」とあるようにキックボード型の車両が多い。

確かにこれらの特徴を備えた車両として作りやすいことはあるんだと思う。

ただ、職場にいる自転車で走り回っている人も言ってたんだけど、

立ち乗りで20km/hは乗ってる方も周りも怖いのでは? という印象である。

車輪の径が小さいので乗り心地や安定性が気になるという話もある。


というわけで、特定原付の制度自体に納得感や魅力を感じたとしても、

そのために用意された車両はイマイチという声はけっこうあるように見える。

ペダル状の足置きを備えた自転車形の車両を考えているメーカーもいる。

ペダルを漕がない「電動サイクル」 免許不要で改正道交法対応 (Impress Watch)

特定原付はサイズが普通自転車相当なので、動力源という目的がなくても足置きとしてペダルを使うというのは手っ取り早い方法かも。

スクーター形の車両も出てくるといいと思うんだけど、どうでしょうか?


あと、これは特定原付に限った問題ではないけど、無免許でルールが遵守されるかというところですよね。

特定原付は自転車類似なので免許不要と言っているけど、ルールをまるで知らないかのような自由な走り方をする自転車はけっこういる。

車道の左側を走行するという部分は自転車も特定原付も同じルールだが、

実態としてこれを逆走する自転車はあまりに多いから心配だ。

また、自転車と歩行者が混在できるところでの安全面の課題も多い。

特定原付では歩道モードを除けば歩行者との混在はほとんど生じないが、

この点は自転車との差異が多いところなので、ルールの周知が課題かもしれない。


というわけで概念的にはなるほどと思う部分は多いのだけど、

実務的にはこれいけるのかな? と思う部分が多いところである。