6000人収容の会議室の正体

夢洲での国際博覧会が開幕したのと、時をほぼ同じくして隣接地でのIR(統合リゾート)の工事が始まるという。

万博関係の工事を邪魔しないようにIRの工事は遅らせていたということで、

万博と入れ替わりにIRの工事がスタート、2030年開業に向けて動き出すこととなる。


そんなIRなのだが、ちょっと気になる記述があった。

IR、法令上の用語で言えば「特定複合観光施設」というが、

この認定の条件としては、会議場と展示場の規模が重要である。

大阪・夢洲でのIRは会議場の最大会議室が6000人、展示場が2万m2

という会議場と展示場が中ぐらいのパターンで認定を受けている。

これは概ねパシフィコ横浜と同程度の規模ですね。

会議場と展示場は隣接しており、おそらく展示会のセミナーや商談にも会議場の会議室が使用されるのではないか。


気になったのは会議場の最大会議室についての記述である。

大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画 (大阪府)

ここにある計画で会議室についてこのように書かれている。

主要なボールルームは平土間タイプとし、可動間仕切りの導入並びに照明・空調設備、天井吊物機構等の充実によって、フレキシブルなレイアウトが可能で、多彩なイベントや複数イベントの同時開催に対応できる仕様とする。

平土間タイプ、すなわち平面なんですね。

最大会議室は収容人数6821人とは書かれているが、その数の座席が常設されているわけではなく、

平面にそれだけの数の椅子を並べることが出来るという意味である。

てっきりパシフィコ横浜の国立大ホールのような劇場タイプだと思っていたのだがそうではないと。


他のIRでもこういう形式は一般的とのことで、シンガポールのMarina Bay Sandsを調べてみると……

ボールルーム & ミーティングルーム (マリーナベイサンズ)

これの「サンズボールルーム」ってやつが最大会議室ですが、

ホテルの宴会場みたいなところだなというのがまず見た感想ですね。

実際、このような形式にすることでパーティーに使えるというメリットもある。

夢洲のIRの最大会議室はレセプション形式ならば、立席4629人、着席3503人と、

そんなに入るパーティー会場は魅力的かもしれない。

あとは分割して利用することも可能なので、実際にはそのような使い方も多いかもしれない。


とはいえ、思ってたのとは違うなぁという感じはする。

確かにこういう施設は日本に他にないので唯一無二ではある。

もっともただただ平面という話ならば展示場でもよいといえばよい。

大阪でもG20はインテックス大阪(6号館)にいろいろ仮設してやったわけだし。

付帯施設などが充実しているのですぐに会議に使えるというのはあるだろうけど。


ところでIRにはこれ以外に2つの劇場が計画に入っている。

魅力増進施設の「ガーデンシアター」と来訪及び滞在寄与施設の「夢洲シアター」である。

IRの構成要素といえば、会議場・展示場・ホテルだと思っていたのだが、

それ以外に魅力増進施設と送客施設というのもなければならない。

これらが揃うことでカジノ設置を認められるということになる。

送客施設は「関西ツーリズムセンター」のような観光案内施設でよいが、

魅力増進施設というのは何かというと法律の記述ではこうなっている。

我が国の伝統、文化、芸術等を生かした公演その他の活動を行うことにより、我が国の観光の魅力の増進に資する施設であって、政令で定めるもの

具体的には劇場・博物館・美術館・レストランなどとなっている。

「ジャパン・フードパビリオン」というレストラン街はこの要件を満たす。

「関西アート&カルチャーミュージアム」という美術館も設けられる。

「ガーデンシアター」については劇場ということで使い道はいろいろあるが、

伝統芸能を身近に体験できるプログラムの開催や、伝統的な太鼓芸能集団と世界的に人気を博すパフォーマーによるコラボレーション・ショー等の公演を企画する。

という記述もあり、伝統芸能に触れる用途で多く使いたいよう。

規模としては400人程度、演劇などでも多目的に使われそうですね。


もう一方の夢洲シアターは来訪及び滞在寄与施設に分類される。

このグループはIRに付帯して任意で設置してもよいという施設である。

これは3500人ぐらい入る劇場ということで、大阪では最大規模になりそう。

現状はグランキューブ大阪、オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)、フェスティバルホールがそれぞれ2000人程度、

これに対して3500人だと飛び抜けて大きいこととなる。

夢洲シアターがなぜ魅力増進施設になっていないのかはよくわからないが、

世界的なアーティストによるコンサートや映画・音楽の授賞式に加えて、グローバルなコンテンツ展開を行うエンターテイメント企業、世界で活躍するクリエイティブなアーティスト・パフォーマー等とのコラボレーションにより、新しいエンターテイメントを世界に向けて発信する。

ということで必ずしも「我が国の伝統、文化、芸術」に関わらないので外したのかもしれない。


ということで夢洲には6000人入る劇場形の会議室ができることはないが、

3500人入る劇場はできるとのことで活用が期待される。

そういうことだったんですね。