九州産馬限定なので

最近は週末の娯楽が競馬ぐらいしかないという状況からは脱したが、

相変わらず、JRAでは無観客続き、地方競馬でも無観客か観客を大きく絞ってという状況。

そうこう言っているうちに秋シーズンに入り、大レースがいくつもあるわけだけど、この状況は変わりそうにないですね。


先週末、こんなことが話題となった。

【土曜小倉1R】九州産限定未勝利戦は17頭全頭連闘、新馬2着カシノアイドルは出走取消 (netkeiba.com)

連闘というのは、翌週のレースに出走するということ。

このレースに出走した馬は、全て前の土曜か日曜のレースに出走していたということである。

どうしてこんなことが起きたかというと、キーワードは「九州産馬」である。


全頭連闘は珍事だが、例年、この時期の小倉競馬場では出走馬の多くが連闘になるレースがあったという。

それが開幕2週目の「九州産馬限定」の2歳未勝利戦である。

日本の競走馬の多くは北海道生まれ、でも他にも競走馬の生産が行われている地域はあって、九州はその1つである。

そんな九州での競走馬生産を盛り立てる意味で、JRA小倉競馬場と佐賀競馬場で九州産馬限定戦が行われている。

JRAでは夏の2歳戦で九州産馬限定戦が組まれ、昨年のスケジュールでは下記の通りだった。

  • 1週目 : 2歳新馬 1レース
  • 2週目 : 2歳未勝利 1レース
  • 3週目 : 2歳未勝利 1レース
  • 5週目 : 2歳オープン「ひまわり賞」

