こんなニュースが入ってきた。
関西スーパー、H2Oとの統合案が可決 オーケーの反対はかなわず (朝日新聞デジタル)
関西スーパーマーケットが株式交換を行いH2Oリテイリングの子会社となることについて、
議決権の2/3以上の賛成が必要なところ 66.68%の賛成で可決されたという話。
なかなか株主総会でこういう話は聞かないと思う。
この背景には同時期にオーケーによる公開買付の話が出ていたことによる。
金銭面だけでどちらの方が損か得かというのは簡単には決められない。
オーケーは関西スーパーの株式を1株2250円の金銭で買い取るという計画であり、
これは発表前の株価の2倍近いもので、株主としては確実にいくら儲かるという計算ができる。
一方、今回可決された株式交換はH2Oリテイリングからイズミヤと阪急オアシスの株式を受け取る代わりに、関西スーパーの株式を与えるというもの。
これによりH2Oリテイリングは関西スーパーの株式の58%を保有することとなり、同社の子会社となる。
関西スーパーの事業は新設された関西スーパーマーケット社に分社化され、
現在の関西スーパーマーケット社は関西フードマーケットという中間持株会社に仕立て変えられる。
これにより関西スーパーの株主は引き続き関西フードマーケットの少数株主となる。
関西フードマーケットは関西スーパー・イズミヤ・阪急オアシスを経営することになるので、
現在より事業規模が拡大することになる。
その代わり、H2Oリテイリングの支配下に入り、事業規模が拡大した分はH2Oリテイリングに利益が分配されることとなる。
このことについて関西スーパーは次のように説明している。
これまで進めてきた共同仕入れや商品の共同開発をさらに推し進め、生産性向上が期待できること。
株式交換比率は少数株主にとってやや有利に算定されていること。
これにより、関西スーパーの株主が経営統合後に受けられる利益はオーケーの買付額を上回るだろうということである。
ただ、これは今後の関西フードマーケット社の事業の進展次第であり、現時点で実現したものではない。
スーパーの経営統合では既存株主の一部を少数株主として残すのはあまりによく見る。
イオンがキャンドゥの株式の一部を買い取って子会社化するが、上場は維持する方針であると。
調べたらイオンは現在(キャンドゥは含まず)14社の上場子会社を持っている。
イオンの子会社を上場させたものもあるが、イオン傘下に入る前からの上場会社もある。
このような形を取る理由は株式を全部買い取るには現金が必要だが、
半数以上の株式を取得するだけなら費用も抑えられ、その分は店舗などへの投資に回せる。
今回の関西スーパーのH2Oリテイリング入りは、既存株主に払う金はほとんど不要である。
(反対株主には株式買取権を行使するものもいるかもしれないが)
その代わり、統合後の関西スーパー・イズミヤ・阪急オアシスの利益を少数株主と分け合うことになるが。
実際のところ、関西スーパーの株主がH2Oリテイリングとの統合を選んだのは、
すでに提携関係にあり、同じ地域で展開するスーパー同士で、業態も大きく変えることはない。
というところで統合後の事業の確実性が高いというのが大きいんじゃないだろうか。
オーケーが経営するオーケーストアは現在は関東地方で展開するのみで、
ディスカウントスーパーという業態は現在の関西スーパーとはかなり異なるものである。
もちろん金銭で買い取るのだから、現在の株主はそこの成否は関係ないが。
しかし、関西スーパーとの関わりが深い株主(客・取引先など)にとってみれば、オーケーによる買収というのはなかなか受け入れがたい面はあったんじゃないか。
親会社と子会社がともに上場する親子上場は地域性があり、
アメリカやイギリスではほぼ見られないそうだが、日本ではよく見られる。
極端な例としてはソフトバンクグループが知られている。
- ソフトバンクグループ(東証1部上場)
- ソフトバンク(ソフトバンクグループの持株比率67%・東証1部上場)
- Aホールディングス(ソフトバンクとNAVERが50%ずつ出資するJV・ソフトバンクが支配)
- Zホールディングス(Aホールディングスの持株比率65%・東証1部上場)
- バリューコマース(Zホールディングスの持株比率52%・東証1部上場)
これでもバリューコマースはソフトバンクグループの連結子会社である。
バリューコマースの売上は全てソフトバンクグループの連結売上に計上される。
しかしながら、利益は各階層で少数株主に分配が行われることになる。
ここまで多層化しているのはなかなかないが……