飲料のぼったくりは怖いかもしれない

今回のオリンピック、ほとんどの会場は無観客だが、

自転車競技が多く行われる静岡県では有観客で行われている。

そんなわけで有観客の会場の話がTwitterなどで見えるんだけど、気になったのが飲料の価格。

ノンアルコール飲料はコカコーラが独占しておりペットボトル飲料、水以外1本300円、水は1本200円とのこと。

まぁイベント会場での飲料の価格としてはこんなもんではという話はあるのだが……


実はこの手の話はちょっと前から話題となっていた。

それがプレスセンター内の売店・自動販売機での飲料の販売価格で、水以外280円、水180円というもの。

ここを利用するのは報道関係者ということで、いわばオリンピックの身内なのだから、

独占はともかく、標準価格よりはるかに高い価格を設定するのはどうなのだと。

食堂の価格も、スタッフの食堂と考えるとかなり高めの設定で、それに見合ったサービスが提供されているかが気になるところ。

日本の飲食は安いと言われていますから、これぐらいの価格設定でも、外国から来たスタッフにとっては高くないかもしれないが……

しかし、身内からぼったくりとも思える価格で販売するのはどうなのだろうかと。

なお、選手へは無料提供なので念のため。


さて、それで会場の話に戻るのだが、今回のオリンピックは近年では異例となる飲料の持込が認められることとなった。

東京五輪、都予算でミネラル水配布へ スポンサー配慮 (日本経済新聞)

750mL以下の水筒・ペットボトル1本まで、入場時に試飲することを条件に持込を認めることとなったが、

これは会場外の熱中症対策ということで認めさせたんじゃないかなぁと思っている。

飲料は会場に入れば没収されるからと、飲料を持たずに会場にやってくると入場までの水分補給に苦労することになる。

駅から会場への徒歩や入場待機場所も炎天下に見舞われることは当然想定されるので、ここで水分補給しないことは危険である。

とりあえず1本までは没収されないとすれば、会場までの水分補給を躊躇する可能性は低くなるんじゃないか。

ただ、これにより会場内の飲料売上が細ることが考えられるので、

補償として東京都はコカコーラからミネラルウォーターを購入し、これを観客に配布することも考えているとある。

(これは東京都内の会場で予定されていたもので、東京都全会場が無観客化されたことから、これは実施されていないとみられる)


この飲料持込については開会少し前にこんなことが話題となった。

五輪観戦にはコカ・コーラ社製を 鹿嶋市の小学校が通知 (朝日新聞デジタル)

茨城県ではカシマサッカースタジアムでのサッカー競技を小中学生に限って観客を入れることになった。

これに参加する学校に対して コカコーラ社製以外の飲料を持ち込む場合はラベルを剥がすように という指示があったという。

学校団体は1人2本までの持込を認める特例を認めさせた一方で、こういう指示があったということだった。

実際のところ、これはこのオリンピックにおける基本的な考えらしい。

五輪取材ノート:コカ・コーラ社以外のラベルは不可 (ロイター)

