NATM工法は期待されていた

福岡市の博多駅近くで道路が大きく陥没した事故、

七隈線の工事と聞いて合点が行った部分があるが、それでもこんなに陥没するかって。

その答えはこの区間のトンネルがNATM工法で施工されていたからだと思われている。

NATM工法って普通は山岳トンネルで使う工事方式なんだけど(cf. トンネル工事には歴史の重みがある)、

なんでこんな難儀な地層(事故が起きて明らかになった面もあるが)で使ったのか。不思議だなぁと。


そんなことを思ってたらこんな記事が見つかった。

博多陥没、それでもNATMで掘った理由 (日経コンストラクション)

なぜNATMを採用したか。端的に言えば、駅を掘るためだったらしい。

典型的な地下鉄では駅間はシールド工法ということで、シールドマシンで削っては、シールドを組み立ててトンネルを作る方式が使われるが、

その一方で駅は開削工法ということで、地面を掘って、そこに地下構造を作って埋め戻す方式が使われることが多い。

昔の地下鉄は全部開削工法で作ってたから、地上への影響が大きくて大変だったのだが、

今では駅部分を除いては地上への影響はきわめて抑えられるようになったわけである。


七隈線博多駅はその考えをさらに押し進めて、駅部分もできるだけ開削工法を使わずに作ることにしたそうだ。

七隈線延伸事業/工事情報 (福岡市交通局)

博多駅付近を見てみると、アンダーピニング工法とNATM工法と書かれている。

アンダーピニング工法は地面を掘って、既存の地下構造体をむき出しにしてから、その下に新しい地下構造体を作る方法。

だからここはある種の開削工法で作られるということだ。

一方でアンダーピニング工法と書かれているのは駅の一部で、ホームの半分ほどはNATM工法で作ると書かれている。

これにより博多駅前という複雑な場所で、道路の閉鎖や、ライフラインの移設などを回避しようとしたらしい。


地下鉄の駅は開削工法で作るのが普通と書いたが、シールド工法で作られた駅というのもある。

大阪の長堀鶴見緑地線、大阪ビジネスパーク(OBP)駅がその一例である。

OBP駅はすごく深いところにある駅で、エスカレータで降りるのも時間がかかって仕方ない駅だが、

ホームの形をみてみると、天井がかまぼこ状になっている。これがシールド工法で作られた証である。

横3連シールド工法 (鹿島建設)

なんでこんな方法を使ったのかというと、IMPビルの地下に駅がかかるからだったらしい。

このように地上に影響を出さずに駅を建設するということもあるのだが、

しかしシールドマシンはお高い機械で、最近では1台のシールドマシンをこき使って往復掘らせて工事費削減ということも行われている。

まぁシールド工法で駅を作る方法は他にもいろいろあって、OBP駅の方法はその一例に過ぎないのだが、なかなかお高い方法だ。


そんな中でNATM工法で駅を作るというのは合理的な選択肢だったらしい。

NATM工法は岩盤を削っては、コンクリートを吹き付け、ロックボルトで支えるという方法で、効率的なトンネル施工方式として知られている。

シールド工法だとトンネルの断面積は基本的にシールドマシンの大きさになってしまうが、

NATM工法では削る大きさ次第で、駅の幅のトンネルも掘れるし、シールドマシンの折り返し用の空間も作れる。

岩盤が固いところに施工するのに向いているが、他の工法と組み合わせた応用例では軟弱地盤にも適用できる方式だ。

博多駅近くは堅い岩盤があるということで、土被りが浅いなどの注意点はあるものの、NATM工法が適するだろうという判断があったと。

実際には岩盤とその上の砂部分の境目が複雑で、そこに触ってしまったなど推測されているが、

それなりに調査をした上で、NATM工法で行こうという判断はしているはず。


大変な事故だったのだが、不幸中の幸いは人的な被害がほとんどなかったこと。

トンネル工事の歴史は失敗の歴史のようなもので、何度も痛い目を見て施工方式が洗練されてきたのは事実だと。

都心でこんな派手にやらかした事例はそんなに聞かないけど、陥没事故ってのはそれなりにあることらしい。

このことがどういう形で後に反映されるのかはわからないけど、なにかしら学ぶべきことはあるんだろうと思う。


余談だが、今年の夏に福岡に行ったときに、七隈線の工事中区間をほぼトレースする形で歩いてるんだよね。

というのもこの途中にキャナルシティというショッピングセンターがあって、どんなもんかと思い、天神から歩いていたのだ。

そしたらちょうどキャナルシティの前で地下鉄工事ということで掘っていた。

これは開削工法で作ると書いてあった中間駅の工事現場だった。

その後、キャナルシティから歩いて博多駅まで行ったわけだが、ちょうどこの現場も歩いて通り抜けているはずなのだ。

期待していた人も多い区間なんだろうと思うけど、今回の事故の影響はどんなもんなんだか。

今後の立て直し方もこれから考えるって話なんだろうけど。