先週末に少し話題になっていたのだけど。
法務局の地図データをネットで無料公開へ…不動産取引で使用、これまでは有償 (読売新聞)
というわけで試しにダウンロードしてみたのだが、なかなかの内容だった。
市町村別のデータがZIPで提供されている。中には地図XMLというのが入ってるらしい。
だから地図が読めるといっても画面ですぐ表示できるわけではないと。
まず、この時点でなかなかにハードルが高い。
そのZIPファイルに大量のZIPファイルが圧縮されているのも問題である。
これじゃあ何が何かわからんだろと思ったが目次のCSVが入っている。
これを見ると町名・番地に対応するファイル名がわかる。
というわけでそのファイルに対応するZIPを展開してXMLを取り出す。
(ZIPに入ったZIPは7-Zipなら直接取り出せるのでファイルがわかれば簡単)
この地図XMLの表示が出来るソフトウェアを適当に探して試してみたが、
どうも表示が変なのでいろいろ調べて行くと、原因が判明した。
これは「地図」ではなく「地図に準ずる図面」なのである。
一般的に公図と言われる土地の境界を表す図面を法務局では「地図」と呼ぶ。
ところがこの地図というのはまだ存在する地域が限られている。
このため地図がない地域ではそれに代わる図面を使用している。
これは明治時代からの図面がベースになっているところもあるし、
区画整理のときに作ったものもあるし、精度はいろいろである。
そんな図面も全て座標を数値化して保存しているのだが……
「地図」と「地図に準ずる図面」の最大の違いは座標データである。
地図には座標データが入っている。公共座標系という形式なんだけど。
ともあれルールに従って計算すれば他の地図との対応関係がわかる。
ところが地図に準ずる図面には座標データが入っていないのである。
このことはXMLデータを見るとわかるのだが、
地図の場合は冒頭の座標系に「公共座標9系」など登録されている。
ところが地図に準ずる図面には「任意座標系」とある。
そもそもこの地図データ公開の背景には、
無人機(ドローン)などを使った農業や、自動車の自動運転、ロボット配送などに役立てることが想定されている
ということで、配送先を番地から特定できるようにすることが目的である。
このため土地の絶対的な位置がわかることが必須条件のはずだけど……
実際にはそのために使用できる「地図」の整備度が低いので、まだこの目的での利用は難しいとみられる。
地図であれば、XMLデータを配布されているツールでGeoJSONに変換して、
それでQGISというソフトで取り込んでやると他の地図と重ね合わせできる。
ZIPファイルの後ろの方に格納されているものは「地図」の可能性が高く、
そういうので試してみたが、確かによくできている。
市内は住居表示実施地区が多いので、地番を見ることはまずない。
いろいろな事情で細かく分割された土地が見受けられ、地番での生活は難しいことは容易に理解できる。
一方で「地図に準ずる図面」の場合はこういうツールではうまく表示できない。
よくわからないソフトなのだが、地図XML形式を読み込んで表示できる。
2D表示を選んで、JPGIS-XML ラベル表示で地番をラベルとして表示して、
道路っぽいものとか目標に探していけば目当ての土地にたどりつけるかも。
このデータベースが公開されると聞いて、調べたかったことが1つあって、
それがとある施設の所在地と地番の関係である。
というのも、この施設ができたときはものすごくキリのいい地番が所在地表示だったのだが、
その後、町名変更・住居表示実施で全く違う所在地表記に変わった。
でも住居表示なので地番は残っているはずだと。
残念ながら「地図に準ずる図面」なので正確な位置を特定するに至らず。
でも道路らしき土地との位置関係より、その施設の敷地の一部にその地番は存在するだろうということはわかった。
というわけで話に聞いていたことはおそらく正しかったとみられる。
こういうことを知るために法務局でお金をかけて地図を取って、
「地図に準ずる図面」ではわからんじゃないかと落胆し……
というのが一応タダでできたのはよかったのかなと。
期待してたのとは違ったけど、法務局で落胆するよりはよっぽど……