全会場で徹底されてるのかはよくわからないんだけどね。なにしろ、開会前の騒動で相当に批判を浴びた方針だったから。


飲料1本の持込を認めたことでも、近年のオリンピックでは異例だったわけだが、

炎天下での観戦には相当な水分・塩分補給を要するということで、会場内での飲料確保の重要性は高い。

しかし、会場内での飲料は日本での標準的な価格よりはるかに高い価格設定である。

必要なものならお金を出して買うべきという考えもあるかもしれないが、価格から躊躇するようなことがあれば大変危険である


そこで思い出したのだが、2019年のラグビーワールドカップのときは無料給水所が設置されていた。

そういうものはあるのかと調べたら「水飲み場」を多く設けることにしていたようだ。

気になって自転車会場の「水飲み場」の写真を調べたら、手洗い場のような出で立ちだった。

まぁ水飲み場って水道の蛇口ってことで、ここから水道水を水筒などに取って飲めるようにしてあると。

感染症対策の一環でここに石けんも置いたので手洗い場のようになってたが、あくまでも「水飲み場」である。

というわけで、水道水は無料で提供されるので、これは水分補給に使えるようだ。


しかし、それで観客の満足が得られるか。あるいは観客の安全確保に十分であるかというところが課題である。

満足度という点では日本では単なる水を飲むというよりは、茶を飲むのを好む人が多いということ。

実際、日本では駅などの水飲み場は数を減らしているが、ニーズが減ったということに尽きるとされている。

ペットボトルの茶もバリエーション豊富ですからね。まぁコカコーラ製品に限ると選択肢は減りますけど。

(調べたらオリンピック会場にはコカコーラ製品でも綾鷹しか置いてないみたいですね)

無料の水道水よりは、150円程度の標準的な価格の茶が買えるならそっちを買いたいという人は多いはず。

でも、それは会場の価格設定だと300円になっちゃうんですよね。果たしてそれでも買うかというのは悩ましい。

安全という点では水分とともに流出する塩分補給も求められること。

この点ではコカコーラ製品、アクエリアスは人気がありますよね。酷暑での観戦にお供には好適だろうが300円である。


イベント会場での価格設定として著しく高いとも言えないのはそうなのだが、

やはり酷暑での開催を考えたときに、持込量の制限(これは警備上の都合もある)、他社飲料のラベルは剥がせだの、やたら高い価格設定だの、

こういうのではコカコーラ社の悪評につながるのでは? という指摘もあり、それはそうかもしれないなとも思う。


スポンサーといえば、アサヒビールが会場での酒類提供中止するよう提言した話が合った。

酒盛りが新型コロナウイルスの感染拡大に寄与するというのはかなり確からしいという状況があった一方、

緊急事態宣言の解除により条件付きで東京都でも酒類提供が再開されていた時のことである。

オリンピック会場でも条件付きでの酒類提供を可能とする案がニュースで報じられたとき、

スポンサーへの配慮から認めることを考えているということがニュースに書かれたもので、

感染症対策よりもスポンサー(アサヒビール)の方が重要なのかと組織委員会への非難が出たのだった。

五輪会場の酒類提供取りやめ アサヒビール「支持する」 (朝日新聞デジタル)

アサヒビールからしてみれば、当初想定通りに酒類の販売ができないのは覚悟してただろうが。

結局は大半の会場が無観客となったが、有観客となった会場でも酒類の提供は行われていない。


スポンサーが独占するなら、それなりの責任というものはあるだろうということで、

嗜好品と断言できる酒類や、オプショナルなサービスである軽食販売などは仕方ないかなと思うところはあるが……

でも、軽食は案外良心的な価格設定なんですよね。

日清食品もスポンサーでカップヌードルを売ってるみたいだが、300円というのは、湯を入れてくれることを考えれば良心的だと思う。

これに比べれば、一般の飲料というのは酷暑の開催では観客の安全にも関わるものであるのになんでそんなに高いんだって。

というかそんな高い金額で売らなくても、ちゃんと利益は得られると思うんだけどなぁ。

無観客化で販売体制を整えたのに回収できないというのはあるかもしれないんだけど、そうでなければそこまでではないと思うんだがな。


いずれにせよ無観客化で熱中症で倒れる客はさほど出さずに済むようになりましたから、

これだけでも大会関係者への負担は大きく減って助かったんじゃないかなと思う。

そしてコカコーラも無観客であったがために悪評が広がることが避けられたのではと。

カシマサッカースタジアムの一件だけでも相当ではありましたけどね。

それでコカコーラに愛想を尽かした人が、卓球で大快挙を果たした伊藤選手がラベルを剥がした特徴的なボトルのジュースを飲む姿を見て、「トロピカーナが飲みたくなってきた」なんて言ってしまうんだよな。