日本の計量法は厳しい

国によって法令などによる規制が厳しい・緩いというのはあって、

製品開発の仕事をしているとそういうこともいろいろ聞く。

職場で開発している製品で言えば日本の規制は概ね緩いという認識ではあるが。


逆に日本の規制が厳しいものもあるんだけど、そういや計量法ってかなり厳しい規制だよなと思った。

日本の計量法は世界的に見てもかなり強力なものだろうと思う。

というのもこの法律により、日本では非SIの単位はほぼ駆逐されたのだから。

世界的に見てもここまでSI単位が定着している地域は珍しいが、それだけ計量法は世界的にも厳しい規制ということだ。


計量法は取引・証明に使う量を計ることについて、測定単位、計器の検定などのことを定めている。

家庭ごとに設置されているガスメーター・水道メーター・電力量計は定期的に交換するが、

取引に使う量を測定する装置ということで検定が必要で、検定切れ前に交換をしているということだ。

肉屋のはかり とか タクシーメーター とか、こういうのも定期的に検定を受けている。

そしてこれらの計器で使える単位というのも計量法で決められたものに限られているのだ。

これがかなり厳しくて、計量法で定められていない単位を併記することも許されていない。(cf. 計量器に関する規制 (経済産業省))


そして、使える単位は一部を除いてSI単位になっている。

計量法に基づく計量単位一覧 (Wikipedia)

SI単位があるにもかかわらず非SI単位の使用が一般的に許されているのはわずかにこれだけ。

回転速度 : 回毎分(rpm),回毎時(rph) [SI単位: ラジアン毎秒(rad/s)]

圧力 : 気圧(atm) [SI単位: パスカル(Pa)]

粘度 : ポアズ(P) [SI単位: パスカル秒(Pa・s)]

動粘度 : ストークス(St) [SI単位: 平方メートル毎秒(m2/s)]

濃度 : 質量百分率(wt%), 体積百分率(vol%), pHなど [SI単位: モル毎リットル(mol/L), グラム毎リットル(g/L) など]

pHが濃度の単位にあるのが不思議だけど、水素イオン濃度指数だからそれでいいのか。

非SIと言われても、大半はSI単位が基礎にあるもので、明らかにSIじゃないのは気圧ぐらいかもねぇ。


一部の分野に限り使用が許容されている単位というのもある。この中には「えっ?」と思うのもあるかも。

まず熱量の単位としてのカロリー(cal)、これは 人・動物が摂取するもの、代謝で消費する熱量の単位以外では使うことができない。

だから、ガスの熱量とかにcalを使うのは禁止されているんだよね。

確かに東京ガスも13Aのガスの熱量は 「1m3あたり45MJ」と書いている。(cf. 都市ガスの種類・熱量・圧力・成分 (東京ガス))

アール(a)・ヘクタール(ha)はメートルを基礎とした単位だが、土地の面積の単位としてしか使えない。

ちょっと厳しい気もするが、そもそもこのオーダーの面積って土地の面積ぐらいしかないだろうから、実用上はあまり問題ないのかなぁ。

圧力の単位、水銀柱ミリメートル(mmHg)は血圧の測定、生体内の圧力の測定に限り使うことができることになっている。

血圧の単位がmmHgだと知らない人はけっこういそう。もともと水銀柱で測定していた経緯もあってこの単位が使われている。

もしも、血圧計を一般の圧力表記に合わせてkPa表記(ex. 110mmHg=14.7kPa)などした日には医療現場は大混乱だろう。

ゆえに許容されているのだが、逆に言うと医療現場以外では圧力はPaまたはatm表記にしなければならない。


日常生活ではあまり使わないけど、飛行機・船は国際的慣例を重視して非SI単位も許容される傾向にはある。

海・空の距離を表す海里(nm)、船・飛行機の速度を表すノット(kt)、船の体積のトン、どれも日常生活では使わんね。

その他、飛行機関係についてはヤードポンド法の使用を広く認めている。これも国際的慣例を考慮したものだろう。

貴金属の測定も独特で、宝石のカラット、真珠の もんめ 、金貨のトロイオンス なんていうのが許容されている。

もんめ は尺貫法由来の単位で唯一残っている。世界的にも真珠の重さは もんめ で表すので、許容しているようで。

金貨はトロイオンス表記を許容しているが、金地金はグラム単位での表記をすることになっているから、本当に金貨に限った話だ。


こうして日本では尺貫法は駆逐されたわけだが、そうは言っても部分的には残ってるんだよね。

例えば体積を表す 合・升・斗、取引には使えない単位だが、一合枡、一升瓶、一斗缶 というのはある。

でも、一升瓶って表記上は 1.8L と計量法で使えることになっている単位を使ってるよね。

尺貫法の体積の単位は比較的残ってはいるが、全て L などの単位に置き換えられているから問題ない。

面積の単位の坪は未だに残っているが、必ずm2単位での表記を併記している。「3.3m2(1坪)あたり」とかね。

ただ、それ以外はほとんど計量法の単位に置き換えられちゃったんだけどね。


日本の計量法が厳しいので、日本仕様だけ表示できる単位が少ないという話がある。

温度表示できる機器があって、機能的には℃, °F の2つの表記に対応しているのだが、

日本仕様では °F への切替は封印されている。かならず℃で使わなければならない。

他の機器でも日本仕様は圧力の単位として kgf/cm2 が使えないとか、そういうのがあるんだよね。

用途次第なので、場合によっては解放されることもあるとか聞いたこともあるけど、一般的にはそうなんだと。

他の国でそういうのってないんかね? 少なくとも世界の主な地域では聞かないんだけどさ。