北海道生まれアイルランド育ち、ドイツ生まれ日本育ち

日本時間で昨晩行われた、イギリスの元祖・オークスステークス、

優勝したのはなんと北海道安平町生まれの Snowfall という馬だった。

といっても日本からの遠征馬ではなく、アイルランド調教馬なんですけどね。

2着に16馬身差付けて優勝、日本だと10馬身以上は「大差」と書くので、日本式に言えば「大差勝ち」ですね。

G1レースでそんなことある? って思うけどね。日本に比べれば少頭数でクラス分けも厳密ではないとはいえ珍事である。

とはいえ、この馬の強さには疑いはなく、ブックメーカーの凱旋門賞の前売りオッズでは突如1番人気に浮上したという。

この馬の強さもさることながら、凱旋門賞は3歳牝馬に有利という定説も踏まえたものだと思う。(出走するか不確実だけど)


安平町というのは、日本競馬で猛威を振るう ノーザンファーム のことである。

実際、この馬はJBISサーチなど日本のデータベースには、生産者は「ノーザンファーム」として登録されている。

しかし、イギリスのデータベースを見てみるとBreederには「Roncon, Chelston Ire & Wynatt」と書いてある。

Snowfall (JPN) (Racing Post)

実は生産者について、日本とヨーロッパ他では考え方が違うのである。


どうしてこの馬は安平町生まれでアイルランドに渡ったのか。

そもそもこの馬はクールモアスタッドと言われるアイルランドの生産者が所有しているが、

クールモアは日本で大活躍していた種牡馬、ディープインパクトの子が欲しくて、

それで自身の所有する繁殖牝馬を北海道に送ってきていたんですね。

晩年のディープインパクトはそのようにして外国から渡ってきた繁殖牝馬への種付けが多かったとされている。

去年、フランスのディアヌ賞(仏オークスとも)を優勝した Fancy Blue も同様の経緯で生まれた馬である。

違うのはFancy Blueは母親が帰国後に生まれているのでアイルランド産、Snowfallはそのまま北海道で生まれたので日本産だったということ。

Snowfallの母親はその翌年もディープインパクトに種付けしてもらって帰国、アイルランドで生まれたようである。


実は世界的には競走馬のBreederというのは、母馬の所有者の名前を記載することになっている。

このため、クールモアの馬がノーザンファームに来て生まれた子でも、それはクールモア関係者の名前になるわけである。

特に生まれた牧場がどこであるかは重要ではない。ただ、産まれた国を表す (JPN) という表示が馬名に付いてくるんだけど。

一方で日本では生産牧場として生まれた牧場の名前を登録することになっており、

ノーザンファームで生まれれば血統登録証明書には「北海道勇払郡安平町 ノーザンファーム」と記載される。

ただし、日本でも母馬所有者を別に登録するので、例えば今年の桜花賞を優勝したソダシはノーザンファーム生産と知られるが、

母子とも金子オーナー所有であることからわかるように母馬所有者は「金子真人ホールディングス株式会社」となってるはず。


この逆に外国生まれの馬が日本で走ると奇妙なことが起きる。

シュネルマイスター(GER) (JBIS Search)

かつては「マル外(外国産馬)のダービー」と言われたNHKマイルカップ、ダービーが内国産馬限定だった時代の話だが、

日本生まれの馬のレベルが上がり、ダービーに外国産馬も出られるようになり、すっかり死語になっていたが、

2001年優勝のクロフネ以来、20年ぶりの外国産馬優勝となったのがドイツ生まれの馬、シュネルマイスターだった。

ドイツ産馬が日本のGIを勝つのも1995年以来で、JRA所属馬に限れば初めてということで、珍しい快挙でもあった。

日本ではあまりいない血統の持ち主ということで、早速、引退後の種牡馬としての活躍が期待されている。


で、このデータベースを見ると生産牧場に「Northern Farm」と記載されているんですよね。

これは日本のノーザンファームがドイツに牧場を持っているわけでも、偶然「Northern Farm」という牧場があっtわけでもなく、

母馬所有者がノーザンファームであるという意味である。これが日本で登録されるとこうなるんですね。

なお、シュネルマイスターの母親、セリエンホルデは彼を産んだ後に北海道に渡んでノーザンファームにやってきている。

2020年に弟が生まれているが、生産牧場の「ノーザンファーム」というのはこれは北海道安平町のノーザンファームのことである。


そんなシュネルマイスターは今日の安田記念に挑戦、今週から3歳馬は4歳以上馬に混ざって出走できるようになったのだ。

NHKマイルカップ→安田記念という転戦は時々あるが、最近はあまりよい成績を出す馬がいない。

3歳馬は成長途上であることも考慮して負担重量が軽減され、実に4歳以上牡馬から4kg軽減となる。それでもなかなか。

1番人気は昨年覇者でヴィクトリアマイル圧勝したグランアレグリア、なんと単勝オッズ1.5倍である。

2番人気は一昨年覇者インディチャンプ、シュネルマイスターは4番人気に推された。


結果はなんと8番人気のダノンキングリーが優勝、ここまで重賞3勝とはいえ、昨年同レースで7着であるなど最近は冴えた結果がなかった。

グランアレグリアがとんでもない人気だったこともあるけど、単勝の払戻金が4760円とはすごいな。

圧倒的人気に推されたグランアレグリアは2着、というのも道中で他の馬に取り囲まれてしまったのである。

それでもルメール騎手はなんとか道を切り開き2着まで連れてきたのだった。(他の馬に迷惑をかけたので騎手は3万円の過怠金を課せられたけど)

やっぱりヴィクトリアマイル→安田記念の転戦は鬼門だな(昨年のアーモンドアイも圧勝→2着)と言われたのだった。

そしてシュネルマイスターは3着ということで、上位2頭には半馬身届かなかったが、立派な成績を挙げた。

近年、NHKマイルカップ→安田記念の転戦は散々な結果の馬が多かっただけに、こいつは本当に強いぞと知らしめたと言える。


今年の凱旋門賞には日本から6頭の馬が登録している。全頭行くとは限りませんけど。

このうち最有力と言われているクロノジェネシスの父はフランスで活躍し、凱旋門賞を優勝したバゴという馬である。

引退にあたって、ジャパンカップを引退レースとして日本にやってきて、北海道に渡り、活躍馬を輩出してきた。

クロノジェネシス、あとステラヴェローチェもそうだけど、この2頭は凱旋門賞に勝てば、親子制覇ということになる。

一方のヨーロッパ勢、最有力がまさか北海道生まれ・ディープインパクトの娘のSnowfallとなれば、

これは日本の競馬ファンにとっては穏やかではないですね。