近鉄電車で奈良に行くとき、西大寺を出て平城宮跡を横切ると、もうすぐ奈良公園だなと思わされる。
奈良らしい景色というのもいろいろあるけど、そんな景色の1つかもしれない。
とはいえ、特別史跡である平城宮跡を電車が横切るというのはいかがなものかという話がずっと前から出ている。
平城宮跡の近鉄電車の問題は景観問題だとされているので、現地で地下化という選択肢もありそうだが、
平城宮跡に残る埋蔵文化財のことを考えれば現地で地下化はあり得ない。
なので平面的にも移設が必要ということで、かなり大がかりな話である。
では、どこに移設するのか?
これは平城宮跡の南側を走る 大宮通り で考えているというニュースが流れてきた。
奈良県、近鉄線移設で調査開始 平城宮跡横断の区間 (日本経済新聞)
大宮通りへの移設はほぼ唯一の選択肢だろう。
現状、平城宮跡を抜けた近鉄電車は、新大宮駅付近まで大宮通りのやや北側を走り、
新大宮駅を出たところで大宮通りの地下を走り、近鉄奈良駅にたどり着くというルートを取っている。
現在の経路近くで土地が確保できそうなのは大宮通りぐらいしかないし、どうせ最終的には大宮通りに向かうのである。
だから、やるとすれば大宮通りだろうなとはずっと思ってたんだけど、実際にそういうニュースが流れてきたのだった。
ただし、大宮通りへの移設は地下か高架か、どちらにするかはまだ固まっていないようだ。
そもそも実現性からして怪しい計画ではあって、あまり真に受けるような話ではないような気もするが……
平城宮跡付近は国道24号線 奈良バイパスの奈良高架橋などの高架橋が存在するので、高架というのも現実味のある選択肢に思える。
ただ、奈良高架橋のときも平城宮跡のごく近くを通るので景観問題はあったと聞いている。
さらに近鉄が高架を走るとすれば、その奈良高架橋を乗り越える必要がある。さすがにそんな高架橋は厳しいのでは?
高架にするにしても国道24号線と交差するまでには地下に潜る必要があるという話なのかなぁ。
それだとほとんど地下化みたいなもんだが。
一方の地下化というのも平城宮跡付近ということで揉めそうだ。
地下化であれば景観上の問題は少なく、最終的に新大宮~奈良の地下区間に合流するのも構造的に無理がない。
ところが地下水への影響があるのでは? という話が出てくるのではないかという懸念がある。
というのも、平城宮跡に埋まっている木簡が腐らずに保存できているのは、地下水の水位が高く保たれているからという話がある。
そのため、京奈和自動車道の大和北道路の計画でも、平城宮跡の地下水への影響が議論されている。
京奈和自動車道大和北道路/地下水検討委員会 (奈良国道事務所)
とはいえ、京奈和自動車道は平城宮跡付近をシールドトンネルで通過するだけだから、影響はきわめて小さいのは明らかだった。
それに対して、近鉄電車の移設は平城宮跡付近に開削部ができるだろうから、
京奈和自動車道のトンネルに比べれば地下水への影響ははるかに現実味のある話である。
結局のところ、高架だろうが地下だろうが移設するのはかなりリスクの高い話である。
ニュースを見る限りは奈良市は消極的なようだ。
お金がかかるし、実現性も怪しい。そもそも現状でもあんまり困っていないのだから。
それでも奈良県が積極的なのは、平城宮跡を整備する国が近鉄の移設を強く求めているという事情があるようだ。
この移設で得られるものがそんなに価値のあるものか? リスクに見合っているのか?
そこが本当の問題のような気がするな。そのリスクの程度を見積もるために検討するのは意味があるかもしれないが。