ミャクミャクと追加の競輪

大阪・関西万博のマスコット、ミャクミャクが喋ったというニュースが流れたとき、

競輪場で言葉を覚えたんだという人がいて、当然そんな設定はないのだが、

ミャクミャクが競輪場によく出没していたことは事実である。

さながらS級選手のように全国の競輪場を渡り歩いているのだという。


なぜ競輪場なのか。「大阪・関西万博協賛」と銘打って行われる競輪のレースが多いためである。

実際、競輪の売上から博覧会協会に資金を拠出しているそうである。

この万博協賛とついたレース全てではないのだが、特別な意味を持ったものもある。


そもそも競輪のグレードレースというのは各競輪場、年度に1回という原則がある。

GII以上のグレードレースは基本的に持ち回り制なのだが、

その持ち回り制のグレードレースを行うと他のグレードレースはできないと。

GIIIでは最も格式が高いとされるのが各競輪場の開設記念競輪なのだが、

持ち回り制のレースを行うとその年度には行われないのだという。

競輪場は数が多いのでそういうルールになっているらしい。

このことから、競輪発祥の地ということで競輪祭(GI)を必ず開催する小倉競輪場には開設記念競輪というものが存在しないのだという。


とはいえ、物事にはいろいろな例外が存在する。

まず、年度に1回というのは4日制以上のグレードレースについてのルールなので、

例えば年末のKEIRINグランプリを開催しても、開設記念競輪はできる。

次に開設記念競輪をナイターで行う場合は、追加でGIIIの開催を認められることがある。

これは開設記念競輪をナイターで行うと売上が伸び悩む傾向にあるためだという。

他の公営競技に比べると必ずしもナイターが受け入れられているとは言えないようだ。

このため全レースをナイターまたは無観客のミッドナイトで行う四日市競輪場は、

開設記念競輪(泗水杯争奪戦)と追加のナイターGIII(ベイサイドナイトドリーム)を開催しているのだという。

そして、もう1つの例外が「大阪・関西万博協賛競輪」「施設整備等協賛競輪」などである。


「大阪・関西万博協賛競輪」は収益の半分以上を博覧会協会に拠出することを条件に追加で開催できる。

これ以外にも万博協賛とついたレースが多いので区別は難しいのだが、

単に「大阪・関西万博協賛競輪 in ○○」となっているものが該当する。

「施設整備等協賛競輪」は車券の販路拡大や施設改修などの費用を捻出するための開催である。

2025~2026年度にかけて「愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会協賛競輪」が行われる。

これもアジア大会の組織委員会に収益の一部を拠出することを条件に開催するものである。


万博、アジア大会と大規模イベントに合わせて協賛競輪があるなら、

オリンピック協賛競輪はあったのか? と考えてしまうが、実は似たようなものはあった。

それが2015~2021年度に行われた「国際自転車トラック競技支援競輪」である。

世界選手権、オリンピックなどの国際自転車トラック競技大会に出場するナショナルチームの強化資金を拠出することを目的としていた。

これと入れ替わるように万博協賛競輪と施設整備等協賛競輪が行われるようになったと。

で、万博閉幕後は「ワールドサイクリスト支援競輪」としてナショナルチーム強化のための競輪が行われることになっている。

結局は追加で競輪を行うための口実をいろいろ探しているわけである。


動機はともかく、競輪の収益が博覧会協会に拠出されていることは事実である。

万博開催の機運醸成に競輪が貢献していることも事実である。

競輪場に来る層と万博に来る層は重なるのかとか疑問はあるけど。

競輪ファンにとってはミャクミャクはおなじみの存在なのは確からしい。