報われない大量の輸血

昨日のBlogは福島県沖で携帯電話の電波が拾えるチャンスを狙って書いた。

夕方になると海上が荒れるかもとなんと入港が1時間早まるという案内もあったが。

Blog書いたり、風呂入ったりしても、なおしばらく暇ということでテレビを付けたら、

ワンセグが受信できるかできないか微妙な地上波のNHKを選局したら、

「安倍元首相 血を流して倒れる」というニュースが見えた。

ただ、不安定なので詳細を知るのはNHK BS1に切り替えて、BSニュースになってからである。

心肺停止という情報があったが、ドクターヘリで搬送される映像もあり、

これは一体どうなんだろうかと思ったが、結局は同日死亡とのことだった。


この件で僕が最もやるせないなと思ったのがこのことである。

安倍氏は午後0時20分に心肺停止の状態で病院に運ばれ、死亡するまで心肺停止の状態が続いたという。病院は外来処置室で20人態勢で治療に当たった。手術では胸部を開き、出血点を探して止血するとともに、大量の輸血をした。輸血量は100単位以上だったという。

(銃撃された安倍元首相、心臓と大血管を損傷 死亡確認の病院が会見 (朝日新聞デジタル))

大量の輸血をするも助からずという一報を見た時点でも苦しかったのだが、

100単位以上とみて、400mL献血が2単位に相当するから、50人以上の献血による赤血球製剤を投与しても、結局は救命できなかったということで、唖然とした。

400mL献血に協力してくれる人を50人も見つけるのは本当に大変なのにと。

結果だけ見て言ってよいものかとは思うが、本当に勝ち目があると思っての輸血だったのかという疑念は未だぬぐえないところがあり、

長年にわたり献血に協力してきた1人としては大変苦しい思いである。


こういうことを思ったのは初めてのことではない。

2014年に長年患ってきた病気により祖母が亡くなったのだが、

亡くなる少し前に病院に運び込まれ、いろいろ治療がなされたわけである。

運び込まれてから最終的な診断に至るまではいろいろあり、医師としても難しい判断があったんじゃないかと推測するところである。

そんな中で僕が病院に行った時に「輸血を受けている」という話を聞いて、「えっ」と思った覚えはある。

消化器からの出血があって、それに対して輸血をしたということだと思う。

この出血は対処できないという判断で、これ以上の輸血はないとのことだったが、

こうして血液製剤が使われているのか……という実情を知り、どうにも複雑な思いがあった。


もちろん血液製剤により救われた命は多くいるわけである。

現在、血液製剤の使用先として多いのが がんの治療だというが、

治療により造血機能に影響をきたし、継続的な輸血を要する話もあると聞いている。

血液製剤の安全性向上のため赤十字社と献血者は努力しているが、それでも輸血のリスクは高い。

それでも他に代えがたいということで、そこに可能な限り協力するのは使命だと思っている。

しかし、そのような懸命な治療も実らない例があることもまた実情である。

これは理解するが、治療効果が見込みがたいのに漫然と輸血するのは違うよねと。


50人以上もの献血からなる血液製剤を投与されたのは、

元首相だから? というひねくれたことを言う人もいたが、それはないと思う。

ただ、特別扱いされる要因があったとすれば、犯罪被害者であったということである。

ドクターヘリが急行して救急隊から引き取った時点ではすでに心肺停止、

救急隊員も医師も病院に収容されるまでの間、救命のためにできることはやっていたと思うが、

少なくとも救急隊から引き取ってからは心肺停止から回復することはなかったという。

何十分も心肺停止が続けば、その場は救命できても極めて悪い状態にしかならないことは目に見えているわけである。

にもかかわらず積極的に止血・輸血に取り組む意味はあったのだろうか?と。

これは医師の判断としか言えないのだが、被害者と加害者のことを考えればやらないわけにはいかなかったのではないかと。


被害者とその親族・その他関係者にとっては、安易に引き下がることになれば犯罪に屈したことになるからということ、

加害者にとっては、救命できるかどうかがその後の更生に影響するからということ。

そのためには最善を尽くす必要があったと。

今回はドクターヘリの効果もあって早期に医師が介入し、かなり早い段階で高度な医療体制の整った県立医大病院に運び込むことが出来た。

