市町村の知らぬところで予防接種

東京都の新型コロナウイルスの感染者数の報告が390人というのは、

正月休みのこともあるし、これぐらいはあっても不思議ではないと思ってたが、

沖縄県のこれはなかなか衝撃的な数字である。

沖縄県 新型コロナ 623人感染確認 600人超は去年8月28日以来 (NHK)

年末から報告数の多さは気になっていたから、流れからは予想できるものの、

しかしそれにしても多い。20代が半分以上あるんですね。


要因の1つとしてはアメリカ軍関係者の感染対策の不備があって、

沖縄に限らないけど、アメリカ軍関係者は基地に直接飛来することが普通で、

すると日本の入出国管理・検疫の対象とならないわけである。

本国アメリカではオミクロン株の影響もあって感染者数・死者数ともに報告数が増えている。

日本渡航にあたっての感染対策に相当な不備があることが先月判明しており、

基地内外の人の出入りはやはりあるわけで、そこが感染拡大に寄与していると。

同様のことは山口県の岩国市周辺でも言われている。

また、沖縄県は過去にも急速な感染拡大を何度も起こしており、

大人数で宴会をするような習慣がなかなか絶えないようである。

20代の感染者数が多いのも若者の宴会によるところが多いのではないかと。

ここで多くの家庭にばらまかれたことで、高齢者への感染拡大も現実的な懸念である。


そしてもう1つ言われていることなのだが、沖縄県はワクチンの普及率が低いという。

新型コロナワクチン接種について (沖縄県)

県全体で対象者の8割が接種とみると、そこまで悪くはなさそうだが年齢・地域で見ると気になる。

年代では20代で2回接種完66%、30代で70%とこの辺が他の地域に比べると低い。

地域では先島諸島などの離島で普及率が高く、9割以上に達すると事もある。

離島の医療体制の弱さから積極的な接種が進んだとみられる。

逆に普及率が低いのが、沖縄市・宜野湾市・北谷町(いずれも2回接種完が74%前後)をはじめとする沖縄本島中部である。

このあたりはアメリカ軍基地も多い地域ですからね。

まさに現在の感染拡大はこの特徴に一致するものであると言える。


しかし、ちょっと待てよと。

アメリカ軍は基地従業員に対してアメリカ軍の医師による予防接種を行っていたではないか。

これは後で書く理由により予防接種法の枠組みの外で行われたので、市町村は知らないはず。

確認したところ、これは正しくて市町村はアメリカ軍による接種を把握していない。

米軍基地でのワクチン接種 “システムに登録されず 改善を” (NHK)

全国で12000人、ただ全てが沖縄県ではなく、横須賀市でも3400人いるという。

とはいえ、沖縄県、特に本島中部ではそこそこ多いのではないか?


とはいえ県全体で見れば軽視できる数字なのはこれを見てもわかりますよね。

県全体の接種対象者が129万人、その1%にも満たない数字である。

市町村レベルではどうか? ということだが、結論から言えばそこまでの数字ではないとみられるが、若干影響はあるかもしれない。

沖縄の米軍及び自衛隊基地(統計資料集)令和3年3月 (沖縄県)

従業員数が多いのが嘉手納基地・キャンプ瑞慶覧(ずけらん)の2箇所で、

主な立地市町村は沖縄市・嘉手納町・北谷町・宜野湾市・北中城村である。

2つあわせて従業員数が5041人である。地域内には他の基地も多少あると思うが。

これらの地域の人口を合計するとおよそ30万人、

全接種対象者を人口の9割と見積もって、従業者の7割で3500人が接種を受けたとすると、アメリカ軍接種分を加えても1.3ポイント程度である。


予防接種法の枠組みによらず予防接種を受けた人は大きく下記にわけられる。

  • 治験で接種を受けた人 (厚生労働省の治験部署で証明書を発行)
  • 海外在留邦人等で日本帰国時に予防接種を受けた人 (外務省で証明書を発行)
  • アメリカ軍で予防接種を受けた人 (防衛省で証明書を発行)
  • 外国で予防接種を受けた人

海外在留邦人は接種時点では住民登録がないのが前提だが、その後に再転入すれば対象者なのに市町村は接種したと認識していないことに違いは無い。

しかし、防衛省が予防接種証明書を発行するというのは異例のことですよね。

外務省の接種証明書は外務大臣と厚生労働大臣の連名らしいが、

防衛省発行のものは防衛大臣の名前しか記載されていない。異様ですね。


それにしてもなぜアメリカ軍での接種は通常の職域接種と違うのか?

1つはアメリカ軍の医師は本来、日本で医業をできないということである。

予防接種は医療法で定められた病院・診療所で行うものである。

市町村・都道府県・国の集団接種会場も、職域接種会場も診療所の開設手続きを踏んでいる。

そのため、市町村はアメリカ軍の医療施設に予防接種を依頼できないのである。

もう1つは使用するワクチンには検定が必要と言うことである。

アメリカ軍が使ったワクチンは日本で承認されているmRNAワクチンではあるが、

アメリカで手配したものだろうから、日本の検定を受けていない。

検定を受けたワクチンを使わなければ補償制度の対象とならないのは日本におけるルールである。


こういうことはアメリカ軍に関係するところではしばしばみられる。

アメリカ国内のルールにおいて妥当であれば、必ずしも日本のルールには従わない。

基地内のレストランでは日本の消費税が課税されていないなんて話も聞いた。

確かに日本で医師として開業するということは、日本語で診療することが前提であり、それをアメリカ軍の医師に課すのは酷な話ではある。

アメリカ軍として基地内に早期にワクチン普及を進めたいという意向があって、従業員に接種を強制しないように申し入れをして、基地内のことだしと黙認したのが実情ですかね。

予防接種法の対象外となることは不利益もあるので、市町村での接種を選択できる余地は残したわけですね。


東京都でも福生市などにアメリカ軍基地があるため懸念はあるところである。

ただ、沖縄県内は特にマスクなしで出歩くアメリカ軍関係者が多いらしいですね。

基地と地域住民、それぞれに地域性があり、それが沖縄県では特に悪い方向に出たと。

沖縄県にしてもそうなのだが、アメリカ軍が情報公開に消極的という点が課題で、

基地内での感染報告も変異株スクリーニングの対象としたいと申し出たら断られたという話がある。

本来であれば、どこの医療機関で診察しても、新型コロナウイルスと診断すれば保健所に報告が入るわけである。

ところがアメリカ軍は保健所に報告しないわけですよね。

そのため別系統でなんとか情報が入手できないかと模索しているが、うまくいかないようである。


せめてワクチンの効果で重症化を防げればよいのですが、どうかね。

沖縄県も高齢者に限れば接種率は高く、そこまで悪くは無いと思う。

中間的な50代・40代が気になるところで、ここの接種率は全国平均より6ポイントぐらい低い。

たった6ポイントかと思うかも知れないが、未接種の人が全国平均で12%、沖縄県で18%というと、割合としては1.5倍ぐらい多いわけである。

本島中部に限ればもう少し悪いわけですから、どうかなというのは心配である。