現金を辞めるのは辞めたいの?

各種のキャッシュレス決済は、多かれ少なかれ手数料がかかってしまう。

とはいえ、現金もレジ締めや入金などに相当なコストがかかっている。

かといって、現金決済が残る以上は、これらの労力がなくなることはない。

それなら、現金取扱を廃して、全部キャッシュレス化した店ならどうか。

そんな実験をしている喫茶店チェーン「プロント」のことがニュースに取り上げられていた。

消費増税でも推進、キャッシュレス化の先に新たな支配者 (朝日新聞デジタル)


有料記事だから読めねぇよという話はあろうかと思うが、衝撃的だったのがここ。

一般的にキャッシュレス決済は、代金の約3~5%の手数料を決済事業者に支払わねばならない。せっかく削った人件費も、新たな手数料負担で相殺されてしまうという。

実は、現金決済をなくしたことでの省人化効果は明確に出ていたそうで、

ピーク時の店員も減らせたということだから、決済スピードの面でもメリットは出ているようだ。

それでも、現金決済割合が減ったことによる、手数料負担増に打ち消されてしまうという。

打ち消されるだけならよいけど、現金取扱を廃したことで門前払いになってしまう客もいる。

そこを考えると、さっぱりメリットがなさそうなので、やめることも考えているとか。


喫茶店っていうと決済単価は500円ぐらいかな。ちょっと安く見積もりすぎか。

仮に500円として、この3%の手数料を取られるということは15円ぐらい。

1決済15円ってどうだろう? それぐらいはかかっても不思議じゃないよね。

銀行振込の手数料なんて数百円ですからね。

一般的な銀行振込に比べれば、低コストにできるようになっているとはいえ、数十円ぐらいはかかっても不思議ではない。


でも、ここで忘れられてるものがあって、それが銀行の現金取扱コスト。

基本的に銀行は自行・時間内のATMの入出金手数料を取らない。

窓口での入出金も紙幣だったら手数料はかからない。硬貨は手数料取るところが多くなったけど。

客にとっても店にとっても、全く負担なしということはないけど、圧倒的に銀行にとっての負担が重い。

最近では銀行も儲からないということで、これらのコストを利用者に負担してもらおうという話もあるが、

どういう方法がよいのか、銀行にとってもなかなか定まっていないようだ。


銀行にとってATMの負担が重いというのは、コンビニATMの手数料負担が重いということで話題となったが、

かといって自行ATMを維持するのもお金がかかるので、複数の銀行で共同利用するかとか、あまりよい話は聞かない。

じゃあ応分のATM手数料を払ってもらえばよいじゃないかといっても、

やはり銀行に現金を預けられる、現金を引き出せるというのは、根本的な機能ですから、簡単には有料化できない。

いろいろ名目を付けて手数料を取っているけど、それは基本のサービスに対して付加価値があるという名目があるから。


銀行やクレジットカード会社にとってみれば、決済手数料でもきっちり稼がないと商売にならんわけだよね。

銀行にとって預かったお金を転がして儲かる時代ではないし、クレジットカード会社も貸金業で儲けられる時代でもない。

そうなると決済手数料でガッツリ稼がないと、何もできなくなってしまう。

それ自体は応分負担かもしれないけど、客や店にとって現金決済のコストが安すぎるのか、高く見えてしまうということだろう。

銀行が現金取扱に要しているコストを合計すれば、割安だとは思うのだが。


銀行につながる決済手段でなければキャッシュレスにはならないだろう。

一番怖いのは、銀行にとって儲からない客がことごとく排除されてしまったときだよね。

そうなったとき、最後のセーフティネットとして残るのは現金だろうと。

銀行から排除された客は現金しか使えず、銀行から排除された店は現金しか受け取れない。

今は儲からないと思っている客だって、銀行にとっては重要な顧客基盤かもしれないし、現実的ではないかなとも思うし、

なにより、ゆうちょ銀行がある限りはそんなことは起きないんじゃないかという見方はありますがね。


そんなことを書いていたら、こんな記事が目に入った。

銀行のキャッシュレス手数料は割高? 公取委が調査着手 (Yahoo!ニュース)

銀行口座からプリペイド支払い手段に入金するときの手数料が高くて、不当に競争を阻害しているということはないか?

そんな懸念について、公正取引委員会が調査に入ったということらしい。

やはり銀行が出入口を握っている以上、ここの手数料が高いと何をやっても高止まりしてしまう。


決済手数料が下がれば、キャッシュレス決済のメリットを多く享受できるようになり、普及は進むだろうし、

逆に現金決済のコストが上がれば、その費用を抑えるためにキャッシュレス決済の促進に進むかもしれない。

決済手数料が下がる方向はよいが、逆に手数料が上がる方向で、やり方をしくじると、

現金が見放されるのではなく、銀行が見放され、キャッシュレスとは逆の現金社会になってしまう可能性すらある。

今の日本で、銀行が取る手数料が下がるわけはないので、さてどうしようかということである。