賞金増額は有力馬を引き留めるためか

ちょっと前から「ジャパンカップ・有馬記念の賞金が4億円になるらしい」「ダートG1の賞金が上がるらしい」なんてニュースが流れていたが、

本日、JRAから公式に発表があった。

2022年度 競馬番組について (JRA)

この「重賞競走一覧」ってのに1着賞金が書かれていて、下線が引かれてるのが変更点。

現在の金額は2021年度のところを開けば記載されている。


目立つのはもともと世界トップクラスの高額賞金レースだったジャパンカップ・有馬記念がさらに増額するということではあるが、それ以外も大概である。

  • 天皇賞(秋)・天皇賞(春)・宝塚記念 : 1億5000万円→2億円
  • 大阪杯 : 1億3500万円→2億円
  • 安田記念・マイルチャンピオンシップ : 1億3000万円→1億8000万円
  • 高松宮記念・スプリンターズステークス : 1億3000万円→1億7000万円
  • エリザベス女王杯・ヴィクトリアマイル: 1億500万円→1億3000万円
  • チャンピオンズカップ・フェブラリーステークス : 1億円→1億2000万円
  • 菊花賞 : 1億2000万円→1億5000万円
  • 皐月賞 : 1億1000万円→1億5000万円
  • オークス : 1億1000万円→1億4000万円
  • 桜花賞・NHKマイルカップ : 1億500万円→1億3000万円

ハイレベルな天皇賞(秋)は賞金上がるんだろうし、それなら天皇賞(春)も宝塚記念も上がるだろうなというのはなんとなく想像できたが、大阪杯まで一気に2億円である。

マイル以下のチャンピオン決定戦も2億円近くと言える水準までき上げられた。

そうしてみてみるとダートG1は上がったって言っても1.2億円かよという感じはあるが。

3歳のG1もすでに2億円のダービー以外は全て増額される。菊花賞・皐月賞は微妙に軽視されがちなのも意識したのかね。


この賞金引き上げの背景には近年馬券売上が堅調であること、そしてこんな意図があるのではと。

古馬の芝中長距離路線の大レース、有馬記念とジャパンCの1着本賞金が3億円から一気に1億円増の4億円になる。(略)両レースの増額は、年末に行われる香港国際競走への日本馬の流出を抑える狙いがあるとみられる。

(来年度はジャパンC&有馬記念の1着賞金が4億円に (Yahoo!ニュース))

年末の香港国際競走というと、日本から大挙して遠征するのが恒例だが、

香港スプリント・香港マイルは同時期に距離の近い国内G1はなく、マイル以下では香港の地元馬は強いのでチャレンジでもある。

ジャパンカップ・有馬記念と距離が近い香港ヴァーズだが、ここは日本から一流馬が挑戦することは少ない。

もともと日本で2000m超の長距離と得意とする馬なら、国内を選ぶことが多いためである。

悩ましいのが2000m戦の香港カップで、ここは確かに同時期に日本国内に2000mのG1はない。

また、香港は2000m以上となると地元馬の成績は見劣りするので、チャンスも多い。

一方、このあたりの距離で成績を残せる馬ならば、ジャパンカップ・有馬記念も選択肢には入る。

日本の一流馬の流出が抑えられるとすればここだが、それでも2000mにこだわって香港にいく馬は減らなさそうだが。


一方で影響が大きそうなのが、大阪杯の賞金増額で、これは香港のクイーンエリザベス2世カップ、ドバイのドバイターフ・ドバイシーマクラシックと時期・距離が近い。

特にクイーンエリザベス2世カップですよね。

香港の2000m戦は日本馬にとってチャンスが多く、1着賞金1425万HK$(2.1億円)と高額である。

これが大阪杯の賞金増額で大阪杯を選ぶ馬が増える? というのは考えられるがどうかね。

ドバイについては、ドバイターフは1800m、ドバイシーマクラシックは2400mと距離が違うのでなんとも言えませんし、

あと、両レースの1着賞金は来年は360万US$(4.1億円)の予定なので、大阪杯の賞金が増額されたところでやっぱり高額である。


あと海外遠征との兼ね合いがあるのがダートのフェブラリーステークスですが……

これは今年からG1になるサウジカップと時期・距離が近く、これは1着賞金1000万US$と世界一の高額賞金レースで、掲示板入りでもすれば、もうそれだけでフェブラリーステークス1着より稼げるという。

元々フェブラリーステークスはGI格付けの維持がやや厳しいという話があった。

最近の日本馬の海外ダート重賞での成績を見ると、有力馬が海外の高額賞金レースを選ぶのは避けがたい流れのように思う。

それでも日本に残るダート競馬の強豪をJRA所属・地方所属問わず集めてなんとか……なるのかなぁ。

あのダートなのに芝スタートの奇妙なコースを走りたいと思いますかね?


あとはなにより馬主にとってのモチベーションですよね。

ジャパンカップ・有馬記念が超高額賞金だっていっても、馬によって得意な距離はいろいろ。

今回、マイル以下のG1の賞金も全般的に上がったので、 より力が入るのではないか。

あとはダートですか。でも地方競馬も馬券売上好調につき重賞の賞金ガンガン上げてるよね。

上を見るとまだまだという感じはあるけど、賞金の底上げが進めば、いずれ上がるでしょう。


ところで、ここでJRAから流出を恐れられている(?)香港国際競走ですが、

最近は日本以外からの遠征馬が充実しないということを悩んでいるそうである。

理由は単純。香港馬と日本馬が強過ぎるからだ。香港国際競走では芝2400メートルのヴァーズは勝てるが、他の3レースはノーチャンスというのが彼らの認識であるらしい。

(日本勢の4連勝も夢じゃない香港国際競走 (デイリー))

香港は2016年から国際セリ名簿基準委員会のパートI国に位置づけられ、競馬先進国の仲間入りをした。

これは香港競馬のレベルが世界的にも認められたことを表していると言ってよいだろう。

特色としては、マイル以下に強く、2000m以上については手薄である。

日本はここまで書いた通り、香港ヴァーズ以外の3レースは同時期に同距離の国内G1がない。

地理的にも近いことから日本からは2000m以下の各距離のチャンピオンがこぞって遠征する。

このことから香港馬・日本馬ともに手薄な2400m戦の香港ヴァーズ以外はチャンスに乏しいとなるわけだ。

まだ年末の香港国際競走はいいけど、春の香港チャンピオンズデーの3レースなんて、

国際招待競走なのにクイーンエリザベス2世カップに日本馬が遠征する以外は寂しいもんである。

今年はチェアマンズスプリントに日本からダノンスマッシュが唯一の外国馬として挑戦しましたがね。


正直なところ、日本競馬のレース体系がこれでよいのか? と思うところは多少ある。

フェブラリーステークスは賞金上げてもレベルアップは見込みがたい気はする。

この辺は抜本的に手を入れないとどうしょうもないと思うんですけどね。

とはいえ、梅雨時を嫌ってメンバーが揃わない宝塚記念とか、伝統の3200m戦なのに余裕で格上挑戦できる天皇賞(春)あたりは賞金引き上げの効果はありそうだし、

1200m・1600m・2000mの距離別チャンピオン決定戦の賞金が上がるのもポジティブでしょう。