外国人も意外と自由に働けるが……

これ自体はどうかと思うが、こういうことは珍しくないのでは? と思った話。

吉野家 採用説明会で外国籍との判断を理由に大学生の参加断る (NHK)

採用説明会に参加申込みをしてきた人が、実際には日本人だが、外国人だと思って門前払いしたという内容である。

その背景としてはこういうことがあるそう。

過去に外国籍の学生に内定を出した際、就労ビザが取得できずに内定を取り消さざるをえないケースがあったためとしていて、外国籍とみられる学生に対しては、2021年の1月ごろから同様の対応を取っていたということです。

日本人だからそもそも関係なかったのだが。


外国人といっても在留資格はいろいろである。

就労を前提とした在留資格、原則就労できない在留資格、どちらもあり得る在留資格がある。

就職活動をする学校卒業(予定)者の在留資格というのはだいたいこんなところでは?

  1. 永住者・特別永住者
  2. 定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等
  3. 家族滞在
  4. 留学

1.については日本国内の活動に制限がなく、在留期間の定めもないため、日本人と区別する必要性はあまりない。

2.については在留期間が定められている(更新が必要)なこと以外は1.に準ずる。

いずれにせよ日本人と区別する必要性は薄い。

会社は在留カードを確認して届出を出すだけでよく、在留資格の変更すら不要である。

外国人と一口にいうけど、1.または2.に該当するケースはけっこう多い。

中長期在留者(特別永住者は含まない)の4割が1.または2.に該当するわけですから。


難しいのはここから。

3.については家族滞在の在留資格のままでは原則として就労はできない。

しかし、17歳までに日本に入国し、日本の高校を卒業して、就職先が決まっている場合は、定住者(日本の小学校を卒業している場合)または特定活動(それ以外)の在留資格が取得できるケースが多い。

「家族滞在」の在留資格をもって在留し、本邦で高等学校卒業後に本邦での就労を希望する方へ (出入国在留管理庁)

定住者であれば日本での活動に制限はなく、特定活動もほぼ制限無し(風俗営業関係での就労以外)となる。

なお、これは大学進学を機に在留資格を家族滞在→留学に変更したケースも含まれる。

家族滞在とそれに類似するケースは日本人と区別する必要性は薄いが、十分な確認が必要である。


問題が4.で、現状が留学で滞在している外国人が日本で就職するとすると、基本的には「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することになる。

このためには大学卒業レベルの知識を使い、専攻分野に直結する業務でなければならない。

「就労ビザが取得できずに内定を取り消さざるをえないケースがあった」というのは、ここが不十分であったためと考えられる。

このあたりは会社の業務内容にもよると思うのだけど、吉野家のような飲食業というのはどうしても厳しく見られるところなんじゃないかと思う。

最近では「本邦の大学・大学院で習得した知識及び高い日本語能力を活用した業務に従事する場合」に特定活動の在留資格が出るようになった。

従来は認められにくかったサービス業への就職の選択肢を増やすもので、吉野家においても活用が検討されてもよいと思うが、それなりの制限はあると思う。


このため応募者が外国人である場合は、適切な在留資格の取得が可能であるか、活動内容に制限がある場合は採用後の業務内容も考える必要がある。

このためには国籍・在留資格・滞在歴について知る必要があるが、正面から聞くのははばかられる事情もある。

公正な採用選考の基本 (厚生労働省)

採用選考で聞いてはいけない典型的事項として「本籍・出生地に関すること」「家族に関すること」ということがある。

もちろん外国人留学生を採用する場合に、在留資格の取得が可能であるかどうかは採用にとって重要なことではあるので、これを確認することには合理性はあると思う。

しかし、一般的には国籍・在留資格・滞在歴というのは聞くべきことではない。

このため、厚生労働省が推奨する応募用紙(履歴書)にはこれらを記載する欄は無い。

(以前は中学・高校卒業者には保護者名を記載する欄があったが、これも消えた)


こうなった会社がとりうる選択肢というのは実に限られるものである。

氏名・住所・学歴など履歴書に通常記載されるような内容から、就職可否を判断するということになる。

もっとも適切な在留資格で働けるかどうかは本人の責任でしょうけど。

在留資格の取得可否は、応募者から相談するべきことかもしれない。

ただ、適切な在留資格が取得できず内定取消となれば、会社の採用計画が狂うことに違いはない。

これは会社にとっても困った話であり、どうしても保守的な判断をしなければならないというのは理解できる面もある。


今回は日本人を外国人と誤解して、説明会への参加を断るというずさんな内容であったものの、

しかし選考の中で、このような判断が行われることは実は珍しくないのではないかとも思う。

露骨に門前払いしては角が立つが、採用可否の理由は通常示す必要はないので、こっそり外国人らしき人には厳しい基準を適用している可能性は否定できない。

実際には外国人といってもいろいろあって、在留資格や滞在歴によっては日本人と同じ自由な働き方ができるケースは本当に多いのである。

でも、そのことは履歴書に通常書くことではありませんから。

もしもそういうことを書かせたり、面接で聞けば、それこそ公正な採用選考にとって問題だと言われてしまう。


まず登録時に国籍・在留資格といった情報を記載してもらえば、

考慮不要な人は把握できるし、在留資格変更が必要な人に変更可否の確認のために質問をすることには合理性があると主張できる。

しかし、その範囲を超えて選考に使っては、不公正な採用選考となってしまう。

それぐらいは聞いてもいいんじゃないの? と思うんだけど、

過去に本籍地だとか出自に関わることが不公正な採用選考につながった事例があるのは確かで、なかなかこういうことは聞きにくいのである。


しかし、日本で暮らす外国人も増え、その背景も多様化している。

外国人といえば、特別永住者が相当割合を占めていたのは大昔の話でしょう。

外見的な情報から、国籍・在留資格・滞在歴を推し量ることは難しい。

適切に情報を取得することは、就職先の選択肢を増やし、生活の安定にもつながるのではないか?

このあたりのガイドラインは厚生労働省も出してくれていいと思うのだが。

うかつに聞くと不公正な採用選考ではないかと言われてしまいかねないので。


ちなみに中長期在留者で永住者の割合が多いことには、永住者の取得要件がだいたいこんな感じだからである。

  • 素行が善良であること
  • 独立した生計を営むことができる資産または技能を有していること
  • 引き続き10年以上日本に在留していること
  • 罰金・懲役刑を受けておらず、公的義務を履行していること
  • その在留資格の最長の在留期間で滞在していること

10年以上在留については5年間は就労可能な資格でないといけないとか、日本人や永住者との関係によって緩和条件があったりするのだが、

まぁおおざっぱにいえば、日本で職を得て真っ当に暮らしていれば、そのうち申請すれば永住者になれるということですね。

永住者になれば、転職の自由度が上がり、在留資格の更新手続きもなくなる。

配偶者や子も同時に永住者になるのが通常なので、これらの就職の自由度も上がることになる。

このようなメリットが大きいため、条件を満たせば永住者となる人は多いのだ。

このことが「外国人と一口にいうけど」と書いた理由なんですね。