往復なら切り上げの影響は小さい

明日から0泊3日の旅行に出かけるもんで、その準備でてんやわんや、

となるとおもったら、あまりに荷物が少なくて……コンパクトなのはいいんだけど。


関東で今年4月から1円単位の運賃を導入した事業者がいくつかあるけど、

そのうちいくつかの事業者が初乗り運賃区間の往復割引乗車券を売り出してるとか。

首都圏私鉄各社の往復割引乗車券 (きっぷメモ)

今時めずらしくも手売りのきっぷも多く面白いけど、

それは裏返せば、あまり実用されることを想定していないきっぷとも言える。

実際、そんなに売れていないし、使われてもいないらしいね。


初乗り運賃区間の往復乗車券を特別に売り出している理由だけど、

現金運賃で10円単位に切り上げたときの影響が相対的に大きいことが理由だろう。

例えば、東武では3月までの140円区間の運賃は144円に変更された。

ところが、現金で購入すると150円となり、IC運賃と比べると6円、割合にして4.2%も割高になる。

しかし、これを往復で考えてみると144×2=288円ということで、これを290円で販売すると、切り上げの影響は0.7%まで軽減できる。

そんなわけで、特に切り上げの影響が大きい初乗り区間の往復に限り、影響を軽減する策が取られたということだそう。

そんな事情なので、ICカードを持っている人はこの往復割引乗車券を使うメリットはない。むしろ高い。

初乗り運賃区間に現金で往復乗車する人なんて、そりゃ少ないわなと。


そんな中で、うまいなとおもったのが東武の「浅草・東京スカイツリー観光記念往復きっぷ」だ。

これは一般に初乗り運賃(144円)区間で販売されている「往復割引乗車券」と同じ290円で販売されている。

浅草駅~とうきょうスカイツリー駅は144円区間だから、他の「往復割引乗車券」と役割は全く変わらない。

けど、ここだけ利用したいというニーズが一定あると想定しているのか、記念品としての需要を想定しているのか。

この区間に限り、特別の乗車券を用意しているだけの意味はありそうだなと思った。実用面でも意味がある。


ただ、そのような現金での利用者への負担軽減策があるのは初乗り運賃区間だけだ。

確かに相対的な影響の大きさは初乗り区間が一番大きいのだろうけど、

じゃあ、他の区間の影響が小さいのかと言えば、とんでもない。

平成26年4月1日以降の普通旅客運賃対キロ表 (東武鉄道)

東武は関東の私鉄では距離が長いので、よくわかるけど、

1円単位運賃がひたすら最高額まで続いている。そんなところまで延々と1円単位にしなくても……と思うのだけど、

けっこうひどいなと思うのが411円区間で、これは現金だと420円ということで、ICよりも2.2%割高になる。

144円区間に比べると割合では小さいが、とはいえ、そもそもの改定率が+2.86%ですからねぇ。さすがにちょっとひどいよなぁ。


そもそも1円単位の運賃を導入したのは、10円単位では消費税引き上げ分の公平な転嫁が難しいという理由だろうが、

ある程度の金額になれば10円単位でも公平な転嫁が実現できるはずで、

そこら辺の考察が欠けているぞ、と東武やJR東日本の運賃を見て思うのよね。

例えば、公平な転嫁とはどの運賃区間でも+2.86±0.75%の範囲で改定することだ、と定義すれば、

改定前運賃が 280円~470円であれば+10円、560円~940円であれば+20円、840円~1420円であれば+30円の改定は妥当となる。

ということからして1円単位での運賃設定でなければ公平な転嫁が実現できないのは、270円以下の区間と480円~550円の区間に限られる。

まぁなにを公平とするかという考えはいろいろだろうけど、1000円以上で1円単位の運賃設定にこだわる理由はないのは明らかだよね。

最大で9円の差が付くということで、割合としては初乗りほどではないにしても、不合理な差だと思うのよ。


初乗り区間で1円単位の値付けを採用したことも、往復乗車券で切り上げの影響を軽減したことも妥当とは思うけど、

1円単位運賃の合理的な適用という点では考えるべき点は多いように思う。

とはいえ、消費税率10%時の運賃改定も同じ方法でやるんだろうなぁ。

ちなみに消費税率10%時は5%時の140円区間は147円になることが想定されるので、

このような往復乗車券は廃止されることは間違いない。試してみたい人はお早めに。