製品評価を行うときには、気温・湿度・気圧のデータを記載する。
一番センシティブなのが気温だが、あとはそこまででは。
特に問題だったのが気圧で、フロアに1台しか気圧計がなくて、その湿度計の置場が普段作業する場所から離れていてめんどくさい。
さらに、その気圧計が校正に出てしまうとフロアに1台もなくなってしまう。
他のフロアの気圧計を見に行くというのも手ではあるが、めんどくさい上に場所によって気圧は違うしね。標高の影響は確実にある。
かといって、製品性能に影響を及ぼすほどの気圧変化自体がそもそもあり得ないのだが。
そんな問題もあってか、温度・湿度を測る装置を、温度・湿度・気圧を1台で測れる装置に置き換えた。
これで便利になると思ったが、気になったのが気圧の表示が「1001.2mbar」のようになっていること。
補足説明として「mbarはhPaと同じ単位です」と書いてあった。
あれ? 1barって1気圧って意味じゃなかったっけ?
調べたのだが、bar(バール)という単位は、1bar = 100kPa である。
すなわち 1mbar は 100Paとなり、これは1hPaである。h(ヘクト)は100倍を表す接頭辞だしね。
日本の計量法では、圧力の法定単位として Pa、N/m3、bar、気圧 の4つの単位を定めている。
法定単位ということは、ちゃんと計量単位令で定義が定められていて、barの定義は次の通り。
バール パスカル又はニュートン毎平方メートルの十万倍
1bar=100kPaではあるのだが、bar 自体はSI単位ではない。
そのため、日本の気象庁では1992年にmbarからhPaに移行している。ただし、単位が変わっただけで、数値の意味は変わっていない。
元はbarという単位は気象分野で生まれた単位で、最後まで使われた(地域によっては今の現役)のも気象分野だった。
というのも、1barというのは1気圧に近くなるように、当時のCGS単位系(cm,g,sを基本とした単位系)で選ばれた数字だったから。
最初に書いた誤解の原因もそこだったのだが、確かに1barは近似的に1気圧だが、1気圧というわけでもない。
そもそも、気圧というのは緯度、標高、気温などによっても変動するものである。
1気圧って1013.25hPaじゃないの? と思うところだが、これは1954年にパリの緯度で標高0m(海水面相当)での平均気圧から定めたものである。
1気圧という概念自体は古くからあったかもしれないが、世界共通の1気圧を厳密に定義できたのは1954年のようだ。
一方、barという単位が生まれたのは1911年ことだそうで、こっちの方がはるかに長い歴史を持っている。
近似的に1気圧 かつ 厳密な定義を持っていたというのが、気象分野で利用された要因だったようだ。
ちなみに、barという単位は、工業分野ではあまり使われなかったようだ。
工業分野で使われる圧力の単位は、日本では kgf/cm2 などが主流だった。
アメリカでは psi(pound-force per square inch)が未だに使われてると聞くが。
日本では1999年頃から圧力の単位はPaに移行していった。Paは意外と歴史の浅い単位なのだ。
日本は計量法が厳しいからPa以外の圧力の単位はほぼ駆逐されたが、世界的にはまだまだでしょうね。
1kgf/cm2 =98kPa で換算できるので、なんか微妙にキリの悪い圧力を見たらこの換算の跡かもしれない。
日本では非SI単位が駆逐されるのが早いもんで、barという単位を実用しているのは今回初めて見た。
日本メーカーであれば、気圧の測定器では hPa を単位に使うだろうが、この測定器は輸入品である。
計量法では法定単位以外を書いた測定器を製造することはできないし、輸入して販売することもできない。
ただ、barという単位は日本ではすっかり使われなくなったとはいえ、れっきとした法定単位ではある。
というわけで、何の問題もないのだった。
でも、戸惑うよね。だからこそ、担当者は「mbarはhPaと同じ単位です」という補足説明を付けたんだろうが。