新造船はパナマ船籍

昨日、JR九州高速船の新造船「クイーンビートル」のことを紹介した。

後で調べたら公式Webサイトがあることに気づいた。

QUEEN BEETLE | FUKUOKA-BUSAN 2020.7 就航

ふーん、と思って見ていたら、諸元に「船籍:パナマ」の表記があった。

今のビートルは日本船籍なんだけど、新しいクイーンビートルは違うんだね。

博多~プサン航路で使うなら、どこの船籍でもいいわけですからね。


でも、今のビートル号って一部、国内相互の利用もできるんだよね。

ビートルの一部には、博多~比田勝(対馬)~プサン と運航する便もある。

寄航便では、博多~プサン、比田勝~プサンは当初から利用できたのだが、博多~比田勝は当初は利用できなかった。

ただ、地元からの要望もあって、客席の一部を区切って、博多~比田勝のみの利用ができるようになった。

博多~比田勝航路(対馬混乗便)のご案内 (ビートル)

この区間でフェリーを運航している九州郵船が、ビートルの一部を用船するという扱いだそう。

パスポートは不要だが、保安上の都合で写真付きの本人確認書類が必須となっている。

ところが、このような国内相互の輸送ができるのは日本船籍だから。

パナマ船籍ではこのようなことはできない。


せっかく始めた混乗便なのにやめちゃうの? と思ったけど、もともと寄航便って毎日運航ではないんだよね。

平日に週2~3日程度、1日1往復が寄航便になってる感じですかね。中途半端だな。

調べてみると、かつてはビートル号が国内航路で使われていた時期もあったようだ。

というか、最初は 博多~平戸~長崎オランダ村(西彼町) の国内航路からスタートしたらしい。廃止されたけど。

それ以後も臨時便で国内航路が運航されることはあったようだが、あまり頻度は多くない。

というわけで、現行のビートル号は日本船籍であるメリットを生かして国内相互の輸送に供されることはあるが、

どうしても国内相互の輸送ができなくて困るというほどではなく、国際航路だけで問題なしという判断なんだろう。


さらに細かい資料を見てみると「船級: DNVGL」と書かれている。

これは船の検査はノルウェーのDNV GLという船級協会が行うという意味らしい。

日本国内の航路で使われる20トン以上の船は、基本的には国土交通省が検査を行う。

その場合、船級の欄には JG(Japan Government)って書かれていることがある。

一方で国際航路で使われる船の多くは、国土交通省以外の船級協会が検査を行うことが普通のようだ。

船の登録上は国土交通省の検査でもよいのだが、保険会社の認めた船級協会に検査をしてもらう必要があると。


日本には日本海事協会(NK)という船級協会があって、世界的にも評判の高い船級協会の1つのようだ。

当然のことながら、国土交通省もNKの検査を受けていれば、それで国の検査もOKとなるのが通常のようだ。

NKは日本船籍に限らず、様々な船籍の船を検査し、多くの国から検査機関として認められている。

世界各地に拠点を持っていて、日本以外でもNKの検査を受けることはできるようだ。

一方で、NK以外の船級協会でも国土交通省が認めた船級協会であれば、国の検査の代わりになるようで、DNV GLも国土交通省が認めた船級協会の1つだそう。

このように、どこの国の船でも、いくつかの船級協会を選ぶことができるようだ。

クイーンビートル号はオーストラリアのメーカーがフィリピンで建造するとのことで、この都合に合うのがDNV GLだったのだろうか。


てっきり新造船の船籍港は福岡市だと思っていたが、まさかのパナマとはねぇ。

博多~プサン あるいは 比田勝~プサン について言えば、それで問題ないんだけど、

臨時の国内便や混乗便が不可になるのはちょっと惜しいよね。

当たり前だけど、日本船籍ではないってことは航行区域という概念もないのか。

現実には営業運航で対馬海峡を離れることはないでしょうけど、造船所がフィリピンってことはフィリピン~日本の回航はあるということだ。

もしかして外国で建造して、日本に回航する前に日本船籍を取るのが面倒だから、最初から外国船籍にしておこうということなのかな?