新型コロナウイルスの検査方法いろいろ

最近、新型コロナウイルスの検査方法を調べることがあった。

このあたり、本来は医師の判断で、検査の要否、適切な検査方法が選択されるべきだが、

実際には医師があまり関与しない検査も行われている。

これはいろいろな事情があるのだが、おしなべて検査結果の正しい理解には課題があると言える。


健康保険の適用対象であるなど、公的機関が広く認める検査方式としては、

  • PCR検査(核酸検査) : 検体は 唾液・鼻咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液
  • 抗原定量検査 : 検体は 唾液・鼻咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液
  • 抗原定性検査: 検体は 鼻咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液

PCR検査というのはよく聞きますけど、それが唯一の方法ではないし、いずれも確定診断に適用できる。

特に抗原定量検査は、PCR検査と似たような用途で使用でき、かつ検査に要する時間が短い。

この特徴から厚生労働省検疫所が日本に入国する人に広く検査するのに利用していることが知られている。

やっと入国できるようになる

この方式が導入される以前は、再入国許可を得ている外国人すら多くを上陸拒否にする異常状態だったが、

その後に段階的に外国人の入国対象が広げられ、また諸外国での感染拡大を受けて狭められたりはしたけど、

運用方法の工夫により、現在も水際対策の主要な手段として活用されているところである。


ところで新型コロナウイルスのインフルエンザなどと比較して厄介なところとして、

発症2日前から感染性のあるウイルスを排出することがある。潜伏期間もインフルエンザに比べるとやや長い。

無症状・ごく軽症のまま推移することも多く、かぜの症状がある人はむやみに外に出るなという対策では限度がある。

そこで症状の有無によらずマスクの着用が求められたりしているわけですね。

一方で、周囲にウイルスをまき散らす可能性のある人を除去するという点では非常に難しいわけですね。

そこで日本を含め、各国は入国者に出発前の検査を求めたり、入国前後の検査を行っているわけですが、

そもそも難しい要求なので、過信するとすり抜けが起きるわけですね。


一方で、インフルエンザの検査に比べて好都合なところもあって、それが検体として唾液が使える検査が多いことですね。

当初、鼻に長い綿棒を突っ込んで 鼻咽頭ぬぐい液 を採取していたが、くしゃみされたのを吸うと感染リスクがあるので、

むやみに検査をするのも危険ということで、これが大きな問題になってたわけですね。

ところが後にPCR検査と抗原定量検査では、唾液での検査も鼻咽頭ぬぐい液の検査もほぼ同等の結果ということが判明したと。

一見するとへんな感じがするのだが、口の細胞にも感染し、これが感染を広げる原因になっているという事情があるらしい。

口の細胞、コロナに直接感染 唾液から他人に広がる恐れ (朝日新聞デジタル)

というわけで、唾液の検査は、感染リスクが低く、本人が検体採取するのも容易ということで広く活用されている。


この3つの検査方式、どれがどういうときに適用できるのかということだが、ポイントは発症日である。

新型コロナウイルス感染症の検査を受けるタイミング (松前内科医院)

PCR検査で検査可能な期間は最長で発症2日前から発症後33日目ぐらいと非常に長い。

ただし、ウイルスの量が最も多くなる発症後2日目ぐらいでも、陽性になるのは7割ぐらいだという。

PCR検査は発症前から検出できる可能性があるため、無症状者への適用も可能とされている。

しかし、そこで課題なのが発症日が不明なことである。

実は発症後10日経過して、すでに症状が軽快していれば、PCR検査が陽性だったとしても、もはや感染性はないとされている。

(当初、PCR検査が陰性にならないため退院・転院できないことが問題となり、検査結果でなく発症日からの日数を重視することになった)

PCR検査は特定の遺伝子が存在することを確認する検査なので、感染性のないウイルスの残骸みたいなのも反応してしまうんですね。

無症状者に検査すると、知らないうちに治癒していたものも検出してしまうところに難しさがある。


抗原定量検査については、PCR検査と性質は似ており、発症前の診断も可能ではあるらしい。

ただ、さっき紹介したページでは発症日~発症後5日後ぐらいで書かれているのは、おそらくPCR検査より感度が劣ることを考えてのことだと思う。

無症状者を含め、発症後9日以内であれば、抗原定量検査とPCR検査の結果には高い相関があり、基本的に同様の目的で使用可能である。

(発症後10日経過するともはや感染性がないことを考えれば、後追いで検査する以外の用途ではPCR検査と同様に使えるという意味である)

検査時間が早くPCR検査に比べると検査装置が普及しているということで、

感度がやや劣るとしても、PCR検査だと検体の輸送や検査自体に時間がかかるより、利益があるという判断で利用されている。

(厚生労働省検疫所も早く大量に検査して、感染リスクのある入国者を早期に排除するために抗原定量検査を活用しているわけですね)

