本州・九州の間を隔てる関門海峡を渡る道路はすでに2つある。
関門国道トンネルと関門橋、どちらも早鞆の瀬戸を通っている。
この2つはお互いの通行止めのときに補完し合う関係にはあるものの、
ルートはほぼ同じだし、関門国道トンネルは1958年開通と古く、片側1車線である。
関門橋が通行止めになると関門国道トンネル周辺は大渋滞となる。
そんなこともあって別ルートで関門海峡を渡る道路構想があり、それが「下関北九州道路」である。
「下関北九州道路」つり橋方式に…国土交通省がルート素案、山口県と北九州市が住民に提示へ (読売新聞)
下関北九州道路の特徴は下関・小倉の市街地の近くを結ぶことである。
早鞆の瀬戸は関門海峡が最も狭くなるところという点で合理性はあるが、
特に小倉からするとぐるっと回り込む形で遠回りである。
広域移動は従来通り関門橋がメインルートになっていて、
現在は主に関門国道トンネルを使っているローカルな移動を分担することが想定されている。
周辺に断層が走っているため架橋により両岸を渡ることになっていて、
このルートは2011年まで存在した関門海峡フェリーのルートに近い。
ただ、この構想について地元の反応は意外にも冷ややかなようだ。
九州側は北九州都市高速に直結する構想である。
現在、北九州都市高速では環状化が進められており、環状ルート上に接続される形になる。
こちらはよいのだが、問題は本州側である。
こちらは彦島という下関市街と少し隔てられた島から架橋されることになる。
彦島は人口25000人ほどと多くの人が住んでいて、大きな工場もいくつかある。
本州~彦島のメインルートの関彦橋は渋滞がひどかったため、
彦島道路(2005年まで有料道路)が存在し、下関北九州道路もそちらに接続する想定だが、
片側1車線のためか、こちらも現状でも渋滞が起きている状況である。
また、関門橋や関門国道トンネルの代替を考えると高速道路や国道2号線との接続が気になるが、
あまり接続がよくなくて、現状でも渋滞を起こしている地点が多々ある。
架橋自体は2km強ということで、そこまで長い感じはしないし、
前後では彦島道路と北九州都市高速という既存の道路を活用できることから、
割と効率が良さそうな気もするのだが、その彦島道路が課題の1つなんですね。
下関北九州道路の事業主体が誰になるかはまだ明らかではない。
ただ、有料道路事業が活用されることはほぼ間違いないところである。
有料道路となれば関門国道トンネルと関門橋の料金を意識せざるを得ないが、
関門国道トンネルは普通車160円、関門橋区間(下関~門司)の高速道路はETCの基本料金が420円である。
いくら、小倉~下関をショートカットできるとはいえどこまで徴収できるものか。
高速道路各社では高速道路料金をターミナルチャージ150円、1kmあたり24.6円を基本に統一している。
架橋部や長大トンネルは割高な料金を徴収していることもあり、
関門橋はかつては割高な料金があったがETC車では基本料率まで下げられている。
本州四国連絡橋などは基本料率とはいかないが108.1円/kmまで下げられた。
下関北九州道路は総延長およそ8km、架橋部が2.5kmほどとして、
全区間が基本料率だと380円、架橋部に割高な料率を適用すると610円ほど。
高速道路と同じ料金体系になるとは限らないが、これぐらいのレンジである。
基本料率だとしても関門国道トンネルの倍以上で、それでいいのかという話はあると思う。
採算性というところは必ずしも気にしなくていいと思う。
なぜならば最近の有料道路は合併施行方式として公共事業と有料道路事業を組み合わせてやることが多いから。
国の公共事業なのか、県・市の公共事業なのかは明らかではないし、
有料道路事業の主体もNEXCOなのか、都市高速なのか、県の有料道路なのか明らかではないが、
有料道路事業として採算が取れる形で税金が投入されることになるはず。
事業の加速という点では有料道路事業の割合が高い方がいいでしょうけど、
上に書いたような事情もあるのであまり高い料金が設定できない。
すると公共事業の割合が高くならざるを得ないのかなとは思う。
事業費2900~3500億円とはいうけど、彦島道路など周辺道路の改良も含めればもっとかかるだろう。
有料道路事業でまかなう部分もあるけど、どうしても税金の投入が多くならざるを得ない。
もちろん関門国道トンネルの老朽化という大きな課題がある中で、
多額の税金を投じてでもやるべきという考えは成り立つのだが、
結局は彦島周辺の渋滞により使い物にならないとなっては困るわけで、果たしてどうするか。
そんなわけでまだほとんど具体化していない構想ではあるのだが、
面白そうな話としては自転車歩行者道を併設してはという提案がある。
関門国道トンネルの人道は歩行者の通行と自転車・原付の押し歩きに対応しているが、
どちらかというとしまなみ海道のイメージで言っているらしい。
生活道路としての意義もないとは言えないところではある。船もなくなったし。
ただ、関門海峡の架橋なのでかなり高いところを通るはずで、実用性はどんなもんかというのはあるが。
でもうまくいけば自転車・原付でも走って本州・九州間を往来できるし、
徒歩でも眺望という点ではかなりいいだろうなと思う。
そこまでする意味があるのかはよくわからないけど。