1円単位の運賃と10円単位の運賃

消費税率変更にあわせて各所で料金の変更の予告が行われているが、

JRグループでも運賃・料金改定の届出を行ったということが発表されている。

特にJR東日本では関東エリアでのICカード利用率が非常に高いということで、ICカードの利用に限り1円単位での運賃を設定すると言っている。

そうなると現金利用との整合性はどうやって取るのか、気になることはいろいろあるが、

実際のところ大して考えてないらしい。


消費税率引上げに伴う運賃・料金改定について(pdf) (JR東日本)

基本的な考えは以下の通り。

  • 普通運賃はICカードの乗車に限り1円単位、現金での利用は10円単位
    • 現金での10円単位の運賃は、電車特定区間内は切り上げ、その他区間では四捨五入で設定する
  • 定期運賃・特急料金はこれまでどおり10円単位の設定

現金での運賃は四捨五入というところでやな予感がしたんだが、

電車特定区間以外の区間では現金の方が安い区間とICカードの方が安い区間が混在している。

例えば、東京~熱海ではICカードでの運賃は1944円だが、これは現金だと四捨五入して1940円となる。

もちろん、ICカードの方が安くなる区間はあるはずだけどね。


電車特定区間ならば必ずICカードの運賃の方が安いのだが、それは大人運賃の話で小児運賃はそうとはいえない。

というのもJRでは小児運賃の半額にしたときは10円未満は切り捨てることになっている。

170円区間の小児運賃は80円となる。他の私鉄・公営交通では切り上げだからこのようなケースは90円となるのだが。

小児運賃はICカードの場合は大人のICカード運賃の半額を1円単位に切り捨て、現金の場合は大人の現金運賃の半額を10円単位に切り捨てで考える。

そのためICカードの大人運賃が185円の区間では、ICカードではこの半額を切り捨てて92円となるところ、

現金では190円を半額にして10円単位に切り捨てるから90円となり、現金の方が安くなる。

元々10円未満切り捨てというルールが問題に問題があったのだが、

1円単位で計算してから現金運賃を決めるようにするなど整合性に注意を払うべきところだったのではないだろうか。


他の関東の私鉄でもICカードは1円単位、現金は10円単位の設定を行うところはあるが、

いずれも現金運賃は切り上げで、小児運賃ももともと10円未満切り上げだったのでJRのような不整合は起きない。

小児運賃のことはともかく、JRが電車特定区間以外では四捨五入の運賃を設定しなければならなかったのは、

JRグループの全国的な運賃設定と合わせるためだろう。

JRグループでは会社をまたいでも共通の運賃表で運賃を計算する。この運賃表が会社によって違うのは許されないわけだ。

会社をまたがない部分の運賃表は各社勝手に決められるんだけどね。

JR西日本では環状線内・電車特定区間の3km以下の運賃は現在120円で、4月以降も120円に設定する。

この区間はJR東日本ではこれまで130円と設定していたが、4月からはICカードは133円、現金は140円となる。

かなり異なるが、関西の電車特定区間と関東の電車特定区間をそれ以外の区間を介さずに乗ることはあり得ない。だから一致してなくてもいい。

けど、幹線の運賃表だけは一致させておかないと、会社をまたぐ利用の運賃を計算する上で問題が生じる。


あとはJR東日本の全線でICカードが利用できるわけではないということもあるね。

ICカードが使えないエリアまで1円単位で計算した運賃を10円単位に切り上げでは納得が得られない。

ただ、それならICカードエリア完結の運賃表とICカードエリア外を含む運賃表を用意して、

ICカードエリアは10円単位に切り上げ、エリア外は切り捨てとするような工夫も必要だったのではないだろうかな。

4月1日よりSuicaの利用できる駅が増える。ただし、途中駅は使えないまま、主要な駅に限り使えるようになるという話で、