なお、抗原定量検査もPCR検査ほどではないがもはや感染性のないウイルスを検出することはあるらしい。


抗原定性検査は簡易検査キットなんて言われているけど、キット1つで検査が可能である。

どちらも「抗原」とあるように抗原定量検査と検出対象は同じだが、検出に必要なウイルス量はより多くなっている。

とはいえ、検査時間が短く、診療所での取扱にも便利ということで活用されており、

発症後2~9日目の検査においては、これを確定診断とすることができるということになっている。

しかし、無症状者の検査には適しないということもあり、他の2つの検査に比べると利用範囲は狭い。

インフルエンザの検査キットと同じですが発症直後の検査には適しないので、この点でも注意が必要である。


さて、無症状者が新型コロナウイルスの検査を受けることについて、必然性が高いのは海外渡航の目的である。

郵送での検査もそこをターゲットにしたものは多く、テレビ電話で医師の問診を受け、医師の指導のもと唾液を採取をして、

これを郵送して検査をして、診断書を作成するというようなことが行われているわけですね。

この目的で厚生労働省検疫所が認めている検査方式はPCR検査と抗原定量検査だが、

外国だとPCR検査が必須であることが多く、だいたいフォーマルな検査サービスはPCR検査なんじゃないか。

このような検査は無症状者であることが前提なんですよね。当たり前かも知れないが。


しかし、ここで課題は発症前のPCR検査は検出率が低いことである。

厚生労働省検疫所は入国者に出発前に取得した診断書を要求しているが、一方で入国前に抗原定量検査を実施している。

ここには2つの意図があるとみられ、1つは外国での検査の品質に疑問があること。

もう1つは出発前には検出できなかったが、そこから時間が経って、検出できるようになる場合があること。

抗原定量検査はPCR検査より感度がやや劣るとはいえ、それ以上に排出されるウイルス量が増えることの方が大きい場合があるわけですね。

これに加えて出発地によっては、3日とか検疫所の用意した宿泊施設(この滞在費は公費負担らしい)で停留した上で、

改めて検査を行った上で自宅や自己手配した宿泊施設などに移動するということを行っている。

このように期間を空けて改めて検査するのは、ウイルス量が増えるのを待ってるわけですね。

このことは検査方式以上に検査するタイミングが重要であることをよく表していると言えるんじゃないか。


というわけで無症状者への検査の適用は難しいと思いますね。

すり抜けもそうですが、もはや感染性がない人が延々と検査にかかり続けるのも問題である。

ただ、ここは海外渡航の目的では保守的に判断しているという考えはあると思う。

具体的に症状があれば、その症状や発症日との関係性などを考慮して判断することが出来る。

あえて発症直後に検査をしないということも選択肢になるわけですね。

インフルエンザのように早期に薬を飲むとよいとかそういうことはないわけですし、

陰性であっても、(新型コロナウイルスに限らず)感染を広げる可能性はあるわけですから。


抗原定性検査の適用にはさらに注意が必要である。

有症状である場合のみ適用でき、発症日から2~9日後でなければ診断できないからである。

医師がこの性質を理解して検査するなら問題ないのだが、必ずしもそういう用途だけで使われるわけではない。

というのも……

抗原検査キットを配布、厚労省 医療機関や高齢者施設に (日本経済新聞)

医療機関・高齢者施設・学校など、急激な感染拡大がしばしば問題になってきた施設に抗原検査キットを送っているらしい。

しかし、届いても使うのは難しい。

  • 無症状者には使えない診断方法なので、当然、何らかの症状がある人が対象
  • 検体が「咽頭鼻ぬぐい液」「鼻腔ぬぐい液」なので唾液に比べて採取の難易度が高い
    自己採取が可能ならよいが、他人がやる場合、原則は医師などが実施する必要があり、感染対策も必要(くしゃみは危険)
  • 特別な設備は不要だが、手順を誤ると容易に誤った結果が出る
  • この結果が陽性になったとしても、確定診断には医師の診察(場合によっては再検査)が必要である
  • この結果が陰性だったとしても、感染している可能性があるので自宅待機が必要

抗原定性検査は正しく使えば確定診断に使えるほどの方法である。しかし、なんとなく配布して正しく使うのは難しい。


おそらく、この検査はあまり特別ではない風邪の症状があったときの簡易な切り分けに使うものだろう。

発症後2日目とかに検査キットを使って陽性が出れば、まず本人を医師の診察につなげることができる。

このようにして施設内での蔓延状況を早期に知り、蔓延度が高まっていると判断すれば、対策を打つことが出来る。

ここで無症状者を含めて診断をするならば、それはPCR検査または抗原定量検査でなければならないので、検査キットは使えないわけだが。


検査の時期によって最適な検査方法や、それによって得られる意味は異なるということで、

その意味も考慮した上で本当に意味のある検査なのかということを考えなければならない。

無症状者向けの検査サービスや、市販の抗原検査キット(研究用という名目だが)なんてのもあるけど、

検査内容として妥当でも、その結果を正しく理解できるかというところはとても難しい。

実際、無症状者向けのPCR検査サービスで、企業・団体向けの検査結果と、個人向けの検査結果で陽性率がだいぶ違うという話がある。

これは無症状者が対象のはずのサービスを有症状者が受けているからではないかという話がある。

「安価な民間PCR検査」、「美容クリニック等のPCR検査」、「保険診療機関でのPCR検査」はいったい何が違うの? (CLINIC FOR)

ただ、こういう使い方をすると陽性になったとき不都合が多く、陰性になったことをもってリスクが低いと判断することも問題である。


結局のところは、手洗いなど基本的な感染症対策、マスク着用の励行、体調不良の早期把握というところに尽きるわけですね。

まぁ言うても海外渡航で出発前・入国前後での検査の要求はしばらく続きそうな感じはするけど。

今後、ワクチンの接種が進むと、重症化するリスクは減るが、その分、無症状・ごく軽症で推移する感染者も増えるとみられる。

感染を抑止する効果にも期待されるところだが、イギリスではワクチンの接種率が高いにもかかわらず感染者が急増している。

それでも死者数がそんなに増えていないのはワクチンの効果と考えてよいが、

油断すれば感染は容易に拡大し、それがワクチンの接種が適しない人、効果が不十分な人に及べばこれは危険ですから。