これが遅れれば、そもそも止血・輸血の効果は全く期待できない判断だったかもしれない。

結果的には治療効果は得られなかったが、単純な結果だけ見て言える話でもない。


この一件だけ見れば、50人以上の献血による血液製剤は十分な効果を得なかったということになるが、

巨視的に見れば、外傷による輸血は血液製剤の使用量のうち3.5%でしかない。

その中には100単位以上という輸血を要する外傷もいくらかはあるのだろう。

それでも全体としてはこんなもんである。

血液製剤の有効利用を語るならば、各種手術 や がん などの治療に関わる輸血の方がよっぽど重要なことであり、ここの効率化こそが課題である。

そういう形で考えを改めて見ると、ちょっと気が楽になってきた気がする。


安部さんは内閣総理大臣を辞して現在は衆議院議員の1人ではあるが、

だからといって無防備だったわけではなく、警察もそれなりの体勢で警備していたようである。

今回の事件の背景が政治的なものであれば、他党への報復攻撃ということもあるかと思ったが、動機はそうではなかったらしい。

「特定の宗教団体に恨み。近い安倍元首相を狙った」 容疑者が供述 (朝日新聞デジタル)

この団体については警察も名前を伏せている状況である。

ただ、どうも調べてみると自民党というのはいろいろな宗教団体などと関係があるようで、世間ではカルトとされるものも少なくないようである。

直接関係ないとみられるが、少し前にこんなニュースもありましたね。

「同性愛は精神の障害か依存症」 自民会合で配布の文書に差別的内容 (朝日新聞デジタル)

神社がカルトであるという話にはならないと思うが、神道政治連盟という団体はかなり先鋭的な団体であることをうかがわせるところがある。

安部さんはこの神道政治連盟とも関係が深い議員の1人でもある。


近年は社会が不安定化して、それがこのような凶悪事件の後押しをしているのでは?

という見方もあるところで、そこに安部さんの総理大臣在職期間が重なることもまた1つの側面である。

これについては自民党、ましては総理大臣だけに要因を求めることはできなくて、

国内外の情勢を考えれば、どうしてもこういう形にしかならないところはある。

ただ、安部さんは長きにわたる総理大臣を努めたこともあり、象徴的な人物であったことは確かである。

それが狙われる要因になるか? と一報を聞いたときには思っていた。


このような社会情勢は各政党にもいろいろな影響を与えていて、

1つは立憲民主党・国民民主党の2つの民主党問題である。

相容れないところがあり分裂し、以後2つの政党は先鋭化を強めている。

大阪府を中心に台頭している日本維新の会(大阪維新の会)もまた先鋭的な政党である。

そういう状況には「国民政党」を自認していた自民党も無縁ではなかったのだろう。

未だにそれなりに多様性はある政党だとは思うが、だんだんと先鋭的な主張に蝕まれるようになってきていたのは確かである。

先ほど紹介した神道政治連盟の主張は自民党を蝕むものの1つではないか。


いろいろ書いてきたが、やはり亡くなったことは無念ということに尽きると思う。

総理大臣は辞したが、一議員あるいは派閥の代表として今後も活躍が期待されていた人である。

動機を聞くと、完全なとばっちりだし、この点も悔しい話である。

総理大臣時代は苦しいことも多かったと思うが、それで結末がこれでは報われない。


今回、警察の警備についての不備も指摘されている。

ただ、今回使われた手製の銃というのは、遠目にはカメラにも見える不定形のもので、

それを事前に警戒してどうこうという話は難しいのが現実だと思う。

そもそも日本では銃やその他凶器の規制は相当に厳しく、ゆえに手製の銃が使われたとも言えるが、それで襲撃を成功させることは並大抵のことではない。

なかなかここまでの事態は予想できなかったんじゃないか。

奈良市での演説は直前に決まったことで準備が不十分だったという指摘もあるが、

これでも元首相という立場から警備は厳しい方であったのであって、

多くの議員または候補者は、警備なんてほとんどない状況で機動的に動いているところである。

全ての議員・候補者・政治団体を守ってこそ、自由な政治活動があると思うが、

今回のような襲撃は規制や警備でどうにかするのはやはり難しいのではないか。

未然に防ぐ努力が必要だといわれても、組織犯罪ならともかく、ローンウルフ型と言われているが今回の様に1人でやられては事前の対処も難しいだろう。