なくなる駅でも重複したくなかった?

北陸新幹線の金沢~敦賀で唯一の新幹線単独の新駅が 越前たけふ駅 に決まったらしい。

「北陸新幹線(金沢~敦賀間)」新駅の駅名について (JR西日本)

当初の仮称は南越駅、ただ周辺地域からはあまり納得感のない駅名だったらしく、

越前市の提案した候補でも真っ先に外されてたぐらいである。

(まぁ工事段階の仮称なんてそんなもんだよねと)

その提案された駅名の1つが「越前たけふ」だったのだが、さてなぜこんな駅名になったのだろう。


やはり大きな理由としてあったのは、立地するのが越前市であったことである。

越前市は2005年に武生市・今立町の合併でできた市である。越前国の国府があったことにちなむ市名らしい。

ただ、そもそも越前というのが福井県の敦賀市より北側を示す広域地名なので、そのまま採用するのははばかられる。

そんなことで越前に何かをつけた名前をいくつか提案していたようである。

北陸新幹線新駅駅名候補選定委員会 (越前市)

越前たけふ というのは 市名+地域名 という発想だが、なぜ武生がひらがなになったのだろう?


実は越前武生駅はすでに福井鉄道の駅として存在している。

かつては武生新駅(駅名標には「武生新」と書かれていた)だったが、越前市ができるにあたって改名したそう。

変な駅名だという思いはあったんだろう。(同時に福井新駅も赤十字前駅に改名されている)

位置としてはJR武生駅のやや北側にある。中途半端に離れているが乗換駅の範疇である。

駅名が重複するにもかかわらず越前市は「越前武生」を提案していたのだが、

こちらを何らか別の駅名に改名する覚悟はあったんだろうと思う。


ただ、結果としてはJRは越前武生駅を採用せずに越前たけふ駅を採用した。

音が同じなので、さすがに福井鉄道の越前武生駅がそのままの名前で存続するのは難しいという話はあるので、

改名に向けて動く可能性はあるが、福井鉄道にとっては新幹線は関係ないので、改名するにしても越前市の費用負担とかになるのかなぁ。

福井鉄道も越前市の費用負担があれば改名自体は問題ないということを越前市の選定委員会でも述べていたようだ。


どうせ改名するなら越前武生駅でもよかったんじゃないか? という話はある。

ただ、どうもJR西日本は過去にあった駅名をそのまま採用することは避けているようである。

というのが最近の新駅の命名から見えるんですよね。

一番言われたのは広島市を走る可部線で過去に廃線になった一部区間を復活させたときに、

新しい終着駅となった「あき亀山駅」のことである。

実はもともと同地区には安芸亀山駅という駅があって廃線時になくなったのだが、同位置に復活したわけではない。というか場所はだいぶ違う。

このことから、命名趣旨は同じ(亀山駅は三重県に存在しているので重複を回避する必要がある)で違う駅名ということで、

広域地名の「安芸」をひらがなで表記することにしたようだ。まぁダサいとは言われたが。


もう1つが、嵯峨野線の新駅、梅小路公園へのアクセス駅として新設されて、仮称は七条駅だった。

この駅は「梅小路京都西駅」となった。JRと京都市が共同で発表しており、地域と円満に決定されたことがうかがえる。

しかし、この駅名を見て、なんで梅小路駅ではいかんかったのだと。というか「京都西」とはなんだと。

というのも、梅小路駅というのは、もともと当地に貨物駅として存在していたのだが、この時点では京都貨物駅に改名されていた。

それなら梅小路駅と命名しても困らないんじゃないかという話である。伝統ある駅名が復活するのはよいことじゃないかと。

このことについて、梅小路駅が過去に存在していたということが梅小路駅にならなかった理由ではないかという指摘があった。


というわけで、以上のことからすると、JRは越前武生駅が改名されて別の名前になるとしても、

越前武生駅という名前をそのまま使いたくはなく、その結果として越前たけふ駅になったんだろうということである。

これは地域の要望も踏まえた命名ではあり、市名の越前を取り入れることを優先したということである。

JR西日本の新駅では、先ほど出てきた あき亀山駅 以外に、はりま勝原駅・ひめじ別所駅など、地名をひらがなにした駅があるが、

いずれも広域の方の地名をひらがな表記しているところ、狭い方をひらがな表記にしているという点では独特である。

命名の経緯が違うのでなんとも言えないのですけどね。


この駅が当地でなんと呼ばれるようになるのかというのは気になるところで、

越前武生駅は改名したとしても、武生駅は今後も北陸本線(福井県が設立した会社に移管予定)の駅として存続するだろう。

北陸新幹線の新駅では、黒部市に設けられた 黒部宇奈月温泉駅、これも新幹線単独駅で地域の要望を踏まえて命名されたものだが、

この駅は富山地方鉄道が接続駅を新設しており、この駅は「新黒部駅」と命名された。

これはもともと新幹線の新駅の仮称だったのだが、新幹線の駅名に合わせなかったのは、

同社にとっては宇奈月温泉の最寄り駅は終点の宇奈月温泉駅だから混乱するという理由である。

この経緯は端から見れば奇怪な話だが、宇奈月温泉の人々は新幹線の駅名の一部に温泉の名前が入ったことは喜んだらしいのでいいんだろう。

(実際、自動車で移動することを考えれば、黒部宇奈月温泉駅は宇奈月温泉には十分近い)


JR西日本の駅名の命名はいろいろ言われることは多いが、結果的には定着しているんじゃないか

1994年に湊町駅がOCAT開業にあわせて「JR難波駅」と改名されたのは、

日本初のアルファベットを含んだ駅名であり、またJR自身が「JR」と駅名を付けた初めての例だった。

当初はいろいろ言われたらしい、四つ橋線なんば駅とはごく近く、またOCATは難波地区の高速バスターミナルとして定着し、

各社呼び名がバラバラということはさておき「JRなんば駅(OCAT)」の表記を採用する会社も多く、確かにわかりやすいなと思う。

この後も他社との重複が問題となるようなところでは「JR」を付けた駅名がいくつも採用されている。

この方法で駅名の重複を回避出来ると、シンプルに JR+地域名 の命名ができるというメリットがある。


というわけで、けっこうな奇策だとは思うが根拠はあるんだなと思った。

なお、北陸新幹線の同区間では 小松・加賀温泉・芦原温泉・福井 は既存駅に併設される。

わりと既存駅への併設が多いんですよね。新幹線が使いやすくなるという点でよいと思う。

新幹線開通後は京都・大阪あるいは米原・名古屋方面へは敦賀駅での乗換がメインとなる見込みである。

また、福井県内から東回りで東京へ行く人が多くなるはず。(現在は米原経由が主流なので大きく変わる)

福井県はしらさぎ号の福井までの運行を要望しているし、これは一理あるんじゃないかと思うところはあるが、本数は多くならないだろう。

敦賀での乗換がどうかなぁという感じはあるけど、特急の乗り換えは楽になるように工夫されるらしい。

逆に言うと特急だけですね。新幹線の敦賀駅が在来線からかなり離れてしまうのは確からしいので。