山口県を走る美祢線、2023年夏の豪雨で大きな被害を受けたことをきっかけに、
鉄道としては廃止、BRTに移行することが決定された。
BRTというが現在の計画では専用道区間はわずかなのだけど。
JR美祢線復旧、BRTに決定 利便性確保・費用の鍵は専用道 山口 (朝日新聞デジタル)
ところでJR西日本ではいくつかの路線で存廃について沿線と協議している。
再構築協議会が設置されている芸備線の庄原~神代(新見)は筆頭だが、
大糸線の西日本管内(糸魚川~南小谷)も鉄道としての存続はおおよそ困難な見解が出ている。
加古川線の西脇市~谷川はこれから協議に入ると言っている。
(この区間は阪神・淡路大震災の迂回路に使われたことから電化された経緯がある)
で、美祢線も昔から鉄道としては厳しいんじゃないかと言われていた路線だったのだという。
そういう状況で豪雨で被災して橋が落ちるなど大きな被害が出た。
そこから復旧するにあたって、いろいろ注文を付けたわけである。
美祢線の鉄道復旧に58億円 工期は河川改修後5年 JR西見通し (朝日新聞デジタル)
まず、落ちた橋を直す前に河川改修が必要であると。
ところが河川改修をすると、落ちた橋以外も改修が必要で費用がかかる。
この一連の改修に58億円かかるが、その費用を誰が負担するか。
さらに言えば美祢線自体が鉄道としての存続が難しい路線なので、
復旧させるというなら設備を移管するように求めたわけである。
こちらの方が復旧費用という点では国の補助が手厚いのだが、
それをすると以後の維持費や被災時の復旧費用は沿線市などが持つ必要が出てくる。
そこをなんとかする覚悟は沿線市や山口県にはなかったのだろう。
復旧の前提となる河川改修に10年要するのは待てないというのがBRTへの移行を選んだ表向きの理由だが、
BRTであれば運行費用の赤字はJR西日本が持つということで、
BRTへの改修費用は沿線市や山口県が負担する分があるにしても、
長期的には負担が軽いという目論見もあったのではないかと思う。
なお、BRTの専用道区間というのは、湯ノ峠~厚保の並行道路がない区間のみで、
この区間が代行バスの運行に支障を来しているようで、
そこを解消するために最低限の区間をバス専用道に転用するようである。
この一連の話を見て、これに近い話があったなと思い出したのが、
名松線の家城~奥津である。三重県内、JR東海の路線である。
台風で被災後、再度被災の恐れがあるということで、
JR東海は復旧せず、恒久的なバス代行を提案したのである。
沿線としては復旧を希望し、三重県が治山事業、津市が水路整備を行い、
それならばとJR東海は復旧を行うことになり、6年半経て復旧した。
JR東海はローカル線の存廃を問うことはあまりない会社なのだが、
復旧についてJRが沿線の覚悟を問うたという点では全国的にも重い事例である。
美祢線の利用状況は2019年で厚狭~美祢が670人/日程度、美祢~長門市で340人/日程度である。
被害が大きかったのが厚保~美祢で、比較的利用の多い区間であり、
利用が多いと言っても鉄道としての維持は難しいと判断された状況である。
このぐらいの利用状況の路線ってけっこうあるんですよね。
芸備線(庄原~神代)、大糸線(糸魚川~南小谷)など200人/日未満の路線は論外という感じだが、
九頭竜線の花堂~大野(この区間だけの数字はないが500人/日ぐらい?)、
山陰本線の城崎~鳥取、木次線の宍道~横田、山口線の宮野~津和野~益田、芸備線の三次~庄原、小野田線など。
姫新線は中国勝山~新見が極端に少ないが、上月~中国勝山は波はあるがこのクラスか。
沿線がどれぐらい必要性を認めているかという話ではあって、
上記の路線には特急運行路線もあるし、鉄道としての意義を認めて相応に負担する考えもある。
美祢線はそのような評価をされる路線ではなかったということである。
200人/日未満の路線は言うに及ばず、このクラスも公有化などの理解を得るのは容易ではないんだろうと。
少なくとも1000人/日クラスでないと難しいのだろう。
きのくに線(白浜~新宮)とかね。ここは赤字額が大きいので沿線は戦々恐々としてるけど。
JR西日本と沿線府県の関係性はいろいろである。
広島県と山口県がえらく無関心だなという印象はあるが、
山口県の美祢線はこうだし、広島県は芸備線の協議は再構築協議会に移行しても散々に見える。
和歌山県はきのくに線の問題は積極的に関与してはいるが、金の話になると及び腰。
責任を持つのが偉いということで言えば富山県は最たるものでしょうが。
氷見線・城端線はあいの風とやま鉄道に移管予定、
高山本線(富山~猪谷)は富山市の方針で移管が考えられている。
便数の少なさなどの課題はJRに委ねていては打開できないという判断である。
いずれにせよ大規模被災すれば終わりという路線はけっこうあるということである。