これを見て驚いたのだけど。
代替フロンの排出増加が止まらない…冷蔵庫・エアコン廃棄時の回収進まず (読売新聞)
代替フロンの回収率が40%程度に留まり、その排出量が年々増えているという話。
40%というのは直感的には低い数字だし、排出量が増えてるというのも本当か?
そもそも歴史をたどればフロン類はオゾン層破壊という点で問題になった。
当初使われていたCFCというタイプは日本では1995年に生産終了している。
物質としての生産終了なので、それを使用する機器はもっと前に切り替わっている。
その次に使われたのがHCFCというタイプでオゾン層破壊は大きく抑えられるが、
依然としてオゾン層破壊の原因となるため廃止が決まっており、日本では2020年に生産終了している。
現在、日本でフロン類といえばHFCと呼ばれるオゾン層破壊の原因とならないタイプである。
しかし、このHFCもまた環境問題を抱えている。それが地球温暖化である。
CFC・HCFC・HFCといずれのフロン類も二酸化炭素比で10000~100倍程度の温室効果ガスとなっている。
このためフロン類の削減というのは依然として大きなテーマである。
実際、フロン類の削減は進みつつあるのだが、代替が難しい部分もあるし、
なによりフロン類を使っている機器は多数存在している。
そこで重要になってくるのがフロン類の回収である。
回収したフロン類は再生あるいは破壊されるというわけである。
機器に残ったフロンがどれだけ回収された割合を推定しているのだが、
2020年度の値が41%、やっとこさ40%を超えたという状況である。
この40%程度という数字、世界的に見て高いのか低いのか?
気になって調べてみたが、そもそもフロン類の回収率を計算しているのは日本ぐらいらしい。
「※我が国は、回収量を正確に把握し、廃棄時回収率を算出公表する世界的に見て高度なシステムを有しています。」という注釈もあるほど。
おそらく世界的に見れば回収率は高い方だと思われるが、比較困難というのが実情である。
ただ、この回収率がかなり物足りないことは事実である。
建物の解体業者にフロン類の回収漏れが生じないように確認させるなどの対策が導入された。
これで改善しつつあるということなんでしょうね。
ただ、技術的に回収が難しい部分もあるようである。
使用中の漏洩も含めれば、フロン類の回収には限度があるのが実情らしい。
もう1つ気になるのが二酸化炭素換算での排出量が増え続けている点。
これは京都議定書の対象となるフロン類はHFCだけだからとのこと。
もちろんCFC・HCFCも温室効果ガスなのだが、こちらはすでにオゾン層破壊対策として削減が決まっていた。
なので京都議定書での削減対象には含まれなかったのである。
HFCの排出量が増える以上に、CFC・HCFCの排出量は削減されているはずである。
しかし、HFCだけを見れば、京都議定書の対象となるフロン類はしばらくは増える一方ということになる。
オゾン層破壊対策が地球温暖化対策にとって裏目という意味ではないのでご安心を。
さて、フロン類の代替だが、進んでいる分野とそうでない分野がある。
すでに代替が完了したのが家庭用をはじめとする小型の冷蔵庫。
主にイソブタン(R600a)で代替されている。うちの冷蔵庫もそうだね。
イソブタンなどの炭化水素を冷媒に使う難点は可燃性があること。
なので冷媒の量が少ない機器でなければならない。
ヨーロッパに比べると大型の冷蔵庫が多く、自動霜取り機能が必要な日本の冷蔵庫ではこの点の検討に時間を要し、導入が遅れたという。
カーエアコンについてもHFO-1234yfでの代替が始まったというが、
これも微燃性のガスなので自動車で使うにはいろいろ検討が必要と。
次に代替が進み始めているのが業務用の大型冷凍機である。
こちらはアンモニアか二酸化炭素が主流とのこと。
アンモニアは冷媒としての歴史はフロン類より古いのだが毒性の問題がある。
可燃性もあるが毒性が問題として大きく忌避されてきた歴史がある。
そこでアンモニアを使う部分は機器内に閉じ込めて、不凍液や二酸化炭素で機器外に引き出すという形で使うのが一般的だそう。
エネルギ効率としてもよい冷媒なので条件が許せばよい冷媒だという。
二酸化炭素は圧力をかけると液体になるので冷媒として使える。
他の冷媒に比べると高い圧力が必要なのでいろいろ難しい面はあるようだが、
それでもフロン類を使う冷凍機よりも省エネにできるようだ。
あと変わり種として極低温の冷凍機で「空気冷媒」なんてのがある。
HCFC全廃で-60℃など極低温に冷却できる冷媒がなくなってしまい、
空気そのものを圧縮→放熱→膨張として冷却する仕組みに行き着いたということらしい。
空気冷媒でマイナス60℃を実現する超低温冷凍システム (NEDO)
空気自体を熱力学的に冷やす仕組みは深冷分離による窒素・酸素・アルゴンの製造でも使われている。
この方法の難点は空気を圧縮するのに多大なエネルギを要すること。
そこで放熱後の空気が膨張するところで動力を回収して、圧縮機の駆動エネルギを削減するという対策をしているそう。
空気自体を冷やす仕組みにしたことで、ファンを動かす動力、ファンの発熱分を冷やすエネルギ、ファンに付く霜を取るためのエネルギ損失を削減でき、
全体としては従来よりもエネルギ削減ができたということらしい。
ただ、一般的な用途では空気冷媒というのは割に合わない方法である。
このようにフロン類の削減が進む分野がある一方、空調はなかなか代替が難しいようだ。
エネルギ効率が悪化するようなことがあれば、発電時の二酸化炭素排出で地球温暖化に貢献してしまうこととなり本末転倒。
すぐにできる対策としてはHFCの中で地球温暖化係数(GWP)の低いガスへの移行で、
R410A(GWP=2090)からR32(GWP=675)へ移行するのは1つの考えである。
日本の家庭用の機器ではかなり移行が進んでいるようですね。
業務用エアコンもそれを追うようにR32への移行が進んでいる。
将来的なノンフロン化という目標はあるが、当面はこれみたいですね。
というわけで物足りない面はあるが改善傾向にはあると言える。
京都議定書の対象となるHFCにしても、ノンフロン化・低GWP化・回収率向上のセットで削減の目は十分あると言える。
ただ、当面はCFC・HCFC全廃の影響の方が大きいのが実情で、
本当はこれを回収率向上で押さえ込みたかったがそうはならなかったと。
それでもフロン類全体でみれば改善とは思いますけどね。