今回の参議院議員選挙から比例代表の定数が2増えた。
選挙区の一票の格差是正のための定数増はわかるんだけど、比例代表の定数を増やしても何も起きませんからね。
自民党が比例代表の特定枠で2人擁立することに関連しての増員らしいのだが、
定数を2増やしたからといって、自民党が2議席取れるわけでもないのだから、不可解な話である。
それで実際はどうだったのかと言う話だけど、比例代表で49番目・50番目の議席を取ったのは、
それぞれ公明党と自民党だったので、結果的に自民党は1議席を穴埋めできたんだけどさ。
参議院議員選挙の比例代表では、政党名または個人名で投票できるが、
政党票と個人票の合計で政党ごとの議席数を決めた後に、個人票の順位で当選者を決めるという都合、
政党によって個人票の当落ラインは変化する。
- 自民党: 13万票(19位)まで当選
- 立憲民主党: 7.4万票(8位)まで当選
- 国民民主党: 26万票(3位)まで当選
- 公明党: 1.5万票(7位)まで当選
- 共産党: 3.4万票(4位)まで当選
- 日本維新の会: 5.3万票(5位)まで当選
けっこう違うもんだなと。
そこで政党ごとの総得票数に占める政党名での投票の割合を調べてみた。
政党名での投票の割合が高い順に、共産党(90%), 日本維新の会(86%), 立憲民主党(85%), 自民党(72%), 公明党(66%), 国民民主党(62%)となっている。
政党名での投票の割合が高いほど、当落ラインは低くなる傾向がある。
国民民主党は政党名票が伸び悩んだ結果、個人名での争いがかなり激しくなったということだ。
公明党はちょっとおかしい気がするが、6位までは10万票以上あって、その次の7位から1桁落ちている。
おそらく、公明党としてはあまり期待していなかった候補者まで議席が行き渡ってしまったのだろう。
公明党もまた定数増の恩恵を受けた政党の1つですからね。想定外によかったのだろう。
他の政党と並べるにはふさわしくないので書かなかったが、れいわ新選組の得票は何かと特殊である。
政党票の割合は54%と低く、総得票の43%を代表の山本太郎さんの個人票で稼いでいる。
山本さんの得票は99万票、後で書くけど、これだけの得票で1議席取れるのだが、それでも落選している。
理由は獲得した2議席が全て特定枠の候補者の当選にあてられたため。
「得票結果次第では、団体の政策とかそんなことより代表の知名度で取った得票じゃないかと言われかねない」という懸念を書いたが、どうでしょうね?
政党名で半分以上取ってるとも言えるが、政党名で投票した人が果たしてこの方針に理解して投票したのかはわからないし、
逆に代表の個人名で投票した人も、特定枠2人と代表を国会に送ろうという意志で投票した可能性はありそうだし。
僕は意外と政党票が多いなと思ったが、他の政党に比べれば個人票の割合が高すぎるのも確か。
今回の比例代表は50議席目が自民党の19議席目だったので、177万票/19=93万票で1議席取れたということ。
今回の選挙で、インターネットでやたらと注目されていたのが自民党の山田太郎さんだった。
ネットどぶ板選挙の山田太郎氏が当確「表現の自由守る」 (朝日新聞)
再選とあるけど、自民党所属の議員であったことはない。
2010年の参議院選挙では みんなの党 から比例代表で立候補し、後に繰り上げ当選した。
任期満了後の2016年は新党改革の候補として比例代表に立候補したが、そのときは個人名での最高得票を集めて落選した。
このような経緯のある候補なので、今回は自民党からの立候補となったが、もともと自民党に投票しようとは思っていなかった人からも注目を集めていたように見える。
そして、自民党2位の54万票で当選を果たしたのだった。
確かに54万票も獲得したのはすごいのだけど、それでも比例代表の1議席相当の93万票までは40万票も開きがある。
この40万票というのは、政党票あるいは落選した候補の個人票を譲ってもらったものである。
このような候補者でさえ、政党名票の援護がとても大きいのが実情である。
共産党の3.4万票で当選した候補者なんて、残り90万票ぐらいは政党票と落選候補の個人票ですからね。
政党に寄せられた期待の大きさがよくわかる話だ。
もともと自民党に投票しようと思っていなかった人まで巻き込んだ山田さんだが、
それに対して「自力で90万票以上集められるならともかく、そうでなければ自民党の他の候補の議席を奪うだけでは」と指摘する人もいた。
今回の自民党の得票から54万票減ったとしても(山田さんに投票した有権者が全て棄権したのに相当)、自民党の獲得議席は何ら変わらない。
実際には54万人のうち相当割合はもともと自民党に投じようと思っていた人だと思うので、なおさら自民党の獲得議席への影響は小さいだろう。
その点では的を射た指摘に見えるかも知れないけど、それは違うと思う。
必ず1議席動くためには90万票以上必要だけど、1票の差で1議席が変わる可能性だってありうるので、票の積み重ねはやっぱり重要だ。
あと、政党内の当選順位に有権者が関与していくというのが、参議院の非拘束名簿方式の比例代表制の目的だと思うので、
他の候補者の議席を奪ったのではなく、より当選すべき人が当選できたという見方がよいと思う。
政党名票という点で、割を食ったのが国民民主党なのかなぁ。
国民民主党は組織力の強い候補が多かったのだろう。5位ですら14万票で、立憲民主党の1位の16万票に匹敵する数字である。
ところが国民民主党は政党名票の援護が弱く、3議席獲得に留まり、19万票で4位落選である。
同じくかつての民主党にルーツを持ち、政策面の共通面も多い立憲民主党は政党名票の援護で 7.4万票で8位まで当選だから大きな差がある。
もしも、両党が1つの名簿にしていたら、合計で12議席(1議席多くなる)を獲得して、個人票では8.8万票が当選ラインとなる。
これは立憲民主党の6位相当、国民民主党の6位相当までが当選となる計算だ。
似た考えの2つの政党を束ねて、個人名票を集めた順に当選するというのは妥当な気もするけど、
やっぱり立憲民主党と国民民主党は違うと考える有権者にとっては不本意な話で、それを嫌って他党に流れることもありそうだし、
立候補者にとっても、選挙運動がやりにくいとか、比例代表での得票が政党助成金につながらないとか、統一名簿のデメリットも多いんだよね。
そう考えると、同根の2党で、個人名票の当落ラインが大きく異なるのもやむを得ないことなのかな。