特に ひまわり賞 は「九州産馬のダービー」との異名もあり、九州生まれの競走馬にとっては名誉あるレースだそう。


ただ、今年はオリンピック対応と酷暑対策のため、夏の小倉競馬は4週間になってしまった。

その中で九州産馬限定戦を4レース組んだ結果、こうなった。

  • 1週目 : 2歳新馬 2レース
  • 2週目 : 2歳未勝利 1レース
  • 3週目 : 2歳オープン「ひまわり賞」

その結果、2週目の2歳未勝利戦は、前週の新馬戦を走った馬ばかりになり、結果として全頭連闘になったということである。

例年も多くが連闘と書いたけど、実は連闘ではない馬というのは、大半はこれがデビュー戦の馬だったという。

できればデビュー戦は新馬戦にしたいが、例年では初週の新馬戦に収まりきらなかったという。

その場合は翌週の九州産馬限定未勝利戦でのデビューを目指すことが多く、すると前週の新馬戦に出て連闘の馬と未出走馬が混在すると。

ただ、今年は初週に新馬戦2レースで、小倉でのデビューを希望する九州産馬は全て収まったので、未出走で未勝利戦に申し込む馬はいなかったということである。


そこまで九州産馬限定戦にこだわるのは、実態として九州産馬のレベルが低いからだという。

すなわち北海道産馬とともに走っては1勝もできないかもしれない馬であっても、

九州産馬限定戦ならば、勝利のチャンスがあるということである。

ひまわり賞は名誉あるレースだと書いたけど、他の2歳オープン戦よりは賞金が低く設定されている。

ひまわり賞で勝利した馬でさえ、JRAではその後1勝も挙げられないことが大半だという。


どうしてこういうことになっているかというと、歴史的には九州での競走馬生産はアラブ系種が中心だったらしい。

ところがアラブ系の競馬が廃止になり、サラブレッドの競馬に一本化される中で、九州での競走馬生産は縮小、

サラブレッドの生産をしようにも、九州では優れた父馬も母馬もおらず、これではよい馬も生まれない。

そこを打開しようと北海道に種付けに行かせたり、九州の生産者はいろいろな努力をしたそうである。

そこに理解のあるオーナーがいたのも幸いで、その背景には九州産馬限定戦の存在はあると思われる。

その結果、九州産の活躍馬もちらほら出てくるようになったのだが、やはり北海道産馬にはなかなかかなわない。


ただ、そんな中、阪神競馬場でのデビューを選び、北海道生まれの馬と走って勝利した馬がいた。

それが ヨカヨカ である。熊本県生まれの牝馬である。

この時点でけっこうな驚きだったが、夏の小倉競馬の開幕週に設定された2歳オープン「フェニックス賞」に出走、

これもまた他は北海道生まれの馬と走り、見事に勝利した。

そして、今週土曜日、中1週で ひまわり賞 に挑戦した。

ここまで2勝したことで他の馬より2kg重くなるというハンデを背負っての出走となった。(2歳牝馬が57kgを背負うのは異例)

そんなんで大丈夫かよと思われたが、見事に勝利して、九州産馬の中では圧倒的に強いことを示した。


これによりヨカヨカの収得賞金(クラス分けに使われる仮想的な賞金)は1500万円となり、

これだけの収得賞金があれば、例年は桜花賞への出走が可能なレベルだという。

ひまわり賞勝利は、九州産馬として名誉あることでもあるけど、賞金加算という実益もあったのである。

ここまでできれば夏の小倉競馬場でやるべきことはやったということで一休み。

ファンからは秋のレースでの活躍が期待されている。


ところで、九州産馬限定戦はあるけど、他の産地限定のレースはないの? と思った人はいるかもしれない。

そもそも、JRAでは外国産馬は (混合) または (国際) と書いたレースにしか出走できない。

なので、(混合)でも(国際)でもないレースは、内国産馬限定ということになる。

昨年実績では平地では新馬戦の4割、未勝利戦の6割、1勝クラスの5割、2勝クラスの15%が、内国産馬限定にあたる。

昔はダービーなど、外国産馬が出走できない重賞レースなんてのもあったっていうけど、

今は外国産馬が大きな不利を受けることはないが、ただ何でも自由に出走できるわけではないということである。


ただ、それ以外の産地を限定したレースは、現在はJRA・地方を見渡しても 九州産馬限定 しかない。

かつては盛岡競馬場で東北産馬限定の「銀河賞」というのがあったそうだが、今はなくなっている。

東北産馬は九州産に比べれば多いので、その点ではレースの充実度も期待できそうだが、

やはり地方競馬の1レースだけではなかなか注目度も低いというか。

裏返せば、九州産馬限定戦はJRAと佐賀競馬がそれぞれ目標となるレースを作っているからこそ成り立っているのかなと。

JRAがやってるってのは大きいと思いますけどね。それがあるから九州での競走馬生産に力を入れている人はいるだろうし。

あと、ヨカヨカ はJRA宮崎育成牧場で育てられたわけだけど、やはり九州では北海道ほど育成牧場が充実していない中で、

宮崎育成牧場は設備もスタッフも充実しているわけですから、それも助けになったんだろうなと。


一方で、最近になってJRAが東北産馬限定戦を検討している? ということが話題となった。

JRA 「東北産馬限定戦」を検討 (ぐりぐり君の個人馬主ブログ)

東北の生産牧場では高齢化などの課題があって、なかなか厳しい状況にあるようだ。

もともと東北での競走馬生産は盛んだし、歴史的には多くの活躍馬を出してきたという。

ただ、北海道への一極集中が進む中ではじり貧状態というのが今の東北の競走馬生産の実情と思われる。

その打開策として、九州産馬でやっているような、生産地を限定したレースも検討の余地があるということらしい。


当たり前ですけど、北海道産馬限定戦なんていうのはやる必要が無いんですよね。

放っといても日本競馬の大半のレースというのは全頭が北海道産馬になっているわけだから。

それでいいじゃないかという話もあるけれど、やはり地域の伝統というのもあるわけだよね。

かつて活躍馬を出したけど、今はすっかり競走馬生産は廃れましたというのも残念な話だし。

そこが意義なのかなと思いますけどね。