段差解消はされているが実用的ではない?

新築移転を予定している愛知県体育館についてバリアフリーの観点で問題が指摘されているというニュースを見て、

障害者団体が騒いでるからと言って真に受けて良いものかと思いつつ、

詳しい事情を見てみると、確かにこれはかなりキツイぞと思った。

【独自】隈研吾氏デザインの愛知県新体育館にバリアフリーの大問題 26年アジア大会に影響も (Yahoo!ニュース)


問題となっているのが、体育館のメインの入口が2階で、

そこへ至るルートは基本的に大階段となっているということである。

とはいえ、階段以外のルートがないわけではない。階段の右側にエレベータ1基ある。

ただ、エレベータが比較的小型のもので、なおかつ多くの来場者が見込まれる体育館なので、これは厳しいのではないかということだった。

その後、エスカレータの追加、スロープの追加、エレベータの大型化という方針が出てきたが、

もともと大階段をメインルートとしてきた都合、無理のある導線が多く、

後付けで仕方なく付けるのならこれもやむを得ないけど、公共施設のバリアフリー化が当たり前になった新築される施設とは思えない状況になっている。


どうしてこんな計画が出来てしまったのか。

まず、このような体育館では来場者と関係者の導線を分けることが好ましい。

また名古屋城跡に立地する都合、埋蔵文化財の保護の観点で地下に掘るのは難しい。

このため、関係者は1階・来場者は2階から入ることを基本としたわけである。

このような構造は珍しいものではないが、2階への導線が大階段に集中することが問題である。

大階段の構造上、エレベータは少し離れた場所に置かざるを得ない。


そこで使えるエレベータが1基のみというのは貧弱に見えるが、実は建物内には4基のエレベータがあるのだそう。

ただ、そのためには1階から体育館に入る必要があるが、

さっき「関係者は1階・来場者は2階から入ることを基本」と書いた通りで、

イベントの運営上の都合で1階からの出入りは限定的にしかできない可能性がある。

車いすでの来場者に対して特別扱いすることは可能だと思うが、

足が使えても大階段を上るのはきついと思う人も多そうである。

そういう人の迂回ルートは当初計画では離れた場所にあるエレベータ1基しかなく、

この1基でOKとしてのには、無理をして階段を上らせるからというのもあったのかもしれない。


これを見て思いだしたのが、大阪駅の北側、アトリウム広場に設置された仮設エレベータのことである。

大阪駅の北側にはJR高速バスターミナルがあるが、ここは横断禁止である。

梅田地区は安全面から横断禁止箇所が多く、地上を歩くのはなかなか大変である。

アトリウム広場は高速バスターミナルを乗り越え、駅北側を結ぶ役割を果たしている。

ただ、この広場は本来ならばグランフロント大阪につながるはずだったが、開業が遅れていた。

このため、北側へのアクセスを確保するために広場に穴を開けて仮設階段を付けた。

階段を利用できない場合、ノースゲートビルディング内のエレベータが利用できるとはなっていたのだが、このエレベータはひどく混み合う。

どれぐらい混むかというと11階の映画館にエスカレータでの来場を推奨する掲示があるほど。

これは問題だということで、仮設階段脇に仮設エレベータを設置することになった。

現在はグランフロントへの通路に階段・エレベータが取り付けられ、仮設階段・エレベータは撤去されている。

また、道路を挟んで向かいなのにどうにも往来しにくいヨドバシ梅田との間に数本の歩道橋が架けられ、デッキレベルでの回遊性が上がった。


理屈上は段差なしでの移動ができるように作ってあっても、

エレベータの目的・大きさ・混雑などによって目的を達成できないことはあるということ。

大阪駅のアトリウム広場については、グランフロントと開業時期がずれたことによるもので、最低限の段差解消はできているから、当面はこれで乗りきるのは理解できる面はある。

迂回を促すなどの方法もあるが、高速バスターミナルのために歩行者通路を分断した経緯もあるので、仮設エレベータの設置をせざるを得なかったとも言える。


愛知県体育館の件も理屈上はこれで段差解消はできているのだが、

実際の利用者の導線を考えるとどうにも無理がある。

1階から来場者が自由に入れるのなら、確かに問題はないのだが、

それだと関係者の導線と錯綜するから、一般の来場者は2階から入る導線をメインにしたんじゃないかと問われると苦しい。

打開策はいろいろあると思うのだが、根本的な構造を見直さないと、本質的な解決にはならないような気がする。

ただ、それをするとアジア大会をターゲットした開業予定が変わってしまいかねない。


ちなみにこの新体育館のプロジェクトはPFIということで、

民間事業者(前田建設工業・NTTドコモ他)が建設・運営をするという形で、

この仕組みゆえに多目的利用で稼げることが求められた面はあると思う。

そのことと、無理のある来場者導線ができたことを結びつけることは適切ではないかもしれないが、

ただ、愛知県が当初思い描いていた施設配置とはかなり違ったのは確かで、

このため愛知県は「車いす以外の利用者もエレベーターが利用できるよう配慮すること」などの要望を出していた。

それを考慮した結果がこれなのか? という話である。