利便性の向上に資するところもあるのかなとは思うんだけど、そんな区間までICカードと現金で運賃が違うというのはお互い納得しがたいのではないだろうか。

ICカードの方が高いことによる不満はもちろんのこと、

現金の方が高いケースでも、ICカードの利用できない駅の利用者はその恩恵を受けられないことが問題になるかも知れない。


どうしたもんかなぁとは思うんだけど、東京周辺の電車特定区間であれば大人に限ってはICカードを使う方が安いのは明らかで、

ICカードエリアを出る長距離の利用ではICカードを使うという選択肢はないので、これも明らか。

よその地域の人にとってはこのいずれかであることが多いだろうから、そこまで気にしなくていいのかも。

駅の運賃表には現金とICカードの運賃対応表が書かれるようだから、

仙台や新潟、その他電車特定区間外のICカードエリアではそれを見て、安い方を選ぶもよし、どうせ数円の話だからと現金を貫き通すもICカードを貫き通すのもよし。

そこはお好みでどうぞ。けど、一概に安いとも高いとも言えないというのは不気味だと思うけどね。


しかし、最近のJR東日本の運賃関係の変更はあかんやろというのが多い気がするわ。

今回の消費税率変更に伴う1円単位の運賃導入の問題はここに書いたとおりだが、

ICカードエリア拡大による近郊区間拡大は、以前のSuica拡大時にも問題視されたことではあったが、

あのときは熱海~いわきが途中下車できなくなるのか、というぐらいの話で済んでいたが、

今回のSuica拡大にあわせた近郊区間拡大は関東近郊区間では長野県の松本まで及び、これは東京からでも相当な距離となる。

仙台から郡山・新庄・平泉にまで広がる仙台近郊区間の新設、新潟近郊区間の直江津への拡大、

このあたりは近郊区間設定によるメリットもそうそうないのに、新設・拡大というのもなぁ。


あともう1つ、来年3月から東北新幹線の最速達列車であるところの はやぶさ号 が増発され、青森までの はやて号はなくなる。

ところがこれとともに、仙台~盛岡が各停のはやぶさ号が設定される。

このはやぶさ号と言うのは大宮~盛岡の利用について特別料金を取られるのだけど、仙台~盛岡が各停でもおそらく特別料金の対象になる。

もともと盛岡~新青森の停車駅によっては はやて号 より遅い はやぶさ号 もあって、特別料金を取るほどの速達性なのかという話はあったようだが、

さすがに仙台~盛岡各停だと盛岡では速達性は期待できないわけで、大宮~仙台分の特別料金はともかく、

その先、盛岡までの特別料金は+200円で、遅いわ高いわろくなことがないという話にもなりかねない。

さらに元をたどれば、この仙台~盛岡各停のはやて号は、仙台~盛岡に限っては自由席特急券で乗れる特例があるものの、

これは盛岡~新青森に限って自由席特急料金相当で乗車できる制度との整合性がなく、

盛岡をまたがって自由席特急料金相当で乗車できるかは明確ではなく、そのような特急券の発券を拒まれるなど、いろいろ問題が多い話なのよね。


ケチくさいこと言うなとJRはおっしゃるのかもしれないが、合理的な制度であるとは言いがたいから批判を浴びているのだと理解しなければならない。

今回のICカードでの1円単位の運賃設定は確かに細かく消費税率変更後の運賃を最適に設定できるという点ではよかったのかもしれない。

ところが、現金に比べて高いケースがあるということはICカードを使うことが最適であるということとは反することとなる。

電車特定区間の対応は小児運賃の件を除いては妥当としても、それ以外の区間まで1円単位にこだわる必要があったのかは疑問がある。

確かに短距離では消費税率変更という小さな変更は10円単位でうまく表せなくて苦心するところなんだけど、

そこ以外は10円単位でもお互い納得して利用できると思うわけで、延々と1円単位というのはSuicaエリア外のことを考えるとやりすぎと思うよ。