先週末、近畿地方では台風による大雨で、川が増水して大変だったわけだが、
そんな中で少しでも被害を防ごうともがいてたのがダムである。
淀川水系のダムの多くは水資源機構が管理していて、台風のときは防災操作の速報が掲載される。
ダムの計画というのは、百年に一度とかそういうレベルの大雨を想定して作られている。
実際の大雨が想定より上だと、ダムは洪水を防ぎきれないことになる。
こういう場合は仕方ないのでダムは流入量と流出量を同じにする。これを、ただし書き操作というそうだ。
下流にはダムがないときと同じだけの被害が出るが、一方でダムが満杯になるまで時間稼ぎはできるので、
その間に避難するなどの対策は取れるから、ダムが全く無意味というわけでもない。
逆にダムの計画を下回る洪水だと、普通にダムで受け止められるわけだが、
状況によってはそれでも洪水被害が発生することがある。
下流の流下能力が低かったり、他の河川からの流入が多いとか、そういうところが要因ではないだろうか。
このような場合、計画以上にダムの流出量をしぼることが行われることがある。
通常の防災操作より絞るということで 特別防災操作 というそうだ。
※特別防災操作とは、下流河道の整備状況を勘案し、中小規模の洪水を対象に、操作後の貯水容量に余裕があると判断した場合には、ダムの洪水調節容量をより効果的に・効率的に活用し、貯留量を増やして放流量を低減させることで下流の被害を軽減すると操作のことです。
具体的にはどういうことか。桂川の日吉ダムの例を見てみる。
日吉ダム台風21号に伴う洪水に対し防災操作を実施~桂川の河川水位を低減~ (pdf) (水資源機構)
桂川では水位が上がり危険な状態だった。
そのため日吉ダムでは本来150m3/s流すべきところ、最小で15m3/sまで絞る特別防災操作を行った。
とんでもない絞り方だが、ダムで制御できない他の河川からの流入を考慮すると、これぐらいやる必要があると判断したのだろう。
この結果として、桂川では大きな被害を出さずに済んだのだった。
しかし、特別防災操作というのはリスクのある行為でもある。
というのも絞りすぎて、本来は百年に一度とかの洪水に耐えるはずのダムが満杯になってしまったでは本末転倒だからだ。
一方で通常の防災操作では防げない洪水というのもあり、可能な限り救ってあげたいという考えもある。
なので、今後の雨の予想から、どうすれば救えるのか、どこまでならダムが耐えられるかというのを考えてるんですね。
上流に複数のダムがある場合は、それぞれで流すタイミングをずらしたり、余裕のあるダムに絞ってもらったり、そういうこともやる。
淀川水系のダムの防災操作を見ると非常に頭を悩ませながらやった跡が見えることが多い。
淀川水系は琵琶湖やダムが多数あることもあって、渇水というところで悩むことは少ない気がする。
開発しやすい河川だったということか、流域外への水道供給も多く行っている。
ダムは多目的ダムとして洪水調整の役目も持っており、このような形で活躍している。
逆に開発の余地が少なくて、渇水にも洪水にも悩まされるのが大和川水系なのかな。
渇水対策は吉野川(紀の川)や木津川を開発することでなんとかしたが、洪水対策はどうしょうもないよね。
荒川・利根川水系も関東平野が平べったいからこういう問題あるんだよね。なかなか厳しい。