韓国の新型コロナウイルス接種について、1回接種率で見るとそこそこ高いが、
1回接種率と2回接種率の乖離が大きすぎるということが書かれていて、
直近のデータを見ると、人口に対する1回接種率は48%で、日本の54%とそこまで差は大きくないのだが、
2回接種率で見ると、韓国は22%で、日本は41%なので、なんと倍ぐらい違うという。
ちなみにこれは人口に対する接種率なので、接種対象外の子供なども分母に入っている。
イギリスの1回接種率が70%と出ているが、これで対象者の9割以上は打ってる状態ですね。
日本の1回接種率54%というのは、もう7割方回ったと解していいんじゃないか。
「韓国だけの異常現象」なんて書き方もされていたが、本当に異常なのだろうか?
Coronavirus (COVID-19) Vaccinations (Our World in Data)
ここから巨大CSVをダウンロードして、2回接種率と1回接種率の差を時系列で計算した。
それで直近の総接種回数が3000万回を超えた地域を抽出した。
- 北アメリカ : アメリカ・メキシコ・カナダ
- 南アメリカ : ブラジル・アルゼンチン・コロンビア
- ヨーロッパ : イギリス・ドイツ・フランス・スペイン・ロシア・ポーランド
- アジア : 日本・インドネシア・トルコ・韓国・インド・インドネシア・パキスタン
中国も3000万回はゆうに超えてるのだがデータが欠損しているので集計しなかった。
過去にさかのぼってみてみると、1回目接種率と2回目接種率の乖離が高かった地域はいろいろあって、
カナダは一時54ポイントもの乖離があったという。(今年6月上旬に1回接種率62%、2回接種率8%)
直近では1回接種率73%、2回接種率65%ということで、世界でも屈指の普及率ですね。
イギリスも40ポイントの乖離があった時期はあるし、ドイツとイタリアも26ポイントの乖離があったという。
一方で一貫して乖離が小さいのが日本とアメリカである。
日本は最大13ポイント、アメリカは最大15ポイントの乖離でここまで来ている。
両国に共通するのはワクチン接種の大半がファイザーとモデルナのmRNAワクチンが使われたということ。
2回目接種は1回目接種から3~4週間経過後できるだけ早くということになっている。
ちょっと前に紹介しましたが、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンは接種間隔8~12週間が最適だという。
イギリスはこれをよりどころにして接種間隔を12週間にしていたが、現在は短縮して8週間という。
もっともカナダはファイザー製ワクチンの割合が高いし、イギリスも主流はアストラゼネカ製とはいえファイザー製も少なくはない。
にも関わらずアメリカと大きな差が出るのは、添付文書の指示をやや逸脱して2回目接種を遅らせていたためである。
日本ではご存じの通り、1回目接種と2回目接種の間というのはほとんど厳密に3~4週間になっている。
接種会場やワクチン供給の都合で多少遅れるケースはあったかもしれないが、
ワクチン供給が想定より少ない場合は、1回目接種の予約をキャンセルする方を優先して、
それでもどうしても2回目接種が足りなければ延期されたケースはあるというが、できるだけ間隔を開けないようにしている。
あと1回目と2回目のワクチンは同じメーカーにすることも徹底されている。
予防接種は健康な人に適用するもので、それがゆえに健康被害救済制度もあるわけですけど、
それだけに添付文書からの逸脱はしないように厳しく考えているということだろうと思う。
さて、カナダが一時54ポイントもの乖離があったと書いたが、現在はこの差は大きく縮まっている。
一方で、さっき挙げた国で直近の1回接種率と2回接種率の乖離が大きいのは下記のようなところである。
- アルゼンチン : 36ポイント(1回:60%, 2回:24%)
- ブラジル : 34ポイント(1回:59%, 2回:25%)
- 韓国 : 27ポイント(1回:48%, 2回:22%)
- インド : 23ポイント (1回:32%, 2回:9%)
- メキシコ : 20ポイント (1回:43%, 2回:23%)
アルゼンチンもブラジルも1回接種率だけ見ればアメリカ並みに高いんですよね。でも2回接種率が低すぎる。
調べたところ、ブラジルのサンパウロ州では全対象者の1回目接種を8月20日までに完了させるという目標があったようで、
このため2回目接種は先送りにするという決断をしたと見られる。そう言われればなるほどという数字だ。
《ブラジル》コロナ死者、感染者の減少続く=ワクチン接種の効果顕著に=サンパウロ州が青少年向け日程発表 (Yahoo!ニュース)
もちろん2回接種で免疫が完成するという認識はあり、60歳以上の2回目接種は着実に進めているという。
韓国はどうしてこうなっているのかというと、実のところ行き当たりばったりという面が大きいようだ。
7月にはアストラゼネカ製ワクチンの2回目接種分が不足する事態が起きたという。
ただ、それはおそらく解消していて、今の問題はmRNAワクチンの供給不足のようだ。
韓国ではアストラゼネカ製とヤンセンファーマ製のウイルスベクターワクチンに期待するところが大きかったのだが、
血栓症の懸念から接種対象者を50代以上に絞り込んだため、残る接種対象者は限られる。
特にヤンセンファーマ製のワクチンは1回接種で完了し(なので、統計上は1回接種で接種2回、2回接種完にカウントされている)、
アメリカでだぶついているので、韓国としてもかなり期待していたらしいのだがそうもいかなくなった。
そこでファイザーとモデルナのmRNAワクチンの確保に努めているのだが、十分な量を確保するに至っていない。
それでも1回目接種のスケジュールを優先したため、1回接種と2回接種の乖離が大きくなったのだという。
ここの考え方が日本とは逆だったんですね。そしてその乖離はずっと続いているわけである。
このことを「下石上台」(下の石を抜いて上に石を積み上げる、すなわちその場しのぎ)なんて書いてあったが。
先に1回接種率を高めてから、後で2回目接種を行うという作戦でやっていたならまだよいのだが、
韓国はもともとそういうつもりはなく、場当たり的に2回目を延期してしまったので、
この結果、1回目と2回目で異なるワクチンを接種する「交差接種」がしばしば発生しているようで、
アストラゼネカ製ワクチンが不足した時期は、2回目がファイザー製になることがあったというし、
今はファイザー製・モデルナ製ワクチンが不足しており、2回目接種の延期が続いているという。
1回目接種できても全然安心じゃないというのが韓国の実情らしい。
日本では1回目と2回目のワクチンを合わせるようにとかいろいろ厳しく言って、
2回目接種を確実にするために、1回目接種のキャンセルをやりまくったこともあるし、
外国でアストラゼネカ製ワクチンを1回だけ打った人は、2回目もアストラゼネカ製ワクチンにしなさいというほどである。
(1回目接種がシノファームなどの未承認ワクチンの場合は、医師と相談してファイザー製ワクチンの接種可否を検討するようだ)
そういう状況からして見れば、韓国のワクチン接種はずいぶんいい加減なものと思う。
ただ、日本ほど添付文書からの逸脱を許さないのも、それはそれで世界的には稀な方なんだろうかなと思う。
どっちがよいという話でもなく、イギリスのように明確な意図を持って2回目接種を先延ばししたり、
タイのように、先行して導入した不活化ワクチンの効力が不十分ということで、
1回目不活化ワクチン、2回目ウイルスベクターワクチンというような交差接種を選択したりというのはある。
これによる不利益も想定されるわけですけど、それ以上の利益があるという行政の判断でやっていることである。